)” の例文
旧字:
「まあ、出しなさい。なるほど嵩張かさばる割に軽いもんだね。見っともないと云うのは小野さんの事だ」と宗近君は屑籠をりながら歩き出す。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さまさせまゐらせんといへるを、赤穴又かしらりてとどめつも、さらに物をもいはでぞある。左門云ふ。既に九〇夜をぎてし給ふに、心もみ足もつかれ給ふべし。
と、小腰をかがめて差覗さしのぞき、頭をって呼掛けたのは、顱巻はちまきもまだらないままの植木屋の甚平爺さん。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
下の方に坐っていた者が手をっていった。
阿英 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
袖垣そでがき辛夷こぶしを添わせて、松苔まつごけ葉蘭はらんの影に畳む上に、切り立ての手拭てぬぐいが春風にらつくような所に住んで見たい。——藤尾はあの家を貰うとか聞いた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
汝も又さるたぐひにやあらん。よく心を静むべしとあれども、左門かしらりて、まことに一一一夢のまさなきにあらず。兄長このかみ一一二ここもとにこそありつれと、又声をげて哭倒なきたふる。
が、外套が外へ出た、あとを、しめざまにほっそりと見送る処を、外套が振返って、頬ずりをしようとすると、あれ人が見る、島田をって、おくれ毛とともに背いたけれども、弱々となって顔を寄せた。
みさごの鮨 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
眼鏡のふちから、斜めに宗近君を見ると、相変らず、紙屑籠かみくずかごって、揚々ようようと正面を向いて歩いている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その黒い幹をちょろちょろと栗鼠りすが長く太った尾をって、のぼった。と思うと古く厚みのついたこけの上をまた一匹、ひとみからけ抜けたものがある。苔はふくれたまま動かない。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)