)” の例文
するのは瓦斯の焔がき出す音ばかりだ。ピラピラする透明な焔色を見守り、みのえは変に夢中な気持になって湯の沸くのを待った。
未開な風景 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
絞殺に鮮血がきでるというのは可笑おかしかった。なにかこれは別の傷口がなければならない。一郎は愛弟四郎の屍体に顔を近づけた。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大へん悔悟かいごしたような顔はしていましたが何だかどこかき出したいのをこらえていたようにも見えました。しょんぼりだんに登って来て
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「ううっ……」と、仰むけにぶっ仆れたお十夜は、ひとつ、大きな波を肋骨あばらに打って、こんこんときでる黒血の中に断末をとげた。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
書窓しょそうから眺めると、灰色はいいろをした小雨こさめが、噴霧器ふんむきく様に、ふっ——ふっと北からなかぱらの杉の森をかすめてはすいくしきりもしぶいて通る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これが西暦せいれき千八百八十三年せんはつぴやくはちじゆうさんねん大爆裂だいばくれつをなして、しま大半たいはんばし、あとにはたかわづか八百十六米はつぴやくじゆうろくめーとる小火山島しようかざんとうのこしたのみである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そのま上の濁った水が、新しくき上った水に追いのけられて、そこからあかるい月の光りと清らかな星の光りが流れ込んで来ました。
ルルとミミ (新字新仮名) / 夢野久作とだけん(著)
眞中まんなかには庭園ていえんがあり、噴水ふんすいえずみづし、あたりには青々あを/\しげつた庭木にはきゑてあり、あつなつでもすゞしいかんじをあた
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
川をはさんだ山は紅葉と黄葉とにすきまなくおおわれて、その間をほとんど純粋に近い藍色あいいろの水が白いあわいて流れてゆく。
日光小品 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あの煙突から時どき猛烈に煙りをき出すので、どうも火の用心が悪いといって、うちの兄貴がよくあの執事と喧嘩をすることがあるんです。
「はあ、そうですか。」私はき出したいのをこらえて、「僕は名刺を持っていませんけど、田中、——」と名乗りかけると
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ガンガン………バリバリッと、がんじょうなドアはたたきやぶられ、見えない手が突きだしたピストルが、博士めがけて、二度、火をいた。
それは形が小さくてつまらない虫であるからおかしくてきだそうとしたが、やっと口に手をやってこらえ、そこで自分の虫を出して見せた。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
小庇こびさしの下には、緑青のいた古ぼけた鐘が吊されてあって、その中心から細い鎖が、枯草の中をはって、門の方へどこまでも続いている様子
こうして、幾つかの因子ファクターを排列しているうちに、法水はっと血腥ちなまぐさいような矢叫やさけびを、自分の呼吸の中に感じたのであった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
むしろ「鯨のいた汐が雨となつた」と言ひはなす方よろしかるべく候。この人往々この種の句をはさんで雄壮なる歌をだいなしにするくせ有之候。
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「今日でもう五日も學校を休んで、……落第しますで。」と、母のやうな顏をして竹丸を睨んで、直ぐにき出して笑つた。竹丸も共に笑つた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
新吉は黒い指頭ゆびさきに、臭い莨をつまんで、真鍮しんちゅう煙管きせるに詰めて、炭の粉をけた鉄瓶てつびんの下で火をけると、思案深い目容めつきをして、濃い煙をいていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
大きな瀬戸火鉢には、鉄瓶てつびんが湯気をいてゐる。障子ぎはに三面鏡が置いてあり、その横の小さい棚には潮汲しほくみの人形が硝子箱にをさまつてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
火をく山から天に舞い上る大蛇おろちのような煙。高い山の雪の日に輝く銀の塔を磨いたような色。浅緑の深い色の空気。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わしは檣頭マストヘッドからしおいている鯨のやつらをちゃんと見たのだから、君がいかにかぶりを横にふっても、そりゃあ駄目だ
ところが日本人だと存外単純に見做みなして、徳義的の批判を下す前にまず滑稽こっけいを感じてすだろうと思うのです。
文芸と道徳 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
天を仰げる鼻のあなより火煙もくべき驕慢きょうまんの怒りに意気たかぶりし為右衛門も、少しはじてや首をたれみながら、自己おのれが発頭人なるに是非なく
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
卑弥呼は良人おっとを抱きかかえた。大兄の胸からは、血が赤い花のようにした。長羅は卑弥呼の肩に手をかけた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
低気圧が来る時には噴出が盛んになって麦藁帽むぎわらぼうくらいき上げるなどと話しました。それから小作人の住宅や牛小屋、豚小屋、糞堆ふんたいまで見て歩きました。
先生への通信 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そのとき、ふもとの谷川たにがわは、こえをかぎりにさけびます。また、もりには、かぜこって、ゴーゴーとります。あるやまは、あかいて、ほし警戒けいかいします。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
たちまち、ざつとなつて、ポンプでくがごとく、泥水どろみづ両方りやうはうほとばしると、ばしやんと衣裳鞄いしやうかばんねかゝつた。運転手台うんてんしゆだい横腹よこばらつなけてんだのである。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
坐つてて突き上げると、返り血を浴びて、大變なことになるぜ。——刀は拔いて捨てたんだから、心の臟を破つて返り血が傷口からき出さないわけはねえ
面色は青ざめはてて、その息ごとに、その鼻から、その目から、忿怒ふんぬ火焔かえんきでぬことが不思議であった。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
森厳真面目のオースチン老師にも似ず何んだろういったいこの問答は! 彼は思わずき出そうとしたが老師の様子が真剣なので浮雲あぶなく笑いを引っ込ませた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし、いまは水もき上がってはいませんでした。また金属製の犬が戸口の番をしている色あざやかな部屋々々からも、歌声一つひびいてはきませんでした。
あまりの不思議に天水香の亀が水をいたというてえらい評判だした。と彼は常に私に吹聴ふいちょうするのだった。
めでたき風景 (新字新仮名) / 小出楢重(著)
はだけた寝巻ねまきからのぞいている胸も手術の跡がみにくくぼみ、女の胸ではなかった。ふと眼をらすと、寺田はもう上向けた注射器の底をして、液をき上げていた。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
左の頸のところで、「びゅっ」というふうな音がし、なま温かい湯のようなものがき出すのを感じた。
雪と泥 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
めらめらの火や、きあげる血や、がれた腕や、死狂うくちびるや、糜爛びらんの死体や、それらはあった、それらはあった、人々の眼のなかにまだ消え失せてはいなかった。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
父の腰巾着こしぎんちゃくで大劇場をのぞいたり、腰弁当で鳥熊の芝居に入り込む以外に、自分も一つ芝居を書いてみようという野心は、この時分から初めて芽をいたのであった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何という滑稽こっけいな場面だったろう。今から思うとき出したくもあるし、顔が赤らんでも来る。けれどその時の私は、きわめて真面目に、そして真剣に言ったのだった。
しかるに翌朝吉野十八ごう荘司しょうじ等が追撃して来て奮戦するうち、埋められた王の御首が雪中より血をき上げたために、たちまちそれを見附みつけ出して奪い返したと云う。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
菜種畠なたねばたけの遠く続いてる傾斜の向うに、春昼の光にかすんだ海が見え、沖では遠く、鯨がしおいてるのである。非常に光の強く、色彩の鮮明な南国的漁村風景を描いてる。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
そして暫時可笑をかしさを口の中にこらへて居たが、こらへ兼ねてとう/\き出して仕舞つた。
(新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
天氣てんきでも好くつて見ろ、蟹め、あわきながら、世界せかいひろくして走り廻つてゐるからな。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
亜米利加アメリカ人のハミングの真似をして、事務員にしかられた事を思い出し、ぼくの出鱈目でたらめ英語も可笑おかしく、ぼくはプウとき出すと、すっかり気分がよくなって、寝に帰ったのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
揺すり動かし砕き去ろうとする狂瀾怒濤に抗して、不滅を叫ぶ興奮から岩礁はいやが上にも情熱の火を燃やす。遠空とおぞらにかすむ火山の円錐えんすいがこの死闘を静かに見おろして煙をく。
すると彼女と、妓夫台ぎふだいにうたた寝をしていてそのとき眼をさました番頭さんが、異口同音に「朴歯、朴歯。」と大きな声で云ったので、私たちは顔を見合せてき出してしまった。
朴歯の下駄 (新字新仮名) / 小山清(著)
私と伊藤は——思わずき出した。が、泣かされるときのように私の顔は強わばった。
党生活者 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
『どくどくとき出して、蔭から日向ひなたへと嬉しそうに踊って行くように流れるこんなにきれいな泉が、その中に一滴の涙でも含んでいようなんて、僕は夢にも思わなかったなあ!』
突然、すてはにささった竹の火箸ひばしを手に取ると、唇にくわえこんだと見る間に、あろうことかばりばりと上と下の白い前歯で噛み砕いた。歯と唇とから一面に鮮血がいてはしった。
お艶の声は、底にいまもき出しそうな何ものかを含んで、懸命におさえていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
屍体はまだ生血をいて、その血の流域がみるみるひろがりつつあったくらいだから、発見者の到着がいま一足早かったら彼はまちがいなく「解剖」の現場と犯人を目撃したことだろう。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
誰でも人は胸に燃え立つ火のかたまりをさめて居るものです、火の口を明けて其を外へき出さぬ程心苦しいことはありませぬ、世の中の多くは其れを一人のかたに献げて満足するのです、けれど
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)