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殖
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ふ
ふりがな文庫
“
殖
(
ふ
)” の例文
海にはこの数日来、
俄
(
にわか
)
に水母が
殖
(
ふ
)
えたらしかった。現に僕もおとといの朝、左の肩から
上膊
(
じょうはく
)
へかけてずっと針の
痕
(
あと
)
をつけられていた。
海のほとり
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
中国の若者も眼鏡が
殖
(
ふ
)
えているし、お会いして伺いますが、上海にいて魯迅全集の仕事をしていた内山完造の『支那漫語』(改造)
獄中への手紙:05 一九三八年(昭和十三年)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そこで、大好きな田圃の中でも、
選分
(
えりわ
)
けて、あの、ちょろちょろ川が嬉しい。
雨上
(
あまあが
)
りにちっと水が
殖
(
ふ
)
えて、畔へかかった処が無類で。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
文作の話をどこまでも本当にして、云い伝え聞き伝えしたので、足萎え和尚を信仰するものが、前よりもズッと
殖
(
ふ
)
えるようになった。
いなか、の、じけん
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
したって、兄は呑んだくれの
我儘
(
わがまま
)
者だけれど、それでも苦労してあげていい値打があるし、そのうえ新さんって人まで
殖
(
ふ
)
えたでしょう
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
門人が
名主
(
なぬし
)
をしていて、枳園を江戸の大先生として
吹聴
(
ふいちょう
)
し、ここに開業の
運
(
はこび
)
に至ったのである。幾ばくもなくして病家の
数
(
かず
)
が
殖
(
ふ
)
えた。
渋江抽斎
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「さよう、近頃のように卒業生が
殖
(
ふ
)
えちゃ、ちょっと、口を
得
(
う
)
るのが困難ですね。——どうです、田舎の学校へ行く気はないですか」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すさびかけている心をかえりみて、やがて、吉水の説教の日には、夫婦して打ち連れてくる者がにわかにそのころ
殖
(
ふ
)
えてきたという。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一々
算盤珠
(
そろばんだま
)
を
弾
(
はじ
)
いて、口が一つ
殖
(
ふ
)
えればどう、二年
経
(
た
)
って子供が一人
産
(
うま
)
れればどうなるということまで、出来るだけ詳しく積って見た。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
人間の数が
殖
(
ふ
)
えて、この地球の上には
載
(
の
)
りきらないのも一つじゃ。だが、それだけではない。人間の
漂泊性
(
ひょうはくせい
)
じゃ。人間の
猟奇趣味
(
りょうきしゅみ
)
じゃ。
遊星植民説
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あなあはれ、摩訶曼珠沙華、出で入るとひとり眺めて、時をりは妻と眺めて、
昨日
(
きのふ
)
ゆかいよよ
殖
(
ふ
)
えしと、まだ今日も赤しとぞ見る。
観想の時:――長歌体詩篇二十一――
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
さうして
此後
(
このご
)
も
大凡
(
おほよ
)
そこんな
状勢
(
じやうせい
)
で
進
(
すゝ
)
むからして
從
(
したがつ
)
て
少
(
すくな
)
くも
是迄
(
これまで
)
彌
(
いや
)
が
上
(
うへ
)
に
殖
(
ふ
)
えて
來
(
き
)
た
國債
(
こくさい
)
の
總額
(
そうがく
)
を
殖
(
ふや
)
さずに
濟
(
す
)
まし
得
(
う
)
る
次第
(
しだい
)
である。
金解禁前後の経済事情
(旧字旧仮名)
/
井上準之助
(著)
先刻
(
さつき
)
も申したやうに来年は旋盤も四五台
殖
(
ふ
)
やす積りでごわす。此所で取つてゐなさるだけの給金は、わつしの所でも差し上げますわい。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
或
(
ある
)
ひはまた
廷臣
(
ていしん
)
の
鼻
(
はな
)
の
上
(
うへ
)
を
走
(
はし
)
る、と
叙任
(
ぢょにん
)
を
嗅出
(
かぎだ
)
す
夢
(
ゆめ
)
を
見
(
み
)
る、
或
(
ある
)
ひは
獻納豚
(
をさめぶた
)
の
尻尾
(
しっぽ
)
の
毛
(
け
)
で
牧師
(
ぼくし
)
の
鼻
(
はな
)
を
擽
(
こそぐ
)
ると、
僧
(
ばうず
)
め、
寺領
(
じりゃう
)
が
殖
(
ふ
)
えたと
見
(
み
)
る。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
中頃は大きな泡が段々小さくなって小さい泡ばかりになります。この時でも最初玉子を入れた時より分量が二倍位に
殖
(
ふ
)
えています。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
しかしこの論争は、波紋が段々大きくなり、私たちの方言価値論に味方する者は非常に
殖
(
ふ
)
え、日本本土でもやかましい問題になりました。
沖縄の思い出
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
その思いはいねの子供たちが
殖
(
ふ
)
え、毎年の
盂蘭盆
(
うらぼん
)
や年忌などに墓へゆくたびにどの子供かの質問でよけいはっきりとそう思うのであった。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
或時
(
あるとき
)
は
土方
(
どかた
)
となり、
或時
(
あるとき
)
は坑夫となって、
甲
(
それ
)
から
乙
(
それ
)
へと
際限
(
はてし
)
もなく迷い歩く
中
(
うち
)
に、二十年の月日は夢と過ぎた。彼の頭には
白髪
(
しらが
)
が
殖
(
ふ
)
えた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
生々
(
せいせい
)
又生々。
営々
(
えいえい
)
且
(
かつ
)
営々。
何処
(
どこ
)
を向いても
凄
(
すさま
)
じい自然の
活気
(
かっき
)
に
威圧
(
いあつ
)
される。
田圃
(
たんぼ
)
には
泥声
(
だみごえ
)
あげて
蛙
(
かわず
)
が「
生
(
う
)
めよ
殖
(
ふ
)
えん」とわめく。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
其
(
そ
)
の
秋
(
あき
)
の
盆
(
ぼん
)
には
赤痢
(
せきり
)
の
騷
(
さわ
)
ぎも
沈
(
しづ
)
んで
新
(
あたら
)
しい
佛
(
ほとけ
)
の
數
(
かず
)
が
殖
(
ふ
)
えて
居
(
ゐ
)
た。
墓地
(
ぼち
)
には
掘
(
ほ
)
り
上
(
あ
)
げた
赤
(
あか
)
い
土
(
つち
)
の
小
(
ちひ
)
さな
塚
(
つか
)
が
幾
(
いく
)
つも
疎末
(
そまつ
)
な
棺臺
(
くわんだい
)
を
載
(
の
)
せて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
その頃東京の場末に
殖
(
ふ
)
えつつあつた小さい見すぼらしいマッチ箱みたいな人家を建てさせないために買ひ取つたものだといふことであつた。
桂離宮
(旧字旧仮名)
/
野上豊一郎
(著)
世の中には
怪物
(
ばけもの
)
が沢山居る、学問が進んで
怪物
(
ばけもの
)
の数が
少
(
すくな
)
くなったと云うがそれはいい加減なことで
却
(
かえ
)
って
殖
(
ふ
)
えたかも知れない
大きな怪物
(新字新仮名)
/
平井金三
(著)
その裡に群衆は、ますます
殖
(
ふ
)
えて行った。千人を
超
(
こ
)
した群衆が、この橋を上流下流、四五十間の間ぎっしりと詰めかけている。
死者を嗤う
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
だが、息子のそれらの良質や、それに
附随
(
ふずい
)
する欠点が、世間へ
成算
(
せいさん
)
的に役立つかと
危
(
あや
)
ぶまれるとき、また
不憫
(
ふびん
)
さの愛が
殖
(
ふ
)
える。
かの女の朝
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
或
(
あるひ
)
は
飮食店
(
いんしよくてん
)
に
於
(
お
)
ける
揚物
(
あげもの
)
の
油
(
あぶら
)
、
或
(
あるひ
)
はせるろいど
工場
(
こうじよう
)
など、
世
(
よ
)
の
文化
(
ぶんか
)
が
進
(
すゝ
)
むに
從
(
したが
)
ひ、
化學藥品
(
かがくやくひん
)
にして
發火
(
はつか
)
の
原因
(
げんいん
)
となるものが、
益
(
ます/\
)
殖
(
ふ
)
えて
來
(
く
)
る。
地震の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
「こいつは
綺麗
(
きれい
)
だ、この
秣槽
(
かいおけ
)
は……」と、にんじんは、
小賢
(
こざか
)
しい調子でいった——「なるほど。金物を入れて、血を
殖
(
ふ
)
やそうってわけだね」
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
他日、幾人に
殖
(
ふ
)
えて来るかも分りません。木彫りの方がもし殖えた場合「牙」の字を表わした会名では
如何
(
いかが
)
かと思われます。
幕末維新懐古談:48 会の名のことなど
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「灯をもっと
殖
(
ふ
)
やせ、観音様も笑って御座るよ。ちと剥げちょろになったが、
木地
(
きじ
)
が見えると金箔の時よりは不思議に明るく温かにおなりだ」
奇談クラブ〔戦後版〕:07 観音様の頬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
冬になると橋から馬力が馬ぐるみ吹き落されるくらいですから、人間にも
応
(
こた
)
えます。
一風毎
(
ひとかぜごと
)
に
結膜炎
(
けつまくえん
)
の患者が
殖
(
ふ
)
えて私の病院へ泣き込みます。
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
今の
儘
(
まゝ
)
の顔
立
(
だち
)
でよいから、表情と
肉附
(
にくづき
)
の
生生
(
いきいき
)
とした活動の美を備へた女が
殖
(
ふ
)
えて
欲
(
ほ
)
しい。髪も黒く目も黒い日本式の女は
巴里
(
パリイ
)
にも
沢山
(
たくさん
)
にある。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
政七はこれを見て驚きましたというのは仙太郎が助けに出たのを泥坊が一人
殖
(
ふ
)
えたのだと思い、ブル/\
慄
(
ふる
)
えて居りました。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
が、やがて、その彼の、いや私達の
哀
(
かな
)
しい恋情は、月日が経って、私達の顔に次第に
面皰
(
にきび
)
が
殖
(
ふ
)
えてくるに従って、何処かへ消えて行って了った。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
維新後でもこんな有様でありますから、徳川時代の百姓、町人らが、一向
殖
(
ふ
)
えなかった間にも、彼らは非常に殖えました。
融和問題に関する歴史的考察
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
人口が
殖
(
ふ
)
え、自動車の数も増し、煙突から吐き出される煙の量も著しく増加したということによって説明されるであろう。
雪
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
今日勝った、今日負けた、今度こそ負けるもんか——血の
滲
(
にじ
)
むような日が滅茶苦茶に続く。同じ日のうちに、今までより五、六割も
殖
(
ふ
)
えていた。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
幾億とも知れぬ極微なる蟲共は、いつ
殖
(
ふ
)
えるともなく、いつ動くともなく、まるで時計の針の様に正確に、着々と彼等の領土を侵蝕して行った。
虫
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
「ああ、たくさん
殖
(
ふ
)
えて
困
(
こま
)
るのだから、
君
(
きみ
)
の
好
(
す
)
きなのを一
本
(
ぽん
)
こいで、
持
(
も
)
ってゆきたまえ。」と、
孝
(
こう
)
ちゃんはいいました。
親木と若木
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
なるほどこうして置けば、お金はズンズン利に利を産んで
殖
(
ふ
)
えてゆくだろうけれど、
遣
(
つか
)
えないお金では全くつまらない。
大菩薩峠:09 女子と小人の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
少しずつ移住の賛成者も
殖
(
ふ
)
えているらしく思われた。やがて、春の北海航路の開ける前にその概数を知ることが出来た。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
生徒の数も段々
殖
(
ふ
)
えて、塾生の数は常に二百から三百ばかり、教うる所の事は
一切
(
いっさい
)
英学と
定
(
さだ
)
め、英書を読み英語を解するようにとばかり教導して
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
今では利に利が積もって千ルーブルから二千ルーブルにも
殖
(
ふ
)
えた、自分の子供の時分からの金が、この国ではなんともしようのないいろんな形式や
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
犬の居る前を通過ぎる度毎に吠えられるから、気を付けて見れば、皆な識らない顔の犬仲間です。村も変つて、大きくなり、また人も
殖
(
ふ
)
えて居ます。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
そして翌年の春には、どの鶏舎にも白色レグホンやミノルカがさわがしく走りまわるようになり、生まれる卵の数も日に日に多少ずつ
殖
(
ふ
)
えて行った。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
「よかったわね。」と義妹も笑い、「兄さんにしちゃ大手柄じゃないの。おかげで、うちの財産が一つ
殖
(
ふ
)
えたわ。」
薄明
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
ナオミは人手が
殖
(
ふ
)
えたとなると、いよいよ横着を発揮して、横のものを縦にもしないで、一々女中をコキ使います。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
仲間が
殖
(
ふ
)
えれば殖えるほど本当の人間に依って滅亡されてしまう。猟師が、狼を狩り尽すように——虫ケラ同様に
狂人日記
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
これを二万籠の方に持込めば、また一つ数学の問題が
殖
(
ふ
)
えるわけであるが、それはわれわれの領分ではない。二万籠の橙の量は、常人の想像以上に属する。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
そしてそういう不覚の感じは一層彼から彼女を
失
(
なく
)
ささせる、変な暗示のようなものをその心に
殖
(
ふ
)
やして行った。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
植物の研究が進むと、ために人間社会を幸福に
導
(
みちび
)
き人生を厚くする。植物を資源とする工業の
勃興
(
ぼっこう
)
は国の
富
(
とみ
)
を
殖
(
ふ
)
やし、したがって国民の生活を
裕
(
ゆた
)
かにする。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
ところが、私が
如何
(
どう
)
にか斯うにか
取続
(
とりつづ
)
いて帰らなかったので、両親は
独息子
(
ひとりむすこ
)
を
玉
(
たま
)
なしにしたように歎いて、父の
白髪
(
しらが
)
も其時分僅の
間
(
あいだ
)
に
滅切
(
めっき
)
り
殖
(
ふ
)
えたと云う。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
殖
常用漢字
中学
部首:⽍
12画
“殖”を含む語句
繁殖
貨殖
蓄殖
殖産
蕃殖
学殖
拓殖
利殖
生殖
養殖
貨殖伝
貨殖列伝
親族繁殖
蕃殖期
過殖
蕃殖力
霊魂生殖説
飯殖焚
麻殖郡
移殖
...