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ふりがな文庫
“
老
(
ふ
)” の例文
年齡よりは
老
(
ふ
)
けて見える物腰、よく
禿
(
は
)
げた前額、柔和な眼——すべて典型的な番頭でこの男だけは惡いことを
企
(
たくら
)
みさうもありません。
銭形平次捕物控:162 娘と二千両
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
実直さとともに
老
(
ふ
)
け、
痩
(
や
)
せぎすな体で、
賄
(
まかな
)
い方の辛労をひき受けて来たのだ。無限の実直さには何らの価値もみとめてはいなかった。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
年よりは
老
(
ふ
)
けた沈んだ色のウールのブラウスをきて、まるでこの場の空気になんの関係もないといったような冷淡な態度をとっている。
キャラコさん:01 社交室
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
このごろすぐ眉間へ深い立皺の寄る、年よりはぐっと
老
(
ふ
)
けた母親のおすみがオロオロしたような顔を見せて、土間まで迎えてきた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
が、彼は今、心の前面に、病床の中からも彼のする事を一つ一つ見守っているような彼の母の
老
(
ふ
)
けた顔をはっきりとよみ返らせた。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
▼ もっと見る
おかみは、はじめ僕には三十すぎのひとのように見えましたが、僕と同年だったのです。いったいに、
老
(
ふ
)
けて見えるほうでした。
女類
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
その当時、まだ中学生になったばかりの中野の記憶に比べれば、相当
老
(
ふ
)
けてはいるが、たしかに見当違いではないと断言出来た。
地図にない島
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
たしかに
齢
(
とし
)
よりは十ぐらい
老
(
ふ
)
けて見えるがその実ようやく四十になったばかりのこの絵師は、当時長崎きっての版画師であった。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
老
(
ふ
)
けたというよりも、やつれた感じがどことなく見え、ことに、白粉ッ気ひとつない顔が以前よりも表情をむき出しにしていた。
光は影を
(新字新仮名)
/
岸田国士
(著)
年も二番目の義兄貞之助より一つや二つ上であっても外見が
老
(
ふ
)
けてさえいなければ、と云うところまで折れて来るようになった。
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
ドミトリイ・フョードロヴィッチは二十八歳で、気持のいい顔だちをした、中背の青年だったが、年よりはずっと
老
(
ふ
)
けて見えた。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
長いあいだの気苦労の多い生活と闘ったり、もがいたりして来た
痕
(
あと
)
が、いたましいほどこの女たちの
老
(
ふ
)
けた面に現われていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
老
(
ふ
)
けた女のひとに出逢うと、娘の頃にせめていまのようなこころがあったらどんなによかったでしょうと云う。だから、心残りのないように。
恋愛の微醺
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
岸本が国を出る時、名古屋から一寸
別離
(
わかれ
)
を告げに来たと言って、神戸の旅館まで訪ねてくれた人に比べると、この兄も何となく
老
(
ふ
)
けて見えた。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
宵夜中
(
よいよなか
)
小使銭
(
こづかい
)
貸せの
破落戸漢
(
ならずもの
)
に踏み込まれたり、苦労に
齢
(
とし
)
よりも
老
(
ふ
)
けた岩公の
阿母
(
おふくろ
)
が、孫の赤坊を負って、草履をはいて小走りに送って来る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
三十八九の時、信二をもったので息子の年の割に母親は
老
(
ふ
)
けて居て
鬢
(
ビン
)
はもう随分白く額なんかに「涙じわ」が寄って居る。
千世子(二)
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
少し
老
(
ふ
)
けて、顔つきが尖って、だるそうでしょう。さあ、そこで『認識』へ後戻りして言うとですね、まあこういう人間が考えられるでしょう。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
年の頃は、まだ三十幾つだろうが、その俳諧師らしい
風采
(
ふうさい
)
が、年よりは
老
(
ふ
)
けて見せた上に、言語挙動のすべてを一種の
飄逸
(
ひょういつ
)
なものにして見せる。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どうしてこの男があのふとった
老
(
ふ
)
けたような細君といっしょになんかなったんだろう? その細君といえば、そのときのぞき窓のむこうの台所で
城
(新字新仮名)
/
フランツ・カフカ
(著)
ふたりとも、ひどく
老
(
ふ
)
けて骨ばっていた。母親の頭は銀いろに光っているし、娘もやつれ、しぼんで、母親の年に五つとは違わないように見えた。
嫁入り支度
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「栄さんよりゃ才さんの方が
老
(
ふ
)
けて見えるがな。才さんの頭にゃ白髪がぎょうさん生えてる。もう若白髪じゃないなあ」
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
よく見ると、それはわたしの若いときに非常な仲よしであった友達で、わずか五年ほど逢わないうちに五十年も年をとったように
老
(
ふ
)
けて見えました。
世界怪談名作集:15 幽霊
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
秋
(
あき
)
も
老
(
ふ
)
けて、
末
(
すえ
)
になると、いつしかかきの
木
(
き
)
は
坊主
(
ぼうず
)
になってしまって、
寒
(
さむ
)
い
木枯
(
こが
)
らしが、
昼
(
ひる
)
も
夜
(
よる
)
も
吹
(
ふ
)
きさらしました。
お化けとまちがえた話
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
薄暗
(
うすぐら
)
い
釣
(
つるし
)
ランプの光が
痩
(
や
)
せこけた
小作
(
こづく
)
りの
身体
(
からだ
)
をば
猶更
(
なほさら
)
に
老
(
ふ
)
けて見せるので、ふいと
此
(
こ
)
れが
昔
(
むかし
)
は
立派
(
りつぱ
)
な質屋の
可愛
(
かあい
)
らしい
箱入娘
(
はこいりむすめ
)
だつたのかと思ふと
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
水番というのか、
銀杏返
(
いちょうがえ
)
しに結った、年の
老
(
ふ
)
けた
婦
(
おんな
)
が、座蒲団を数だけ持って、先に立ってばたばた敷いてしまった。
城のある町にて
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
三十九には老込みようがチト早過ぎるという人も有ろうが、気の
持方
(
もちかた
)
は年よりも
老
(
ふ
)
けた方が好い。それだと無難だ。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
お鈴はお芳の顔を見た時、存外彼女が
老
(
ふ
)
けたことを感じた。しかもそれは顔ばかりではなかった。お芳は四五年以前には円まると
肥
(
ふと
)
った手をしていた。
玄鶴山房
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
何をしているのだと訊いたその声は
老
(
ふ
)
けていましたが、年は私と同じ二十七八でしょうか、
痩
(
や
)
せてひょろひょろと背が高く、鼻の横には大きくホクロ。
アド・バルーン
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
で、とうと思ひ立つて従軍を願ひ出たが、それには余りに
老
(
ふ
)
け過ぎてゐるので、当局者は容易に
肯
(
き
)
き入れなかつた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
おいらん時分からすると、すっかり
老
(
ふ
)
けて見えた。外見はかなり変っているが、人のよさは変らないようだ。これで、よくまあ、こんな商売ができる。
いやな感じ
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
頸が太く、背が低く、皮膚が荒れ、三十近い年配よりももっと
老
(
ふ
)
け、吾妻下駄なんかをはいて、小さな風呂敷包をもってる彼女の姿は、人中に目立った。
道化役
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
と思ったくらい、この中では、チビな男だったが、顔を見ると
老
(
ふ
)
けているし、挨拶もいやに小ましゃくれていた。
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
クリストフはそこから出て、砕かれ、焼かれ、十年も
老
(
ふ
)
けていた——しかし救われていた。彼はクリストフを打ち捨てて、神の中に移り住んだのだった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
それから話は自然、いま家族を挙げて興福寺の成就院に難を避けて来ている関白のことに移って、
太閤
(
たいこう
)
もめっきり
老
(
ふ
)
けられましたな、などと玄浴主が言う。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
夫人は、居間で、
小遣帳
(
こづかいちょう
)
らしいものを出して調べていた。五十に近い小柄な細面の顔は年よりも
老
(
ふ
)
けて見えた。
第二の接吻
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
打見
(
うちみ
)
には二十七八に見える
老
(
ふ
)
けた所があるけれど、實際は漸々二十三だと云ふ事で、髭が一本も無く、烈しい氣象が眼に輝いて、少年らしい活氣の溢れた
病院の窓
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
顔はほとんど黒く頭髪はほとんどまっ白で、額から
頬
(
ほお
)
へかけて大きな
傷痕
(
きずあと
)
があり、腰も背も曲がり、年齢よりはずっと
老
(
ふ
)
けていて、手には
耡
(
すき
)
か
鎌
(
かま
)
かを持ち
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
で、女が聞いたそうですよ。あなたが学校を卒業なさると、二十五六に
御成
(
おな
)
んなさる。すると私も同じぐらいに
老
(
ふ
)
けてしまう。それでも御承知ですかってね
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と、突きつけたその顔には、
恒
(
つね
)
より
老
(
ふ
)
け
窶
(
やつ
)
れた
衰
(
おとろ
)
えがすわり、
目隈
(
めくま
)
が青く、唇が歪んで世にもすさまじい、三十おんなの恨みの表情が、一めんに
漲
(
みなぎ
)
っている。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
二十五位のとき彼女は一度味噌屋から姿を消し、それから五、六年は見えなかったが、再び味噌屋へ戻って来た時は一度に十も年をとったように
老
(
ふ
)
けて見えた。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
二十一になるお時を
頭
(
かしら
)
に、まだ乳房を探りたがる義之助まで、男女七人の子を生んだお安は、取つて三十七で、道臣の妻と同い年であるが、ズツと
老
(
ふ
)
けて見える。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
ひどく
老
(
ふ
)
けても見えたし、そうかと思うとかなり若いようでもあったが、たぶん四十五、六らしかった。
踊る地平線:08 しっぷ・あほうい!
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
年は二十ちょっとぐらいだろうが、
世帯崩
(
しょたいくず
)
れのような、ひどく
老
(
ふ
)
けてみえる女が注文を聞きに来て、おや、指定さんのにいさんじゃないの、と驚いたように云った。
落葉の隣り
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
丈の高い骨組の大きな、今年漸く五十の坂を越したばかりだのに、もう頭は半白になり、
赭
(
あか
)
い顔には深い皺が幾条も刻まれて、年よりは五つも六つも
老
(
ふ
)
けて見えた。
厄年
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
お見かけの通り黒っぽい木綿着物に白木綿の古
兵児帯
(
へこおび
)
を
締
(
しめ
)
て、
頭髪
(
あたま
)
を
蓬々
(
ぼうぼう
)
とさしておりますから、多少
老
(
ふ
)
けて見えるかも知れませぬが、よく御覧になりましたならば
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
怪しく
窶
(
やつ
)
れた人相は彼の年齢を
老
(
ふ
)
けさせているが、おそらく四十を多く越えていないのであろう。
小坂部姫
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ちょいと見たところは、もう
五六歳
(
いつつむッつ
)
も
老
(
ふ
)
けていたら、花魁の古手の
新造落
(
しんぞお
)
ちという風俗である。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
派手
(
はで
)
なるは
曙
(
あけぼの
)
の
振袖
(
ふりそで
)
緋無垢
(
ひむく
)
を
重
(
かさ
)
ねて、
老
(
ふ
)
け
形
(
かた
)
なるは
花
(
はな
)
の
木
(
こ
)
の
間
(
ま
)
の
松
(
まつ
)
の
色
(
いろ
)
、いつ
見
(
み
)
ても
飽
(
あ
)
かぬは
黒出
(
くろで
)
たちに
鼈甲
(
べつかう
)
のさし
物
(
もの
)
、
今樣
(
いまやう
)
ならば
襟
(
ゑり
)
の
間
(
あひだ
)
に
金
(
きん
)
ぐさりのちらつくべきなりし
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
それは別に好男子でもないかわりに
醜男
(
ぶおとこ
)
でもなく、
肥
(
ふと
)
りすぎてもいなければ
痩
(
や
)
せすぎてもいず、また年配も、
老
(
ふ
)
けているとはいえないが、さりとてあまり若い方でもなかった。
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
ロミオ
予
(
わし
)
が
教
(
をし
)
へう。したが、
其
(
その
)
若樣
(
わかさま
)
は
彌〻
(
いよ/\
)
逢
(
あ
)
はッしゃる
時分
(
じぶん
)
には、
尋
(
たづ
)
ねてござる
今
(
いま
)
よりは
老
(
ふ
)
けてゐませうぞ。はて、
最
(
いっ
)
ち
年少
(
としわか
)
のロミオは
予
(
わし
)
ぢゃ。これより
粗
(
まづ
)
いのは
今
(
いま
)
はない。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
“老”の意味
《名詞》
(ロウ) 年をとること。また、年寄り。
(ロウ) 律令制で、61歳から65歳までの者の呼称。老丁。
《代名詞》
(ロウ) (古)老人が自分のことを卑下していう語。
(出典:Wiktionary)
老
常用漢字
小4
部首:⽼
6画
“老”を含む語句
老爺
老婆
老女
老母
老人
老媼
長老
老父
老夫
老翁
老嬢
老嫗
年老
老耄
老僕
老妻
老婢
老婦
老年
老酒
...