)” の例文
越前ゑちぜん武生たけふの、わびしい旅宿やどの、ゆきうもれたのきはなれて、二ちやうばかりもすゝんだとき吹雪ふゞき行惱ゆきなやみながら、わたしは——おもひました。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしはしなくも、昨夜ゆふべローマからの滊車きしやなかんだ『小公子リツトルロー、トフオントルローイ』といふ小説せうせつちうの、あのあいらしい/\小主人公せうしゆじんこう聯想れんさうした。
太玄たいげんもんおのずからひらけて、このはなやかなる姿を、幽冥ゆうめいに吸い込まんとするとき、余はこう感じた。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けふこのミュンヘンのに来て、しばし美術学校の『アトリエ』借らむとするも、行李こりの中、唯この一画藁いちがこう、これをおん身ら師友の間にはかりて、成しはてむと願ふのみ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
いまから十余年前までの村上氏というものは、北信濃一円を威令して、坂城さかき葛尾くずのおの城を中心に、祖先鎮守府将軍源頼義の一族が末裔まつえいとして、誰も仰ぎ敬う位置に栄えていたものである。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
疑在広寒清虗府 疑うらくは広寒清虚こうかんせいきょるかと
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)