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更
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ふ
ふりがな文庫
“
更
(
ふ
)” の例文
夜
(
よる
)
は
大分
(
だいぶん
)
更
(
ふ
)
けてゐた。「
遼陽城頭
(
れうやうじやうとう
)
夜
(
よ
)
は
更
(
ふ
)
けて‥‥」と、さつきまで
先登
(
せんとう
)
の一
大隊
(
だいたい
)
の
方
(
はう
)
で
聞
(
きこ
)
えてゐた
軍歌
(
ぐんか
)
の
聲
(
こゑ
)
ももう
途絶
(
とだ
)
えてしまつた。
一兵卒と銃
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
更
(
ふ
)
けるにしたがって繁くなる夜露が、しんとした水面にかすかな音を立てるばかりで、あとはただ虫のこえばかり聞えるだけでした。
寂しき魚
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
銀座あたりはまだ宵の内でしたが、公園の中はすっかり
更
(
ふ
)
けて、街の遠音が波の音のように聞くのさえ、何んとなく
滅入
(
めい
)
る心持です。
女記者の役割
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
家がそんな
摸様
(
もやう
)
になつてゐて、そこへ
重立
(
おもだ
)
つた門人共の寄り合つて、
夜
(
よ
)
の
更
(
ふ
)
けるまで還らぬことが、此頃次第に
度重
(
たびかさ
)
なつて来てゐる。
大塩平八郎
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
夜は
更
(
ふ
)
けた。彼女は椎の
梢
(
こずえ
)
の上に、
群
(
むらが
)
った
笹葉
(
ささば
)
の上に、そうして、
静
(
しずか
)
な暗闇に垂れ下った
藤蔓
(
ふじづる
)
の
隙々
(
すきずき
)
に、亡き
卑狗
(
ひこ
)
の
大兄
(
おおえ
)
の姿を見た。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
▼ もっと見る
そしてまだそう
更
(
ふ
)
けぬうちに、いの字ヶ原の高原に立ち、ほっと息をつきながら、身を星の中に置いて、しばらく
恍惚
(
こうこつ
)
となっていた。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お庄は馬車を降りると、何とはなし仲居の方へ入って行ったが、しばらくそこらを
彷徨
(
ぶらつ
)
いているうちに、
四下
(
あたり
)
がだんだん
更
(
ふ
)
けて来た。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
その
中
(
うち
)
に夜はだんだん
更
(
ふ
)
けて来ましたから、青眼先生は眠られぬ薬を飲みまして、只一人紅矢の枕元に椅子を引き寄せて座りました。
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
事実また、私の毒にも薬にもならぬ身の上ばなしに釣りこまれて夜を
更
(
ふ
)
かしたのが、離れられぬ縁となった女もないではなかった。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
しかし、夜が
更
(
ふ
)
けると、銀座通りは電車のレールだけが冷たく光っている廃墟に一変することを知っていた。それが恐ろしかった。
女妖:01 前篇
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
牛
(
うし
)
は、百
姓
(
しょう
)
を
乗
(
の
)
せて、
暗
(
くら
)
い
道
(
みち
)
をはうように
雪
(
ゆき
)
の
降
(
ふ
)
る
中
(
なか
)
を
歩
(
ある
)
いていきました。
夜
(
よ
)
が
更
(
ふ
)
けてから、
牛
(
うし
)
は、
我
(
わ
)
が
家
(
や
)
の
門口
(
かどぐち
)
にきて
止
(
と
)
まりました。
百姓の夢
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
更
(
ふ
)
け
行
(
ゆ
)
く
閨
(
ねや
)
に
聲
(
こゑ
)
もなく、
凉
(
すゞ
)
しい
目
(
め
)
ばかりぱち/\させて、
鐘
(
かね
)
の
音
(
ね
)
も
聞
(
きこ
)
えぬのを、
徒
(
いたづら
)
に
指
(
ゆび
)
を
折
(
を
)
る、
寂々
(
しん/\
)
とした
板戸
(
いたど
)
の
外
(
そと
)
に、ばさりと
物音
(
ものおと
)
。
雪の翼
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
叔母の
肩
(
かた
)
をば
揉
(
も
)
んでいる
中
(
うち
)
、夜も
大分
(
だいぶ
)
に
更
(
ふ
)
けて来たので、源三がつい
浮
(
うか
)
りとして
居睡
(
いねむ
)
ると、さあ恐ろしい
煙管
(
きせる
)
の
打擲
(
ちょうちゃく
)
を受けさせられた。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
もう夜も
大分
(
だいぶ
)
更
(
ふ
)
けて、ちょうど十時半になっていた。昨日の今頃突如として起った射殺事件のことを思いだして、いやな気持になった。
省線電車の射撃手
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
夜はすっかり
更
(
ふ
)
け渡ったが、宴はいつ終るとも見えず、馬鹿騒ぎは一層盛んになって行った。左大臣は又「我が駒」を謡い出して
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そんなに毎晩
夜
(
よ
)
を
更
(
ふ
)
かして
碌
(
ろく
)
に
寝
(
ね
)
もしないじゃないか。何の事だ。
風邪
(
かぜ
)
でも引くと
宜
(
よ
)
くない。勉強にも程のあったものだと
喧
(
やかま
)
しく云う。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
もう大分
更
(
ふ
)
けたと見えて、どこかで後夜の鐘を打つのが聞える。作者はこの鐘声に驚いて、蛍籠を提げながら
踵
(
きびす
)
を回したことであろう。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
何処
(
どこ
)
かで、一時を打つ音がした、騒がしい都の夏の夜も、静寂に
更
(
ふ
)
け切って、遠くから響いて来る電車の音さえ、絶えてしまった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「では、それで話はきまった——ときに、お初どの、今宵は、
更
(
ふ
)
けたから、ここで、泊ってまいってくれまいか——な、お初どの」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
六十年ぶりだといふ暑熱に、苦しみ通した街は、
更
(
ふ
)
けてからの雷雨に、なにもかもがぐつすりと濡れて、知らずに眠つてゐる人も快げだ。
夏の夜
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
塩昆布と鰹節の削ったのがあれば私は大変機嫌がいいのだ。この頃は寒いので夜を
更
(
ふ
)
かしていると
躯
(
からだ
)
にこたえて来て仕方がない。
生活
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
そのうち
間
(
ま
)
もなく日が
暮
(
く
)
れて、
夜
(
よる
)
になりました。
夜
(
よ
)
が
更
(
ふ
)
けるに
従
(
したが
)
って、
森
(
もり
)
の中はいよいよものすごい、
寂
(
さび
)
しい
景色
(
けしき
)
になりました。
しっぺい太郎
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
夜が
更
(
ふ
)
けるにしたがって彼はますます空想に夢中になってゆき、私がどんな
洒落
(
しゃれ
)
を言ってもそれから覚ますことができなかった。
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
旅人 だんだんに夜は
更
(
ふ
)
ける、風は寒くなる。これから山越しをするのも難儀ですから、いっそ今夜は御厄介になりましょうか。
影:(一幕)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
惜しい夜も
更
(
ふ
)
けた。手を
浄
(
きよ
)
めに出て見ると、樺の
焚火
(
たきび
)
は
燃
(
も
)
え
下
(
さが
)
って、ほの白い
煙
(
けむり
)
を
颺
(
あ
)
げ、真黒な
立木
(
たちき
)
の上には霜夜の星
爛々
(
らんらん
)
と光って居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
クルクルに巻いた筋書を袂に入れてかなり
更
(
ふ
)
けてから「まぶた」のだるい様な気持で帰るとすぐ京子は来たかと女中にきいた。
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
その夜が
更
(
ふ
)
けると、宿の主人はまたもそのお客に起こされました。お客の言うことは、前夜のお客の言ったことと同じでした。
神様の布団
(新字新仮名)
/
下村千秋
(著)
そのうちに、酒盛りももう終りになって、夜が
更
(
ふ
)
けてきましたから、村の人達は爺さんと猿とを、どこかの家へ泊めようと言い出しました。
キンショキショキ
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
恰
(
あたか
)
も季参が彼女の
良人
(
おっと
)
で、その良人の眼を盗みながら、不義の快楽にでも
更
(
ふ
)
けっているように、私達は快楽に更けるのでした。
温室の恋
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
けれど何も知らぬ姉の前で、打明けて問う訳にも行かぬので、この夜は露ほどもそのことを口に出さなかった。一座は平凡な物語に
更
(
ふ
)
けた。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
初夜だと言ったが実際はその時刻よりも
更
(
ふ
)
けていた。奥のほうの室にいる人たちも起きたままでいるのが
気配
(
けはい
)
で知れていた。
源氏物語:05 若紫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
女は
厭
(
いや
)
な顔もせずに立ち上った。私はまた「夜が
更
(
ふ
)
けたから送って行って上げましょう」と云って、女と共に
沓脱
(
くつぬぎ
)
に下りた。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夜はようやく
更
(
ふ
)
けて行って、水車の
万力
(
まんりき
)
の音もやんでしまい、空はたいへんに曇って、雨か風かと
気遣
(
きづか
)
われるような気候になってきたことも
大菩薩峠:16 道庵と鯔八の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それから一週間後、一人で酒を飲み、夜
更
(
ふ
)
けて戻る時、赤提灯の前を通りかかった。ふと先夜の三田村のもったいぶった言い方を思い出した。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
もう夜はだいぶ
更
(
ふ
)
けたらしい。昼でも物声の聞えない土地ではあるが、やはり夜が更けると、何となく、しんしんと四辺が静まりかえって来る。
大雪山二題
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
三十前後の顔はそれよりも
更
(
ふ
)
けたるが、鋭き眼の
中
(
うち
)
に言われぬ
愛敬
(
あいきょう
)
のあるを、客
擦
(
ず
)
れたる
婢
(
おんな
)
の一人は見つけ出して口々に友の
弄
(
なぶ
)
りものとなりぬ。
書記官
(新字新仮名)
/
川上眉山
(著)
学生時代に夜
更
(
ふ
)
けて天文の観測をやらされた時など、暦表を繰って手頃な星を選み出し、望遠鏡の度盛を合わせておいて
喫煙四十年
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
夜はやや
更
(
ふ
)
けて、天地は黒い塀を四壁に立てたように静まり閉すにつれ、真向うの池の端の町並の肉色で涼しい窓々の灯
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
霊廟
(
みたまや
)
の前なる
三二
灯籠堂
(
とうろうだう
)
の
簀子
(
すのこ
)
に
上
(
のぼ
)
りて、
雨具
(
あまぐ
)
うち敷き座をまうけて、
閑
(
しづか
)
に
念仏
(
ねぶつ
)
しつつも、夜の
更
(
ふ
)
けゆくをわびてぞある。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
夜は
更
(
ふ
)
けていった。広いバスティーユの広場は
闇
(
やみ
)
におおわれていた。雨を交じえた冬の風は息をついては吹き
荒
(
すさ
)
んでいた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
しかし——私はほんの部分的な返辭だけしかしなかつた——その夜、詳細のことを話すにはもうあまりに夜が
更
(
ふ
)
けてゐた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
夜は
更
(
ふ
)
けたり。雪は霙と変わり霙は雪となり降りつ止みつす。
灘山
(
なだやま
)
の
端
(
は
)
を月はなれて雲の海に光を包めば、古城市はさながら乾ける
墓原
(
はかはら
)
のごとし。
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
そうして、盲人の訊問は終ったが、岬の夜はだんだんと
更
(
ふ
)
けていって、おりおり思い出したように雨の滴が落ちてくる。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
すべてのものが静かに息を潜めて、そしてあたりの空気が元気なく疲れて冷え冷えしている様子が、夜のすでに深く
更
(
ふ
)
けていることを物語っていた。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
夜が
更
(
ふ
)
けるにつれ、
夜伽
(
よとぎ
)
の人々も、
寝気
(
ねむけ
)
を
催
(
もよお
)
したものか、
鉦
(
かね
)
の音も
漸々
(
ようよう
)
に、遠く消えて行くように、
折々
(
おりおり
)
一人二人の叩くのが
聞
(
きこ
)
えるばかりになった。
子供の霊
(新字新仮名)
/
岡崎雪声
(著)
その内に夜は遠慮なく
更
(
ふ
)
け渡つて、彼女の耳にはひる音と云つては、唯
何処
(
どこ
)
かで鳴いてゐる
蟋蟀
(
こほろぎ
)
の声ばかりになつた。
南京の基督
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
夜の
更
(
ふ
)
けた切り通し坂を自分はまるで疲れ切って歩いていた。
袴
(
はかま
)
の
捌
(
さば
)
ける音が変に耳についた。坂の中途に反射鏡のついた照明燈が道を照している。
泥濘
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
細雨に
更
(
ふ
)
ける一夜を乱戟に明かし、ようやく
暁
(
あかつき
)
におよばんとしたとき、まぼろしのごとく現われて、自分等のみならず栄三郎とも刃を合わせたのち
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
更
(
ふ
)
けて遅く帰るようで有ったらば隙を
覗
(
うかゞ
)
って打果してしまうか、
或
(
あるい
)
は旨く
此方
(
こちら
)
へ引入れて、家老ぐるみ抱込んでしまうかと申す
目論見
(
もくろみ
)
でございます。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
夜の
更
(
ふ
)
けるとともに、私の怪しまれる可能性もいよいよ多くなって来たわけである。人がこわくてこわくて、私は林のさらに奥深くへすすんでいった。
狂言の神
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
更
常用漢字
中学
部首:⽈
7画
“更”を含む語句
夜更
更衣
深更
着更
初更
衣更
猶更
尚更
五更
変更
更紗
殊更
三更
二更
更生
一更
更行
満更
今更
万更
...