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旧字:
デンマークの文芸批評家ゲオルグ・ブランデスは、その点にれて、次のような簡明ではあるが味わいの深い評語を、のこしています。
「はつ恋」解説 (新字新仮名) / 神西清(著)
これにはんしてきたからのかぜは、荒々あらあらしいうみなみうえを、たかけわしいやまのいただきを、たにもったゆきおもてれてくるからでありました。
大きなかしの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがてお柳の手がしなやかにまがって、男の手にれると、胸のあたりに持って居た巻煙草は、心するともなく、はなれて、婦人おんなに渡った。
木精(三尺角拾遺) (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亀の子のように空中で首を振っているあの大きな梁が、彼の乗っている梁にもう一度ゴツンとでもれて見ろ! 一男は目をつぶった。
秋空晴れて (新字新仮名) / 吉田甲子太郎(著)
短遮等より投げたる球を攫み得て第一基をむこと(もしくは身体からだの一部をるること)走者より早くば走者は除外となるなり。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
なぜかなら、にわかなしょの到来で、江戸守備の任にある尾州藩の当主が京都をさして木曾路を通過することを知ったからで。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
元日の事件のことや、喬之助の身の振り方などには、まだどっちもれていなかった。ただ、こう言っている父親の声が、お妙に聞えた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
相変わらず親しげな調子であるが、言葉は容易に深くれようとはしなかった。時々話がとだえて黙っていることなどもあった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
高札こうさつはいたる所だし、一町五軒の五人組、十人組の町目付まちめつけが出来、万一犯人を知って、届け出ぬ者は、町中同罪のれ廻しでさ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もっと、とっぷりとかるようなのみものはない?」「しとしとと、こう手でれるような音曲おんぎょくいなあ。」母は遂々とうとうさじを投げた。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
私はふと何故なぜだか分らずにそのなめらかそうな柵をいじくろうとして手をさしべたが、それにはちょっとれただけであった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
そんなれた殺人事件なぞより数層倍恐ろしい……戦慄せんりつすべき出来事となって、貴方がたの眼に映じて来はしまいかと思われるのですが
復讐 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二三十段も駆けあがり、次の一足を踏みだそうとすると、足にれるものがありません。階段だけで、二階の床がないのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
「だから、用心をおしなさい。また怪しい者と見たらば、つかまえるか、お役所へ申し出るように、れが廻ったんですって」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
浅瀬あさせの波れて底なる石の相磨して声するようなり。道の傍には細流ありて、岸辺の蘆には皷子花ひるがおからみつきたるが、時得顔ときえがおにさきたり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのうちに彼の右手の人差指がいつの間にかそろそろと伸びていって、こわいものにでもれるように、そっとお鶴の頬をかすめたのである。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
要するに普通ふつう世間に行きわたっている範囲はんいでは、読み本にも、浄瑠璃じょうるりにも、芝居しばいにも、ついぞれたものはないのである。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
弓を執らざる弓の名人は彼等のほこりとなった。紀昌が弓にれなければ触れないほど、彼の無敵の評判はいよいよ喧伝けんでんされた。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
誤って法網ほうもうれしを、無情にも長く獄窓に坤吟しんぎんせしむる等、現政府の人民に対し、抑圧なる挙動は、実に枚挙まいきょいとまあらず。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
この人の曰く、手をかけて見たらばよかりしに、なかば恐ろしければただ足にてれたるのみなりし故、さらに何もののわざとも思いつかずと。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「実際、呆れた奴ですなあ。あれも少し気がれているんじゃアありませんか知ら。すくなくもヒステリー患者ですな。」と、市郎も眉をひそめた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
彼は、——僕はいまだに覚えている。彼はただ道に沿うた建仁寺垣けんにんじがきに指をれながら、こんなことを僕に言っただけだった。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
これは支那人の天性で、ひとたび金にるるや必ずその幾分かを自己のポケットの中に収めずにはおかぬ。これがかの国に於ける最大悪俗である。
三たび東方の平和を論ず (新字新仮名) / 大隈重信(著)
また、「うち靡く春さり来れば小竹しぬうれ尾羽をはうちりて鶯鳴くも」(同・一八三〇)というのもあり、これも鶯の行為をこまかく云っている。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
あるひはラブがなかつたせいかもれぬ。つましんからわたしれてるほど、夫婦ふうふ愛情あいじやうあぶらつてないせいかもれぬ。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
全能の神が造れる無辺大の劇場、眼にる無限、手にるる無限、これもまた我が眉目をかすめて去らん。しかして余はついにそを見るを得ざらん。
カーライル博物館 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ふと遠い冷たい北の方で、なにかかぎでもれあったようなかすかな声がしました。からすの大尉は夜間双眼鏡ナイトグラスを手早く取って、きっとそっちを見ました。
烏の北斗七星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
二号艇は、もう手をのばせばれんばかりの近くにあった。彼等の眼は、電光のように早く、二号艇のうえにおちた。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ランドリュはリネェのれこみを真にうけて、半年ほどのあいだ及ぶかぎりの奉仕をしていたが、リネェに資産などはなく、アパートの家具を売って
青髯二百八十三人の妻 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
一代の柔い胸の円みにれたり、子供のように吸ったりすることが唯一ゆいいつのたのしみで、律義な小心者もふと破れかぶれの情痴じょうちめいた日々を送っていたが
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
ぐっと一膝ひとひざ乗り出した歌麿の眼は、二十の男のような情熱に燃えて、ともすれば相手の返事も待たずに、その釣鐘型の乳房へ、手をれまじき様子だった。
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
私はロボの前へ肉と水をおいたが、かれは見向きもせず、しずかにはらばいになってはるかの草原を見つめている。私がステッキでれても身動きもしない。
あるいは偶然にも話題の主の人の眼にこの書がれたならば、あの時の男は彼であったかと思わるるであろうが、僕はこれを美談と思うからかくさずに話する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
目に見る事も出来れば、手にるる事も出来るのだ。その形、その大いさ細かい金線の飾り、まぎれもなく彼がかつて手にしたことのある水晶の栓に相違ない。
水晶の栓 (新字新仮名) / モーリス・ルブラン(著)
ふと、筒井は一たいこの手は何人だれの手であろうか、何人がれてくる手であろうかと、心のずっと奥の方で彼女はこっそりと考えた。同じ思いは貞時にもあった。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
片言半句でも、ふるさとのことにれられると、私は、したたか、しょげるのである。痛いのである。
新樹の言葉 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そしてそのくちばしきょの中へ突き込むと、そのきょの中に二つの梃子てこのようなものが出ていてそれにれる。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
いてれてたところで、なにやらかさかさとした、丁度ちょうど張子細工はりこざいくのようなかんじがするばかり、そこに現世げんせあじわったような甘味うまみ面白味おもしろみもあったものではない。
安達君は余の発狂を見舞に来てくれたが、余は安達君の病原びょうげんるゝことが出来なかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
赤本を耽読して悉く之をそらんじ、其他雑芸雑学に通じて衆愚に説法することを楽しむ一個の閑人であるが、胸に一物ある巧案という鍼医の画策によって文殊もんじゅの再生と言いらされ
春水と三馬 (新字新仮名) / 桑木厳翼(著)
読書どくしょかれ病的びょうてき習慣しゅうかんで、んでもおよれたところものは、それがよし去年きょねん古新聞ふるしんぶんであろうが、こよみであろうが、一ようえたるもののように、きっとってるのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
或はいわれて澎湃ばうはい白沫をばし、或は瀾となり沈静ちんせい深緑しんりよくあらはす、沼田をはつして今日にいたり河幅水量ともはなはだしく减縮げんしゆくせるをおぼえず、果して尚幾多の長程と幾多いくたの険所とをいうする
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
今日では、天然記念物や高山植物の保護をはかるおれも、出ていることは、いるそうだが、さようなおきてを、心から後生大事に守る人間は、残念ながら、まず滅多にはいないらしい。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
しかし自分には同胞の運命を直くするほどの実力があるのではない。るるところのものを幸福にするだけの器量があるのでもない。しかし黙って祈ってのみいるには堪えられない。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
今になって魂消たまげてそんなことをいって来てもだめだよ、若草は勤めのうちでもほかのお客へ出て肌をらねえ、われうちの伊之助を亭主ていしと思って、夫婦約束の書付まで取替わせた仲だから
彼が身動きをする前に、私はそのからだにれるほどに近づいたが、彼はやはり私を見つめている眼を離さないで、わずかにひと足あとずさりをして、挨拶の手を挙げたばかりであった。
雲は寄る寄るがけんで、ね返されたる倒波ローラアの如きあり、その下層地平線にれて、波長を減じたるため、上層とさつして白波サアフあは立つごときあり、これを照らすにかの晃々くわう/\たる大月あり
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
もちろんそれはヱヴェレストのいかりにれた、ラランのうしなつた姿すがたであつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
そして、爪先つまさきを水にれてみる。その足のゆびは、靴が小さすぎてりむけていた。そうしながら、また胃ののあたりをさすってみた。恐らく、食ったものがまだこなれていないだろう。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
あたかも一家の至尊には近づくべからず、その忌諱ききにはるべからず、俗にいえば殿様旦那様の御機嫌は損ずべからずとして、上下尊卑のぶんを明らかにし、例の内行禁句の一事に至りては
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)