“黒子”のいろいろな読み方と例文
読み方(ふりがな)割合
ほくろ92.4%
ぼくろ5.7%
くろこ1.9%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
昨日きのう、お前、占を見てもらいに行ったんだってね。『街巷新聞』に出た黒子ほくろの一件は、誰がいたずらをしたのかあてがついたか。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
と叫びながら影法師三吉は兎のように隅へ飛んで行って、めりめりと死骸の袖を破った。杵屋助三郎の腕は女のように白くて黒子ほくろ一つなかった。
むしろ君江の容姿をほめたたえた当りさわりのない記事であるが、その中に君江さんの内腿うちももには子供の時から黒子ほくろが一つあった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
女がとくによろこぶのは背中の愛撫と、右の乳首の下の小さな乾葡萄のような黒子ほくろをつよく噛んでやることで、女は狂ったように呻き、唸った。
愛のごとく (新字新仮名) / 山川方夫(著)
薄青いペンキ塗の洋食店の二階も、そこに席を占めたまゆの間に黒子ほくろのある紳士も、色の白い女も、ことごとくこの空気に包まれていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
能の仮面の泣き老女、そっくり老婆の顔であった。左の下眼瞼したまぶたに小指ほどの、大きな泣き黒子ぼくろが附いているので、一層その顔は悲しそうに見えた。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかしその鳰の唇寄せにも、なお歯がみで耐えていられたのは、これほどな酔いも、まだ、佐々木道誉の笑い黒子ぼくろを忘れるまでには至っていなかったせいである。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
やがて、この弱々しい月光の下で、二つの小さな頭の影が、一つになって仕舞うと、彼は、葉子の頬についている、小さい愛嬌黒子ぼくろが、自分の頬をも、へこますのを感じた。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「おお、入れ黒子ぼくろのしなびたの、この節あどんな寸法、いや、寸伯すんぱく寸伯すばくか、ははは。」
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
否々、時により、案外な好意をしめし、あのあいそ黒子ぼくろを、十年の知己かの如く、にんまり見せる。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頭から足の先まで黒装束の黒子くろこが、長い竿の先につけた火の玉を、忠信の動くにつれて、移動させていた。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
黒子くろこを着た助手などはほとんどただぼやけた陰影ぐらいにしか見えないのである。
生ける人形 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
鬼火を捨てた黒子くろこは、新之助が可愛がっていた正直者である。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
一度はこれも十七の歳に重症の腸チブスにかかつて、赤坂の今は順天堂分院になつてゐる共愛病院と云ふのにはひつて、この時も九死に一生を得たのであつたが、同じやうな高熱來の最中に、私の寢てゐる蒲團の上に、歌舞伎芝居に出て來る黒子くろこと云ふ風體の人間が、それこそ誇張なしに百人も二百人もひしひしのしかかつて來たのだ。
自分の変態心理的経験 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)