)” の例文
旧字:
これも、有を転じて無となすべからざる大原則にもとづくものにして、ただ年をへ、時をる間に、その状態を変ずるまでであります。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
一、句数五千一万の多きに至らずとも、才能ある人は数年の星霜をる間には自然と発達して、何時いつの間にか第二期にりをる事多し。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
たとえ敬虔けいけんの意と誠実の態度とにおいてはあえて彼をしのぐことをという能わざらんも人の耳をること多からず人の口と筆とを
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「これは万歳と申しまして、鶴は千年の寿よわいを延べ、亀は万年まんねんるとかや、それに則った万歳楽まんざいらく、ご覧なされい、ご覧なされい」
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼らが凡人よりも早く事物の要点を見る明晰めいせきの頭脳を有することは疑いなきも、また凡人の窺知きちし得ざる苦労をるのである。光圀卿みつくにきょう
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
袈裟や法衣をつけている者の正体はたしかに年る狐に相違なかった。死体の傍には数珠じゅずも落ちていた。小さい折本の観音経も落ちていた。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
松の二葉よ千年ちとせるまで〽筆でかくとも絵にうつすとも更らにつきせじ松しまの波はうつらふ月の影しまの数シン知れぬ……。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
少しく安堵あんどの思ひをなし、忍び忍びに里方へ出でて、それとなく様子をさぐれば、そのきず意外おもいのほか重くして、日をれどもえず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
神の如き性をたもつこと多ければ、戦ひは人の如き性を倒すまでは休まじ、休むも一時にして、程れば更に戦はざる能はず。
心機妙変を論ず (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
深山しんざん孤家ひとつや白痴ばかとぎをして言葉ことばつうぜず、るにしたがふてものをいふことさへわすれるやうながするといふはなんたること
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それが時間をると、相当の意義をもたらして来ることもあるのだから、どうも仕方がない、御意のままに任せるよりほかは——
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何処どこから取付とりついいか実にけが分らない。しかし年月をれば何か英書を読むと云う小口こぐちが立つに違いないが、今の処では何とも仕方がない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
しかしこれは「芭蕉自身の明日」を指した言葉であらう。と云ふのはつまり五六年もれば、芭蕉自身の俳諧は一変化すると云ふ意味であらう。
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
日をるにしたがって、その気持はますます深まり、今ではもう切っても切れない親しさにむすびついてしまいました。
利休の指点したものは、それが塊然かいぜんたる一陶器であっても一度その指点をるや金玉ただならざる物となったのである。
骨董 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
だが日をるにしたがって新校長の実践躬行じっせんきゅうこう的な人格は全校を圧し、町を圧しいまではだれひとり尊敬せぬものはない。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
兵法は叡智えいちであり文化である。民度の高さもそれで分る。七日十日と日をるに従って、彼らの単純な思い上がりは
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ですが、段々日をるに従って、彼の頭にいろいろな疑いが起りました。やたらむしょうに突いたが、肉体を突刺したような手応えは一度もなかった。
深夜の客 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
かくて年月をるうちに鉄の如くなりしわが腕の筋も、連日連夜の遊楽に疲れけむ。やう/\に弱り行く心地しつ。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
かくて幾月かをる内に自分は、仏像や菩薩像の作家がこの最も清浄な人体の美しさを捕えたのに相違ないことを
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
それが病気の加減で頭がだんだん鈍くなるのか何だか、日をるに従って、無精な排泄はいせつを意としないようになった。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
(3) 国債ヲおこシ及予算ニ定メタルモノヲ除クほか国庫ノ負担トナルヘキ契約ヲスハ帝国議会ノ協賛ヲヘシ
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
勝気な彼女の反撥心はんぱつしんは、この忘れかねる、人間のさいなみにあって、弥更いやさらに、世をるにはまけだましい確固しっかりと持たなければならないと思いしめたであろうと——
松井須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
とどまりて三八いたはり給へと、まことある詞を便りにて日比ひごろるままに、三九物みな平生つねちかくぞなりにける。
依て叺を脊負せおいて袋を前にかけて歩行するも前の如く困苦にて、僅に三十間或は四十間ばかりにて休息するが故に、六七町なるの帰路は一時間余をるに至れり。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
越え 千年ちとせる 宮居が址に なづさへば ひのことごと よろづ代に らすごと 仄暗ほのくらの 高どのぬちに くすしくも 光りいませる 救世くせのみほとけ
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「死刑ノ宣告ヲ受タル婦女懐胎ナルトキハその執行ヲとどメ分娩後一百日ヲルニアラザレバ刑ヲ行ズ」
遺伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
あれほど大きな悲しみにったあとでも年月がればあきらめというものが出てくるものなのであろう、悲しみにも時が限りを示すものであると私はその時見ました。
源氏物語:51 宿り木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
彼は四度よたびの文をも例の灰と棄てて顧ざりしに、日をると思ふ程も無く、五度いつたびの文は来にけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
そして、日がるにつれて、段々その感じが深くなって行った。でなければ、宿も違い、身分も違う二人が、僅か数日の間にこんなに親しくなる筈がないと井原氏は思った。
二癈人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これ従来の貧民救恤きゅうじゅつと全くその精神を異にするところにして、かかる思想が法律の是認をるに至りたる事は、けだし近代における権利思想の一転期を画すべきものである。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
路傍の一里塚いちりづかも後になりて、年りし松が枝も此方を見送り、柳の糸は旅衣をき、梅の花は裳に散り、うぐいすの声も後より慕えり、若菜摘める少女ら、紙鳶たこあげて遊べる童子ら
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
わが身の手にて取出す力なくなり候事なれば、誰を怨むにも及ばざる事に候間、月日をるに従ひ、これぞまさしく因果いんが応報のいましめなるべくやと、自然に観念致すように相なり申候。
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ハクストハウセン説に、トランスカウカシア辺で伝えたは、蛇中にも貴族ありて人に見られずに二十五歳れば竜となり、諸多の動物や人を紿あざむき殺すためその頭を何にでも変じ得。
百年の相識に別れた如くなにとなく心さびしかッたが……それも日数ひかずままに忘れてしまッたのに、今また思い懸けなく一ッ家に起臥おきふしして、折節は狎々なれなれしく物など言いかけられて見れば
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
菟原うはら住吉祠に詣り海辺の田圃をる。村中醸家おほし。木筧もくけん曲直きよくちよくして水を引こと遠きよりす。一望の中武庫摩耶の諸山近し。生田祠にいたる。此日祠堂落成遷神せんしんす。社前の小流生田川と名く。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
こういう傲慢ごうまんな、我がままな根性は、前から彼女にあったのであるか、あるいは私が甘やかし過ぎた結果なのか、いずれにしても日をるに従ってそれがだんだんこうじて来つつあることは明かでした。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
一事件をる度に二人が胸中に湧いた恋の卵はかさを増してくる。機に触れて交換する双方の意志は、ただちに互いの胸中にある例の卵に至大な養分を給与する。今日の日暮はたしかにその機であった。
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
たとえば「僧やや寒く寺に帰るか」「猿引さるひきの猿と世をる秋の月」
映画芸術 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
なお「ぬばたまの夜渡る月を幾夜みつついもは我待つらむぞ」(巻十八・四〇七二)、「居りあかし今宵は飲まむほととぎす明けむあしたは鳴きわたらむぞ」(同・四〇六八)というのがあり
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
『ドクター・キドは失踪後五日をるも、何等消息発見されず!』
キド効果 (新字新仮名) / 海野十三(著)
世世とも法に仕へん身にしあれば有漏路うろぢの塵に心染めざれ
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
だん/\日をるに従ひ格別苦にもならぬやうに相成候あひなりそろ
新らしき祖先 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
さるひきの猿と世をる秋の月 蕉
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
神柄かむがらや、幾万いくよろづとしりましき
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おのれも知らず世をれば
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「こはいぶかし、路にや迷ふたる」ト、彼方あなたすかし見れば、年りたるえのき小暗おぐらく茂りたる陰に、これかと見ゆる洞ありけり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
その内には、とまた四五日、半月、一月をるうちに、早いものよ、足掛け三年。——君にうまで、それさえ忘れた。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
和歌は『万葉』以来、『新古今』以来、一時代をるごとに一段の堕落を為したる者、真淵まぶち出でわずかにこれを挽回したり。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
遷都せんと以後、日をるに従って、長安の都は、おいおいに王城街の繁華を呈し、秩序も大いにあらたまって来た。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)