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黒出
処へ参ったのは業平文治で、
姿は
黒出の
黄八丈にお
納戸献上の帯をしめ
蝋色鞘の
脇差をさし、
晒の手拭を持って、ガラリッと障子を開けますと
派手なるは
曙の
振袖緋無垢を
重ねて、
老け
形なるは
花の
木の
間の
松の
色、いつ
見ても
飽かぬは
黒出たちに
鼈甲のさし
物、
今樣ならば
襟の
間に
金ぐさりのちらつくべきなりし
そこが年の
往かんから
直ぐに立上りましたが、
黒出の黄八丈の小袖にお
納戸献上の帯の解け掛りましたのを前へ
挟みながら、十三間
平骨の扇を持って善之進は水司のいる部屋へ通ります。