)” の例文
貞之助は附合いの関係でいろいろの機会に花柳界へ足をみ入れることがあるので、よくそう云う方面から奥畑のうわさを聞いて来る。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しげるがまゝの秋草ですが、それでも氣をつけて見ると、人間の通つたらしい跡が、ほんの少しばかり草がみつけられてをります。
このふっくりした白いものは、南無三宝なむさんぼう仰向あおむけに倒れた女の胸、膨らむ乳房の真中まんなかあたり、鳩尾みぞおちを、土足でんでいようでないか。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
白斑ぶちの大きな木馬のくらの上に小さい主人が、両足をん張ってまたがると、白い房々したたてがみを動かして馬は前後に揺れるのだった。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
わたくしうちなんざアね此方こっちむと彼方あっちが上り、彼方あっちを蹈むと此方こっちが上りね、どうして海の方が余程よっぽど平らさ、あゝい心持ちだ、どうもい景色だ
かうして最初さいしよ大地震だいぢしんこらへる家屋かおくが、其後そのご三分さんぶんいち以下いか地震力ぢしんりよくによつてられることはないはずである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
そして足に力を込め、やけくそに床をみ鳴らした。その野蛮な荒々しい響からして、急に室内の空気が振動した。
ウォーソン夫人の黒猫 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
「君、すすきの根へ足をかけて持ちこたえていたまえ。——あんまり前の方でると、がけくずれて、足が滑べるよ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
開かずば蹴破けやぶるぞとおどゆえに、是非なく戸を明けたれば入りきたるはヤマハハなり。炉の横座よこざみはたかりて火にあたり、飯をたきて食わせよという。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「まあ!」と叫びし妻はたちま胸塞むねふたがりて、その後を言ふ能はざるなり。蒲田は手の舞ひ、膝のむところを知らず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
われらが自己の胸底に最醇の満足を意識するのはみずから正善の道をめりと天に対して語り得るときである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
殊に太祇、蕪村などは京の台木へ江戸の椄穂つぎほいだというのであるから、江戸を全くみ倒す訳にも行かず、先ず無勝負として置くが善かろうと思います。
俳句上の京と江戸 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
之れを以て今の作家に擬するは屋上屋を架するの愚を演ずるものにはあらざるか。今の作家をして中古派ローマンチツク、スクール覆轍ふくてつましめんと欲するものにあらざるか。
国民性と文学 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
海は今日もいで美しい色だつた。丘の菜園には、今日も余るほどの、陽光がそそいでゐた。良寛さんのんでゆく道の若草は、ゆくゆくかんばしくにほつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
新築しんちくいへんで、屋敷やしきのわるいたましひしづをんなが、きつけたたまを、いまらしてゐることよ。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
懐には偶然捕縄とりなはがあつた。それを出してほぐして、低い枝に足をめて、高い枝に投げ掛けた。そしてわなを作つて自分のくびに掛けて、低い枝から飛び降りた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
こんな奴等は盗人ぬすっとも同様、あさ寝も昼寝もめずらしくないので、手先は雨戸をこじ明けて踏み込むと、虎七は煎餅蒲団の上に大きい口をあいてんぞり返っていた。
廿九日の牡丹餅 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その悦ばしさとこの訝しさとに、浜の真砂路もみ迷はれて、彼はただちに村に入る、光景の何ぞ全く変りはてたることや、世の転変は一日にして見られたるなり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
昇降口しようこうぐちの高さは少くとも三尺位は有るべし。おそらくは木製もくせい梯子はしご或はだいもうけ有りしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
あたり一面に色ある落葉が散っている、がさがさ落葉をみちらして進む、拝殿の柱に張った七五三と思ったは、社殿二けんほど前に両側にある松に張ってあるのであった
八幡の森 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
どれだけその人道をむことだろうか——OH! そして小説のなかの彼らめいめいの用意と目的と感情、それらのすべてを、過去のものも来るべき作家のペンに宿る性格も
それ、ひめせた。おゝ、あのやうなかるあしでは、いつまでむとも、かた石道いしみちるまいわい。戀人こひびとは、なつかぜたはむあそぶあのらちもない絲遊かげろふのッかっても、ちぬであらう。
「五月雨や仏の花を捨てに出る」その花のせた色も香も、「秋雨や水底の草みわたる」散策子のあしうらの感覚も、「楠の根を静かにぬらす時雨」の沈静な風趣も、悉く好もしい。
雨の日 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
廻し二日三日と音信おとずれの絶えてない折々は河岸かしの内儀へお頼みでござりますと月始めに魚一ひきがそれとなく報酬の花鳥使かちょうしまいらせそろの韻をんできっときっとの呼出状今方貸小袖を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
あるひえらんでこれみ、ときにしてしかのちこといだし、くに(五六)こみちらず、(五七)公正こうせいあらざればいきどほりはつせず、しか禍災くわさいものげてかぞからざるなりはなはまどふ。
歸路かへり眞闇まつくらしげつたもりなかとほときぼくんなことおもひながらるいた、ぼくあしべらして此溪このたにちる、んでしまう、中西屋なかにしやではぼくかへらぬので大騷おほさわぎをはじめる
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
急に起き上つて両脚をみ伸ばして大きく欠伸あくびをしたと思ふと、のそのそと歩き出して、爺さんが蓋をとつたまま置きつぱなしにしておいた熬し入れの小壺に戯れかからうとしました。
小壺狩 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
根津の丘、姫子沢の谷、鳥が田圃側たんぼわきなぞに霜枯れた雑草をみ乍ら、十一月上旬の野辺に満ちた光を眺めて佇立たゝずんだ時は、今更のやうに胸を流れる活きた血潮の若々しさを感ずる。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
わしの病院へ入れる事は不承知かと毎々聞かれるのであるが、それもどう有らうかと母などはしきりにいやがるので我も二の足をんでゐる、無論病院へ行けば自宅と違つて窮屈ではあらうが
うつせみ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
露の上を素足でむような怪しい音がきこえて、四辺あたりが蒼白くかすんで来ました、私は思わずふり向いて見ますと、そこへもう、三人の鬼女に分れた悪蛇が、歩いて来るのでございます。
道成寺(一幕劇) (新字新仮名) / 郡虎彦(著)
天滿與力てんまよりきは、渡船とせんもどしてみたけれど、ほとんど片足かたあし餘地よちもないので、腹立はらだたし舌打したうちして、みぎはつてゐたが、やがてたかく、とらえるやうにこゑげると
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
昏倒こんとうした蘇武に対する胡毉こいの手当てというのがすこぶる変わっていた。地を掘ってあなをつくり熅火うんかを入れて、その上に傷者を寝かせその背中をんで血を出させたと漢書かんじょにはしるされている。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
私にはこの幼い心がただ一つの頼りなのです。励みなのです。私が独りで世の中へ出て行った時、十四歳ではじめてこのコペンハーゲンの土をんだ時と今と、私はちっとも変っていません。
聖アンデルセン (新字新仮名) / 小山清(著)
いずれをみ破るもかたければ、今はただいつまでもかく寡居かきょしていつまでも佐太郎に訪わるるこそせめて世にながらうる甲斐かいならめ、しかれどもすでに黄金に余れる彼、いつまで妻なくてあるべき
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
水かふ岸の葦蘆よしあしみ砕きてや、りたつを。
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
父が歩くにつれて、地上にくっきり映っている父の影が揺れて行ったが、滋幹はそれをまないようになり離れて附いて行った。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
見ると、やや立離れた——一段高く台をんで立った——糶売せりうりの親仁は、この小春日の真中まんなかに、しかも夕月を肩に掛けた銅像に似ていた。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といいながらきにかゝりますと、馬が多助の穿いている草鞋の切れ目をみ、多助の袖をくわえて遣るまいとするから
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あだか相撲すまふのとき、土俵どひよう中央ちゆうおうからずる/\とされた力士りきしが、つるぎみねこらへる場合ばあひのようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
何も見ないで、はるか遠くのことを思ひふけつてゐるやうに、じつとしてゐた。つゑのやうに細い肢の先は、ひづめが二つに割れて、みづみづしいはこべらの緑をんでゐた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
空に響く楽の音につれて彼等は躍りつゝ舞ひ上り飛び行くに我もおくれじと茨葎のきらひ無くみしだき躍り越え思はず野川に落ちしよと見て夢さむれば寝汗したゝかに襦袢じゅばん
小園の記 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
黒ん坊のことが杣仲間の口から世間にひろまると、婿の方では二の足をむようになった。
くろん坊 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一 まゐり来てこの橋を見申みもうせや、いかなもをざはみそめたやら、わだるがくかいざるもの
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
風「余り善でもない。さうしてあれを此方こつちへ取つて了へば、三百円はめるのかね」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今宵こよひ陋屋らうをくにて、明星みょうじゃうかゞやき、暗天やみぞらをさへもあかるらすを御覽ごらんあれ。
瀬田は頭がぼんやりして、からだぢゆうの脈がつゞみを打つやうに耳に響く。狭い田の畔道くろみちを踏んで行くに、足がどこを踏んでゐるか感じが無い。やゝもすれば苅株きりかぶの間の湿しめつた泥に足をみ込む。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
今交通の事を述へたる後に熟考じゆくかうするに、一部落と他部落との間には、人々の多く徃來わうらいする所、即ち多くの人にまれておのづから定まりたる道路の形を成せる所有りしならんとは推知せらるるなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
狭いいおりの中をんで廻った。脇目からは、遶道にょうどうする群れのように。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
同十八日——「月をんで散歩す、青煙地をい月光林に砕く」
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ひたひに蹈繪ふみゑの型をめよとぞ、あな淺ましや
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)