)” の例文
かつ柄も長くない、頬先ほおさきに内側にむけた刃も細い。が、かえって無比の精鋭を思わせて、さっると、従って冷い風が吹きそうである。
七宝の柱 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
新婦は首をりて、否々、かどの口をばえひらきはべらず、おん身のこゝに來給はんはよろしからずと云ひ、起ちてかなたの窓を開きつ。
あくあさ私が兄さんに向って、「昨夜ゆうべは寝られたか」と聞きますと、兄さんは首をって、「寝られるどころか。君は実にうらやましい」
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「いえ。」と、軽く頭振かぶりって、口を圧されたような疲れた声を出して、「極りが悪いから……」と潰したように言い足した。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
という調子で滔々とうとうと述べ立てると、前国会議員の某は、しきりに頭を左右にって不同意の態度を示した。すると直ちにその頭を指さして
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
平岡氏は満足さうに首をつて喜んだ。で、会ふ人毎に東海道行きを勧めてみるが、誰一人連れ立つてかうといふ者がゐない。
けれども、両親の意に逆らうのもどうかと思う心から、ただくびをたてにって、無言のうちに「行く」という返事をしてしまったのだった。
初雪 (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
おれは首をつて受けなかつた。牛飼君も大いに心配してナ、それから警保局長ならとぼ相談が纏まつた処が、内閣は俄然瓦解しおつた……
貧書生 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
窓の外には一ぴきの古狸がうずくまっていたが、狸は庄造の姿を見ても別に逃げようともしないのみか、かえってうれしそうに尻尾をるのであった。
狸と俳人 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
何心なく其面そのかお瞻上みあげて尾をる所を、思いも寄らぬ太い棍棒がブンと風をって来て……と思うと、又胸が一杯になる。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
自分は此結論を見て頭をつたが、錯迷打破さくめいだはには強く引き附けられた。Disillusionヂスイリユウジヨン にはひどく同情した。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
三合入りの大杯たてつけに五つも重ねて、赤鬼のごとくなりつつ、肩をって県会に臨めば、議員に顔色がんしょくある者少なかりしとか。さもありつらん。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
上布じょうふ帷子かたびら兵子帯へこおびという若い男が入って来て、「例のは九円には売れまいか」というと、店員は「どうしてどうして」とかしらって、指を三本出す。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私はあとでそつと禿を捉へ、なだすかし、誰にも言はないから打明けろと迫つて見たが、禿は執拗しつえうにかぶりをつた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
何かと云うと頭をるのが癖だった。毎度先生に招かるゝ彼等学生は、今宵こよいも蜜柑やケークの馳走になった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
珙一見してすなわはしって燕王の前に拝していわく、殿下何ぞ身を軽んじてここに至りたまえると。燕王等笑って曰く、吾輩わがはい皆護衛の士なりと。珙こうべってとせず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「まあいいやな」と男はいさぎよく首をって、「お互いに小児がきの時から知合いで、気心だって知って知って知り抜いていながら、それが妙な羽目でこうなるというのは、 ...
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
篠田は首打ちりつ「如何いかなる場合に身を棄つべきかは、我等が浅慮の判別し得る所ではありませぬ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
往つたり返つたりしたのに草臥くたびれたらしく、主人は老人に暇を取らせた。家政の報告などは聞きたくないと云ふことを知らせるには、只目をねむつて頭をつたのである。
『淵鑑類函』四三六には、宋の太宗の愛犬、帝朝に坐するごとに必ずまず尾をって吠えて人を静めた。帝病むに及びこの犬食せず、崩ずるに及び号呼涕泗ていしして疲瘠ひせきす。
といふと日出雄少年ひでをせうねんたちま機嫌きげんうるはしく、いまわたくしはなした眞暗まつくらみちや、あぶなはしことについてきたさうかほげたが、此時このとき丁度ちやうど猛犬稻妻まうけんいなづまみゝつて、そのそばたので
「いゝえ。さうではありません」と、見習士官は悲し気に、ゆつくり首をつた。
法衣はふえを着て、僧帽をかぶつた威厳のある立派な姿である。セルギウスは頭をつた。
忽然兄きは頭をつて、死人のやうな顔色になりました。そして右の手の示指ひとさしゆびてゝわたくしに見せるのです。それが『気を付けろ』といふのだらうとわたくしには思はれたのでございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
かれは首をつて、古鳥銃を肩に掛け、心配を胸に帰途に掛りました。
新浦島 (新字旧仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
由無よしな慰藉なぐさめは聞かじとやうに宮はしながらかしらりて更に泣入りぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
尾をったりします。みんないぬの癖です。1165
傍へやって来て、嬉しそうに尾をっている。
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「いいえ。」正雄はかぶりった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
細き尾をりて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
お為ごかしに理窟を言って、動きの取れないように説得すりゃ、十六や七の何にも知らない、無垢むくむすめが、かぶり一ツり得るものか。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかし津田は首をった。彼は叔父も叔母もお秀の味方である事をよく承知していた。次に津田の方から岡本はどうだろうと云い出した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
媼さんはかぶりつた。智慧の持合せの少かつたのを、六十年来使ひ減らして来たので、頭の中では空壜あきびんるやうな音がした。
その翼を張りておそろしき荒海の上に飛び出でたるはかの猶太教徒の惠なりといひかけて、忽ち頭をり動かし、あな無益むやくなる詞にもあるかな
首をって見るが、其様そんな事では中々取れない。果は前足で口のはた引掻ひッかくような真似をして、大藻掻おおもがきに藻掻もがく。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
李中行 (頭をる。)いいえ、確に出て来て……。(卓の下を指さす。)この卓の下にうずくまっているのを見付けたので、私は直ぐにつかまえて……。
青蛙神 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は「うむ!」と、唯一口、首肯うなずくのやら、頭振かぶりるのやら自分でも分らないように言った。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
博士は首をつて、Genius Publikus に最後の判決は覚束おぼつかないなと云つた。脚本は Schillerpreis にあたつたのを聞いて注文したのであつた。
魔睡 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「困ったよ、」U氏は首をってこといったぎり顔をしかめて固くくちびるを結んでしまった。
三十年前の島田沼南 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
万作は一々頷き勘太郎を返して、直ぐお光を呼んで斯々こうこうと話して見ると、お光は情なさそうにじっとおやじの顔を見つめて居たが、頭をって外へ出てしまった。万作は腹を立てる。
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
此時も明治四十一年の春初めて来た時着て居た彼無地むじの木綿羽織だった。「乗れませんでしたか」「満員だった」「今車を呼んで来ます」「何、構わん、構わん」と翁が手をる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
左様さうぢやないです」と剛一はあたまりつ「仮令たとひ世界を挙げても、処女をとめの貞操と交換することの出来ない真理が解らぬかツて、憤慨して居られました、何でもの翌日と云ふものは、 ...
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
『これ、稻妻いなづまおまへすぐれたるいぬだから、すべての事情じじやうがよくわかつてるだらう、よく忍耐しんぼうして、大佐たいさいへたつしてれ。』と、いふと、稻妻いなづまあだかわたくしげんごとく、凛然りんぜんとしてつた。
患者は体をあちこちもぢもぢさせて、はげしく首をつた。
ればひゞき宛然さながら金鈴きんれいのごとし、これ合圖あひづ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
僧はかしらって応じなかった。
竈の中の顔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すると、重々しく首をって
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
ってもそうなんだよ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
糸巻を懐中ふところに差込んだまま、この唄にはむずむずと襟をって、かぶりって、そしてつら打って舞うおのが凧に、合点合点をして見せていた。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
丁度夏のひる前の事で、女客は顔の汗を拭き/\感心したやうに幾度いくたびか首をつてれてゐたが、暫くすると発明家の顔を振り向いて訊いた。