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伏
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ふ
ふりがな文庫
“
伏
(
ふ
)” の例文
「さっきから、あすこに、水の中にひれ
伏
(
ふ
)
しておりますのが私の兄の
口子
(
くちこ
)
でございます」と、
口媛
(
くちひめ
)
は涙をおさえてお答え申しました。
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
信長のこういう顔つきと沈黙に出会って、
懼
(
おそ
)
れ
伏
(
ふ
)
さない将は幾人もいない。いや信長の一族を加えても、絶無だといってよいだろう。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのありなしの日照りの雨が
霽
(
は
)
れたので、草はあらたにきらきら光り、向うの山は明るくなって、少女はまぶしくおもてを
伏
(
ふ
)
せる。
マリヴロンと少女
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
もしも博士が逃げだすようすを見せたら、そのときはすぐうしろからとびついて、その場にねじ
伏
(
ふ
)
せる覚悟をしている田口巡査だった。
金属人間
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
姉上は
袖
(
そで
)
もてわれを
庇
(
かば
)
ひながら顔を赤うして
遁
(
に
)
げ入りたまひつ。人目なき
処
(
ところ
)
にわれを
引据
(
ひきす
)
ゑつと見るまに取つて
伏
(
ふ
)
せて、打ちたまひぬ。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
それは
圓
(
まる
)
い
塚
(
つか
)
の
前
(
まへ
)
の
方
(
ほう
)
が
延
(
の
)
びて
四角
(
しかく
)
になつた
形
(
かたち
)
で、ちょっと
昔
(
むかし
)
の
口
(
くち
)
の
廣
(
ひろ
)
い
壺
(
つぼ
)
を
伏
(
ふ
)
せて、
横
(
よこ
)
から
見
(
み
)
たような
形
(
かたち
)
をしてゐるものであります。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
といいいい、てんでんのお
城
(
しろ
)
に
立
(
た
)
てこもって、
為朝
(
ためとも
)
が
攻
(
せ
)
めて
来
(
き
)
たら、あべこべにたたき
伏
(
ふ
)
せてやろうと
待
(
ま
)
ちかまえていました。
鎮西八郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
老人
(
ろうじん
)
は、
以前
(
いぜん
)
とちがって、すでにぜいたくに
馴
(
な
)
れてしまったから、
昔
(
むかし
)
のように、
山
(
やま
)
に
寝
(
ね
)
たり、
野原
(
のはら
)
に
伏
(
ふ
)
すことができなかった。
ひすいを愛された妃
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
態
(
わざ
)
と
卯平
(
うへい
)
へ
見
(
み
)
せつける
樣
(
やう
)
に
其
(
そ
)
の
夜
(
よ
)
塒
(
とや
)
に
就
(
つ
)
いた
時
(
とき
)
其
(
そ
)
の
鷄
(
とり
)
を
籠
(
かご
)
に
伏
(
ふ
)
せて、
戸口
(
とぐち
)
の
庭葢
(
にはぶた
)
の
上
(
うへ
)
に三
日
(
か
)
も四
日
(
か
)
も
置
(
お
)
いたのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
最初のやうな、若しくはそれに類似した少し激しい震動が来るならば、いつでもぐしやりと地に
踣
(
のめ
)
り
伏
(
ふ
)
しさうに思はれた。
余震の一夜
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
その
内
(
うち
)
に
竹
(
たけ
)
が
疎
(
まば
)
らになると、
何本
(
なんぼん
)
も
杉
(
すぎ
)
が
竝
(
なら
)
んでゐる、——わたしは
其處
(
そこ
)
へ
來
(
く
)
るが
早
(
はや
)
いか、いきなり
相手
(
あひて
)
を
組
(
く
)
み
伏
(
ふ
)
せました。
藪の中
(旧字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
号鐘
(
ベル
)
が
鳴
(
な
)
つて、講師は教室から
出
(
で
)
て行つた。三四郎は
印気
(
いんき
)
の着いた
洋筆
(
ペン
)
を
振
(
ふ
)
つて、
帳面
(
ノート
)
を
伏
(
ふ
)
せ様とした。すると隣りにゐた与次郎が声を掛けた。
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
反
(
かえ
)
って視線のやり場に困った
鬱陶
(
うっとう
)
しい顔をしているのをみると、あなたは、面を
伏
(
ふ
)
せ、くるりとうしろを向き、ひとりで、バスに乗ってしまった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
晏子
(
あんし
)
が
莊公
(
さうこう
)
の
尸
(
し
)
に
伏
(
ふ
)
し、
之
(
これ
)
を
哭
(
こく
)
して
禮
(
れい
)
を
成
(
な
)
し
然
(
しか
)
る
後
(
のち
)
去
(
さ
)
るに
方
(
あた
)
つて、
豈
(
あ
)
に
所謂
(
いはゆる
)
(七二)
義
(
ぎ
)
を
見
(
み
)
て
爲
(
な
)
さざるは
勇
(
ゆう
)
無
(
な
)
き
者
(
もの
)
邪
(
か
)
。
国訳史記列伝:02 管晏列伝第二
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
と、忽ち剣の面、
煌々
(
こうこう
)
明々陽に輝き、四方一面天地をこめて虹の如き光り
迸
(
ほとば
)
しると見るや「
吽
(
うん
)
!」とばかりに悶絶して五右衛門は地上に
伏
(
ふ
)
し
仆
(
たお
)
れた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
かくるが
愁
(
つ
)
らきぞとてしみ/″\と
物語
(
ものがた
)
りつお
八重
(
やへ
)
の
膝
(
ひざ
)
に
身
(
み
)
をなげ
伏
(
ふ
)
して
隱
(
か
)
くしもやらぬ
口説
(
くどき
)
ごとにお
八重
(
やへ
)
われを
五月雨
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
この
時
(
とき
)
涙
(
なみだ
)
はらはらと
湧
(
わ
)
いて
来
(
き
)
た。
地面
(
ぢめん
)
に
身
(
み
)
を
伏
(
ふ
)
せ、
気味
(
きび
)
の
悪
(
わる
)
い
唇
(
くちびる
)
ではあるが、
土
(
つち
)
の
上
(
うへ
)
に
接吻
(
せつぷん
)
して
大声
(
おほごゑ
)
に
叫
(
さけ
)
んだ。
癩病やみの話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
或ときはむかし別れし妹に
逢
(
あ
)
ひたる兄の心となり、或ときは廃園に
僵
(
たお
)
れ
伏
(
ふ
)
したるヱヌスの像に、
独
(
ひとり
)
悩める彫工の心となり、或るときはまた
艶女
(
えんにょ
)
に心動され
うたかたの記
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
すると、ふしぎなことには、先生のいつもの
端然
(
たんぜん
)
たる静坐の姿勢がいくらかくずれている。顔をすこし
伏
(
ふ
)
せ、その
眉
(
まゆ
)
の間には深いしわさえ見えるのである。
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
烈女の名は世に現われる機会がなく、したがって手本とする前代の婦人の、大多数は
剣
(
けん
)
に
伏
(
ふ
)
しているのである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
さうでないと、
簀子
(
すのこ
)
の
上
(
うへ
)
へ
叩
(
たゝ
)
き
伏
(
ふ
)
せて、
引摺
(
ひきず
)
って
行
(
ゆ
)
かうぞよ。おのれ、
萎黄病
(
ゐわうびゃう
)
で
死
(
し
)
んだやうな
面
(
つら
)
をしをって! うぬ/\、
碌
(
ろく
)
でなし! おのれ、
白蝋面
(
びゃくろうづら
)
めが!
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
その
娘
(
こ
)
はまるで
半狂乱
(
はんきょうらん
)
、
頭髪
(
かみ
)
を
振
(
ふ
)
り
乱
(
みだ
)
して
階段
(
かいだん
)
の
下
(
もと
)
に
伏
(
ふ
)
しまろび、一
生
(
しょう
)
懸命
(
けんめい
)
泣
(
な
)
き
乍
(
なが
)
ら
祈願
(
きがん
)
するのでした。——
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
とおかあさんは道のわきに行って、草むらと草むらとの間の
沼
(
ぬま
)
の中へ身を
伏
(
ふ
)
せて心の底からいのりました。
真夏の夢
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
その
行方
(
ゆくえ
)
を目で追うた時、覚えず紀昌は石上に
伏
(
ふ
)
した。
脚
(
あし
)
はワナワナと
顫
(
ふる
)
え、
汗
(
あせ
)
は流れて
踵
(
かかと
)
にまで至った。
名人伝
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
王成の鶉は王の鶉が来ると、鶏の怒ったようなふうで身を
伏
(
ふ
)
せて待った。王の鶉が強い喙でつッかかって来ると、王成の鶉は鶴の
翔
(
かけ
)
るようなふうでそれを撃った。
王成
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
私はそこに強く心を
惹
(
ひ
)
かれるとともに
堪
(
た
)
へ難いやうな
離愁
(
りしう
)
を感じて、そのまま
瞳
(
ひとみ
)
を
膝
(
ひざ
)
に
伏
(
ふ
)
せてしまつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
道の行きどまりに小さな
祠
(
ほこら
)
があった。いつもは、その前を何べん通りすぎても、特に気をとめて見たこともない。しかし、私はその前にひざまずいて
伏
(
ふ
)
し
拝
(
おが
)
んだ。
親馬鹿入堂記
(新字新仮名)
/
尾崎士郎
(著)
子供をだますようにして説き
伏
(
ふ
)
せられ、やっと礼服を新調したけれども、やはり少しも着ようとしない。
小泉八雲の家庭生活:室生犀星と佐藤春夫の二詩友を偲びつつ
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
臣
伏
(
ふ
)
して祖訓を
覩
(
み
)
るに
云
(
い
)
えることあり、
朝
(
ちょう
)
に正臣無く、内に奸悪あらば、
則
(
すなわ
)
ち親王兵を訓して命を待ち、天子
密
(
ひそ
)
かに諸王に
詔
(
みことのり
)
し、鎮兵を統領して之を討平せしむと。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
向こうに、おわんを
伏
(
ふ
)
せたような大月球が、そびえています。敷地の三方のすみには月世界行きのロケットの発着所があり、大ぜいの見物たちが順番を待っています。
電人M
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
甲州へは帰れもすまい、どこへ落着いて誰を頼る——お浜の頭はまだそこまで行っていないので、ただ
無暗
(
むやみ
)
に口惜しい口惜しいで
伏
(
ふ
)
しつ
転
(
まろ
)
びつ
憤
(
いきどお
)
り泣いているのです。
大菩薩峠:01 甲源一刀流の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
翌朝、津村と私とは相談の上、ようやくめいめいが別箇行動を取ることに
定
(
き
)
めた。津村は自分の大切な問題を提げて、話をまとめて貰うように昆布家の人々を
説
(
と
)
き
伏
(
ふ
)
せる。
吉野葛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
庄司の人々に
扶
(
たす
)
けられて
三八五
ここにいたり給ひ、口のうち
三八六
つぶつぶと念じ給ひつつ、豊雄を
退
(
しりぞ
)
けて、かの袈裟とりて見給へば、富子は
三八七
現
(
うつつ
)
なく
伏
(
ふ
)
したる上に
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
中断された話の続きを持ち出しもしないで、黙ったまま少し
伏
(
ふ
)
し目になってひかえていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
伏
(
ふ
)
して
以
(
おも
)
う、
混淪
(
こんりん
)
の二気、初めて天地の形を分つや、高下三歳、鬼神の数を列せず。中古より降って始めて多端を
肇
(
はじ
)
む。
幣帛
(
へいはく
)
を焚いて以て神に通じ、経文を誦して以て仏に
諂
(
へつら
)
う。
令狐生冥夢録
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ある松はうつ向きに
捩
(
ね
)
じ
伏
(
ふ
)
せられ、起き上ろうとすればいやでも地上を
這
(
は
)
うような形のままで、勢いをためされていた、しかもある松はいきなり
倒
(
たお
)
れかかるような位置をつづけ
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
ジナイーダは、きっと
眼
(
め
)
を
伏
(
ふ
)
せ、
唇
(
くちびる
)
を
噛
(
か
)
みしめて、
黙
(
だま
)
って父の言葉に耳を傾けていた。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
鞭
(
むち
)
は持たず、
伏
(
ふ
)
せをしたように頭を低めて、馬の背中にぴたりと体をつけたまま、
手綱
(
たづな
)
をしゃくっている騎手の服の不気味な黒と馬の
胴
(
どう
)
につけた数字の1がぱっと観衆の
眼
(
め
)
にはいり
競馬
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
おせんは、
次第
(
しだい
)
に
唇
(
くちびる
)
の
褪
(
あ
)
せて
行
(
ゆ
)
く
菊之丞
(
きくのじょう
)
の
顔
(
かお
)
の
上
(
うえ
)
に、
涙
(
なみだ
)
と
共
(
とも
)
に
打
(
う
)
ち
伏
(
ふ
)
してしまった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
それからそれへとご
吹聴
(
ふいちょう
)
下され、にぎにぎしくおはやばや、ぞくぞくとご
光来
(
こうらい
)
ご
観覧
(
かんらん
)
の
栄
(
えい
)
をたまわらんことを、
一座
(
いちざ
)
一同になりかわり、象の
背中
(
せなか
)
に平に
伏
(
ふ
)
しておんねがい
奉
(
たてまつ
)
るしだぁい。
曲馬団の「トッテンカン」
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
商人は、かわいそうに、ふるえ上がって、怪獣の前にぺったりひれ
伏
(
ふ
)
しながら
ラ・ベルとラ・ベート(美し姫と怪獣)
(新字新仮名)
/
ガブリエル=シュザンヌ・バルボ・ド・ヴィルヌーヴ
(著)
なし或は
野
(
の
)
に
伏
(
ふ
)
し山に
伏
(
ふ
)
し修行をする故に
山伏
(
やまぶし
)
とは申なり
扨
(
さて
)
亦
(
また
)
山伏の
宗派
(
しうは
)
といツパ則ち三
派
(
ぱ
)
は
分
(
わか
)
れたり三派と云は
天台宗
(
てんだいしう
)
にて
聖護院宮
(
しやうごゐんみや
)
を以て本寺となし
當
(
たう
)
三
派
(
は
)
は
眞言宗
(
しんごんしう
)
にて
醍醐
(
だいご
)
三
寶院
(
はうゐん
)
の宮を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
それでその兄が八年もの間、
乾
(
かわ
)
き
萎
(
しお
)
れ
病
(
や
)
み
伏
(
ふ
)
しました。そこでその兄が、
泣
(
な
)
き悲しんで願いましたから、その
詛
(
のろい
)
の物をもとに返しました。そこでその身がもとの通りに安らかになりました。
古事記:03 現代語訳 古事記
(旧字新仮名)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
下に谷川あり、(登り川といふのみなもとなり)その
形
(
かた
)
ち
屏風
(
びやうぶ
)
をひらきてたてまはしたるがごとし。岩の
頂
(
いたゞ
)
き
反
(
そ
)
り
伏
(
ふ
)
して川に
覆
(
おほ
)
ひたる下は四五十人
坐
(
ざ
)
して
狭
(
せま
)
からぬほどにて、やねあるがごとし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
色眼鏡
(
いろめがね
)
をかけて顔いっぱいに
鬚髯
(
ひげ
)
をはやしていましたから、こいつ
胡散
(
うさん
)
な奴だと思って
捩
(
ね
)
じ
伏
(
ふ
)
せにかかりますと、先方もさるもの、猛然として私をつきのけようとしましたので、次の瞬間、ドタン
紅色ダイヤ
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
明子が
遮
(
さえぎ
)
らうとしたとき、村瀬の手は案外
脆
(
もろ
)
くがくりと垂れた。がそれと、棚から一冊の
鼠
(
ねずみ
)
色の本が
頁
(
ページ
)
を
飜
(
ひるがえ
)
してベッドに
伏
(
ふ
)
さつて落ちたのとは全く同時だつた。村瀬はすばやくその本を
掴
(
つか
)
んでゐた。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
うウむ!——と、鉄より強い
情
(
じょう
)
の
金
(
かな
)
しばりだ。神尾喬之助の
唸
(
うな
)
り声を耳にすると、台所の片
隅
(
すみ
)
にうずくまって、さっきからこの問答を聞いていたお妙が、このとき、わッ! と
哭
(
な
)
き
伏
(
ふ
)
したのだった。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
早苗の顔を見ていうと、早苗はだまってかぶりをふり、目を
伏
(
ふ
)
せた。
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
鍬
(
くわ
)
を振りあげて、自分の
老齢
(
ろうれい
)
と非力を嘆じたわけだが、ともかく掘った。腕はしびれるように
労
(
つか
)
れ、地に
伏
(
ふ
)
して休息した。隣家の庭の
桧
(
ひのき
)
に火がついて、マッチをすったあとの
軸木
(
じくぎ
)
のように燃え果てる。
親は眺めて考えている
(新字新仮名)
/
金森徳次郎
(著)
勧めたくなるのよ。あたしのせいではなくて、多分、あなたがどこかに
伏
(
ふ
)
せている気持ち——何だか不満のような気持ちがあたしにひびいて来るんじゃなくって、そしてあたしに云わせるんじゃなくて
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
伏
常用漢字
中学
部首:⼈
6画
“伏”を含む語句
俯伏
折伏
平伏
突伏
打伏
起伏
潜伏
面伏
圧伏
降伏
伏臥
伏拝
下伏
調伏
野伏
三伏
説伏
泣伏
伏樋
伏木港
...