)” の例文
だが、やっぱり私はみえ坊だから、「層々として山水秀ず、足には遊方のくつみ、手には古藤の枝をる」
着物雑考 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
盛庸と鉄鉉とは兵を率いてそののちみ、東昌とうしょうに営したり。このとき北軍かえって南にり南軍却って北に在り。北軍南軍相戦わざるを得ざるのいきおい成りて東昌の激戦は遂に開かれぬ。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
嬉しやと貫一は、道無き道の木をぢ、がけを伝ひ、あるひは下りて水をえ、石をみ、巌をめぐり、心地死ぬべく踉蹌ろうそうとしてちかづき見れば、緑樹りよくじゆ蔭愁かげうれひ、潺湲せんかん声咽こゑむせびて、浅瀬にかかれる宮がむくろよ!
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
乱石の急階段をんで一歩一歩絶巓に近付く、此処まで来ると何とはなしに一種の親しさが胸の奥から湧いて、それがあたりの空気と溶け合って懐しい声——山の囁きが心耳に聞えるようだ
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)