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ふ
ふりがな文庫
“
掉
(
ふ
)” の例文
かつ柄も長くない、
頬先
(
ほおさき
)
に内側にむけた刃も細い。が、かえって無比の精鋭を思わせて、
颯
(
さっ
)
と
掉
(
ふ
)
ると、従って冷い風が吹きそうである。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
新婦は首を
掉
(
ふ
)
りて、否々、
門
(
かど
)
の口をばえひらき
侍
(
はべ
)
らず、おん身のこゝに來給はんは
宜
(
よろ
)
しからずと云ひ、起ちてかなたの窓を開きつ。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
翌
(
あく
)
る
朝
(
あさ
)
私が兄さんに向って、「
昨夜
(
ゆうべ
)
は寝られたか」と聞きますと、兄さんは首を
掉
(
ふ
)
って、「寝られるどころか。君は実に
羨
(
うらや
)
ましい」
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「いえ。」と、軽く
頭振
(
かぶり
)
を
掉
(
ふ
)
って、口を圧されたような疲れた声を出して、「極りが悪いから……」と潰したように言い足した。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
という調子で
滔々
(
とうとう
)
と述べ立てると、前国会議員の某は、
頻
(
しき
)
りに頭を左右に
掉
(
ふ
)
って不同意の態度を示した。すると直ちにその頭を指さして
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
▼ もっと見る
平岡氏は満足さうに首を
掉
(
ふ
)
つて喜んだ。で、会ふ人毎に東海道行きを勧めてみるが、誰一人連れ立つて
往
(
ゆ
)
かうといふ者がゐない。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
けれども、両親の意に逆らうのもどうかと思う心から、ただ
頸
(
くび
)
をたてに
掉
(
ふ
)
って、無言のうちに「行く」という返事をしてしまったのだった。
初雪
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
己
(
おれ
)
は首を
掉
(
ふ
)
つて受けなかつた。牛飼君も大いに心配してナ、それから警保局長ならと
略
(
ほ
)
ぼ相談が纏まつた処が、内閣は俄然瓦解しおつた……
貧書生
(新字旧仮名)
/
内田魯庵
(著)
窓の外には一
疋
(
ぴき
)
の古狸が
蹲
(
うずく
)
まっていたが、狸は庄造の姿を見ても別に逃げようともしないのみか、
劫
(
かえ
)
ってうれしそうに尻尾を
掉
(
ふ
)
るのであった。
狸と俳人
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何心なく
其面
(
そのかお
)
を
瞻上
(
みあ
)
げて尾を
掉
(
ふ
)
る所を、思いも寄らぬ太い棍棒がブンと風を
截
(
き
)
って来て……と思うと、又胸が一杯になる。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
自分は此結論を見て頭を
掉
(
ふ
)
つたが、
錯迷打破
(
さくめいだは
)
には強く引き附けられた。
Disillusion
(
ヂスイリユウジヨン
)
にはひどく同情した。
妄想
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
三合入りの大杯たてつけに五つも重ねて、赤鬼のごとくなりつつ、肩を
掉
(
ふ
)
って県会に臨めば、議員に
顔色
(
がんしょく
)
ある者少なかりしとか。さもありつらん。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
上布
(
じょうふ
)
の
帷子
(
かたびら
)
に
兵子帯
(
へこおび
)
という若い男が入って来て、「例のは九円には売れまいか」というと、店員は「どうしてどうして」と
頭
(
かしら
)
を
掉
(
ふ
)
って、指を三本出す。
一日一筆
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私はあとでそつと禿を捉へ、
宥
(
なだ
)
め
賺
(
すか
)
し、誰にも言はないから打明けろと迫つて見たが、禿は
執拗
(
しつえう
)
にかぶりを
掉
(
ふ
)
つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
何かと云うと頭を
掉
(
ふ
)
るのが癖だった。毎度先生に招かるゝ彼等学生は、
今宵
(
こよい
)
も蜜柑やケークの馳走になった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
珙一見して
即
(
すなわ
)
ち
趨
(
はし
)
って燕王の前に拝して
曰
(
いわ
)
く、殿下何ぞ身を軽んじて
此
(
ここ
)
に至りたまえると。燕王等笑って曰く、
吾輩
(
わがはい
)
皆護衛の士なりと。珙
頭
(
こうべ
)
を
掉
(
ふ
)
って
是
(
ぜ
)
とせず。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「まあいいやな」と男は
潔
(
いさぎよ
)
く首を
掉
(
ふ
)
って、「お互いに
小児
(
がき
)
の時から知合いで、気心だって知って知って知り抜いていながら、それが妙な羽目でこうなるというのは、 ...
深川女房
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
篠田は首打ち
掉
(
ふ
)
りつ「
如何
(
いか
)
なる場合に身を棄つべきかは、我等が浅慮の判別し得る所ではありませぬ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
往つたり返つたりしたのに
草臥
(
くたび
)
れたらしく、主人は老人に暇を取らせた。家政の報告などは聞きたくないと云ふことを知らせるには、只目を
瞑
(
ねむ
)
つて頭を
掉
(
ふ
)
つたのである。
フロルスと賊と
(新字旧仮名)
/
ミカイル・アレクセーヴィチ・クスミン
(著)
『淵鑑類函』四三六には、宋の太宗の愛犬、帝朝に坐するごとに必ずまず尾を
掉
(
ふ
)
って吠えて人を静めた。帝病むに及びこの犬食せず、崩ずるに及び号呼
涕泗
(
ていし
)
して
疲瘠
(
ひせき
)
す。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
といふと
日出雄少年
(
ひでをせうねん
)
は
忽
(
たちま
)
ち
機嫌
(
きげん
)
麗
(
うる
)
はしく、
今
(
いま
)
私
(
わたくし
)
の
話
(
はな
)
した
眞暗
(
まつくら
)
な
道
(
みち
)
や、
危
(
あぶな
)
い
橋
(
はし
)
の
事
(
こと
)
について
聞
(
き
)
きた
相
(
さう
)
に
顏
(
かほ
)
を
上
(
あ
)
げたが、
此時
(
このとき
)
、
丁度
(
ちやうど
)
猛犬稻妻
(
まうけんいなづま
)
が
耳
(
みゝ
)
を
垂
(
た
)
れ
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
つて、
其
(
その
)
傍
(
そば
)
へ
來
(
き
)
たので
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「いゝえ。さうではありません」と、見習士官は悲し気に、ゆつくり首を
掉
(
ふ
)
つた。
死
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
法衣
(
はふえ
)
を着て、僧帽を
被
(
かぶ
)
つた威厳のある立派な姿である。セルギウスは頭を
掉
(
ふ
)
つた。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
忽然兄きは頭を
掉
(
ふ
)
つて、死人のやうな顔色になりました。そして右の手の
示指
(
ひとさしゆび
)
を
竪
(
た
)
てゝわたくしに見せるのです。それが『気を付けろ』といふのだらうとわたくしには思はれたのでございます。
うづしほ
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
かれは首を
掉
(
ふ
)
つて、古鳥銃を肩に掛け、心配を胸に帰途に掛りました。
新浦島
(新字旧仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
由無
(
よしな
)
き
慰藉
(
なぐさめ
)
は聞かじとやうに宮は
俯
(
ふ
)
しながら
頭
(
かしら
)
を
掉
(
ふ
)
りて更に泣入りぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
尾を
掉
(
ふ
)
ったりします。みんな
狗
(
いぬ
)
の癖です。1165
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
傍へやって来て、嬉しそうに尾を
掉
(
ふ
)
っている。
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「いいえ。」正雄は
頭
(
かぶり
)
を
掉
(
ふ
)
った。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
細き尾を
掉
(
ふ
)
りて
一握の砂
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
お為ごかしに理窟を言って、動きの取れないように説得すりゃ、十六や七の何にも知らない、
無垢
(
むく
)
な
女
(
むすめ
)
が、
頭
(
かぶり
)
一ツ
掉
(
ふ
)
り得るものか。
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかし津田は首を
掉
(
ふ
)
った。彼は叔父も叔母もお秀の味方である事をよく承知していた。次に津田の方から岡本はどうだろうと云い出した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
媼さんは
頭
(
かぶり
)
を
掉
(
ふ
)
つた。智慧の持合せの少かつたのを、六十年来使ひ減らして来たので、頭の中では
空壜
(
あきびん
)
を
揮
(
ふ
)
るやうな音がした。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
その翼を張りておそろしき荒海の上に飛び出でたるはかの猶太教徒の惠なりといひかけて、忽ち頭を
掉
(
ふ
)
り動かし、あな
無益
(
むやく
)
なる詞にもあるかな
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
首を
掉
(
ふ
)
って見るが、
其様
(
そん
)
な事では中々取れない。果は前足で口の
端
(
はた
)
を
引掻
(
ひッか
)
くような真似をして、
大藻掻
(
おおもが
)
きに
藻掻
(
もが
)
く。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
李中行 (頭を
掉
(
ふ
)
る。)いいえ、確に出て来て……。(卓の下を指さす。)この卓の下にうずくまっているのを見付けたので、私は直ぐに
捉
(
つか
)
まえて……。
青蛙神
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
私は「うむ!」と、唯一口、
首肯
(
うなず
)
くのやら、
頭振
(
かぶり
)
を
掉
(
ふ
)
るのやら自分でも分らないように言った。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
博士は首を
掉
(
ふ
)
つて、Genius Publikus に最後の判決は
覚束
(
おぼつか
)
ないなと云つた。脚本は Schillerpreis に
中
(
あた
)
つたのを聞いて注文したのであつた。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
「困ったよ、」U氏は首を
掉
(
ふ
)
って
一
(
ひ
)
と
言
(
こと
)
いったぎり顔を
顰
(
しか
)
めて固く
唇
(
くちびる
)
を結んでしまった。
三十年前の島田沼南
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
万作は一々頷き勘太郎を返して、直ぐお光を呼んで
斯々
(
こうこう
)
と話して見ると、お光は情なさそうにじっと
爺
(
おやじ
)
の顔を見つめて居たが、頭を
掉
(
ふ
)
って外へ出てしまった。万作は腹を立てる。
漁師の娘
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
此時も明治四十一年の春初めて来た時着て居た彼
無地
(
むじ
)
の木綿羽織だった。「乗れませんでしたか」「満員だった」「今車を呼んで来ます」「何、構わん、構わん」と翁が手を
掉
(
ふ
)
る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「
左様
(
さう
)
ぢやないです」と剛一は
頭
(
あたま
)
を
掉
(
ふ
)
りつ「
仮令
(
たとひ
)
世界を挙げても、
処女
(
をとめ
)
の貞操と交換することの出来ない真理が解らぬかツて、憤慨して居られました、何でも
彼
(
あ
)
の翌日と云ふものは、 ...
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
『これ、
稻妻
(
いなづま
)
、
汝
(
おまへ
)
は
世
(
よ
)
に
勝
(
すぐ
)
れたる
犬
(
いぬ
)
だから、
總
(
すべ
)
ての
事情
(
じじやう
)
がよく
分
(
わか
)
つて
居
(
を
)
るだらう、よく
忍耐
(
しんぼう
)
して、
大佐
(
たいさ
)
の
家
(
いへ
)
に
達
(
たつ
)
して
呉
(
く
)
れ。』と、いふと、
稻妻
(
いなづま
)
は
恰
(
あだか
)
も
私
(
わたくし
)
の
言
(
げん
)
を
解
(
げ
)
し
得
(
え
)
た
如
(
ごと
)
く、
凛然
(
りんぜん
)
として
尾
(
を
)
を
掉
(
ふ
)
つた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
患者は体をあちこちもぢもぢさせて、
劇
(
はげ
)
しく首を
掉
(
ふ
)
つた。
笑
(新字旧仮名)
/
ミハイル・ペトローヴィチ・アルチバシェッフ
(著)
を
掉
(
ふ
)
れば
響
(
ひゞき
)
宛然
(
さながら
)
金鈴
(
きんれい
)
のごとし、
之
(
これ
)
を
合圖
(
あひづ
)
に
鬼桃太郎
(旧字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
僧は
頭
(
かしら
)
を
掉
(
ふ
)
って応じなかった。
竈の中の顔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
すると、重々しく首を
掉
(
ふ
)
って
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
掉
(
ふ
)
ってもそうなんだよ。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
糸巻を
懐中
(
ふところ
)
に差込んだまま、この唄にはむずむずと襟を
摺
(
す
)
って、
頭
(
かぶり
)
を
掉
(
ふ
)
って、そして
面
(
つら
)
打って舞う
己
(
おの
)
が凧に、合点合点をして見せていた。
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丁度夏の
午
(
ひる
)
前の事で、女客は顔の汗を拭き/\感心したやうに
幾度
(
いくたび
)
か首を
掉
(
ふ
)
つて
聴
(
き
)
き
惚
(
と
)
れてゐたが、暫くすると発明家の顔を振り向いて訊いた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
掉
漢検1級
部首:⼿
11画
“掉”を含む語句
掉尾
打掉
掉立
引掉
掉上
掉下
掉傾
掉冠
掉抜