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拭
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ふ
ふりがな文庫
“
拭
(
ふ
)” の例文
日あたりのいいヴェランダに小鳥の
籠
(
かご
)
を
吊
(
つ
)
るすとかして、台所の用事や、
拭
(
ふ
)
き掃除をさせるために女中の一人も置いたらどうだろう。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「まだある、下手人の着物なら、血が
飛沫
(
しぶ
)
いているはずだ、あれだけひどく殴ったんだもの、——ところがあれは血を
拭
(
ふ
)
いたんだぜ」
銭形平次捕物控:085 瓢箪供養
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
何の気無しに唐紙の傍に立って、御部屋を覗きながら聞耳を立てました。旦那様は御羽織を脱捨てて、額の汗を御
拭
(
ふ
)
きなさるところ。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
紅屋へ行ってソーダ水を飲んで汗を
拭
(
ふ
)
き、それからまたゆっくり出直したら、こんどはちょうどよかった。古い大きいお屋敷である。
正義と微笑
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
女の顔を伝わって、涙が
止所
(
とめど
)
もなく流れる。とうとう女は声を立てた。その時病人が動いた。女は急いでハンカチイフで
頬
(
ほお
)
を
拭
(
ふ
)
いた。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
▼ もっと見る
九時半ごろ新しく借りた居間に帰り、体を
拭
(
ふ
)
き、足を洗ひ、小さい方のトランクから日用品やら文房具やら書物やらを取出して調へた。
南京虫日記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
嚔
(
くしゃみ
)
の
出損
(
でそこな
)
った顔をしたが、
半間
(
はんま
)
に手を留めて、
腸
(
はらわた
)
のごとく
手拭
(
てぬぐい
)
を手繰り出して、
蝦蟇口
(
がまぐち
)
の紐に
搦
(
から
)
むので、よじって
俯
(
うつ
)
むけに額を
拭
(
ふ
)
いた。
怨霊借用
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かなり大きく薄眼をあけて、よく寝てゐる様子です。口も半びらきになつて、よだれが出てゐます。そつとガーゼで
拭
(
ふ
)
いてやりました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
すると
遠
(
とほ
)
くの
方
(
はう
)
でパタ/\と
小
(
ちひ
)
さな
跫音
(
あしおと
)
のするのが
聞
(
きこ
)
えました、
愛
(
あい
)
ちやんは
急
(
いそ
)
いで
眼
(
め
)
を
拭
(
ふ
)
いて
何
(
なに
)
か
來
(
き
)
たのだらうかと
見
(
み
)
てゐました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
というと、若僧は
手拭
(
てぬぐい
)
を出して、
此処
(
ここ
)
でしょう、といいながら顔を
拭
(
ふ
)
いた。
蚯蚓脹
(
みみずば
)
れの少し大きいの位で、大した事ではなかった。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「な、伊藤、俺等一つでやめよう。後でおふくろにうらまれると困るから」と須山は笑った。伊藤は分からないように眼を
拭
(
ふ
)
いていた。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
いつ見ても
汚
(
きたな
)
いといわれ、それが大々的にお
化粧
(
けしょう
)
をした時でさえそうなのだから、彼は一番
汚
(
よご
)
れたところだけ
拭
(
ふ
)
けばいいのである。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
彼
(
かれ
)
はどつかり
坐
(
すわ
)
つた、
横
(
よこ
)
になつたが
又
(
また
)
起直
(
おきなほ
)
る。
而
(
さう
)
して
袖
(
そで
)
で
額
(
ひたひ
)
に
流
(
なが
)
れる
冷汗
(
ひやあせ
)
を
拭
(
ふ
)
いたが
顏中
(
かほぢゆう
)
燒魚
(
やきざかな
)
の
腥膻
(
なまぐさ
)
い
臭
(
にほひ
)
がして
來
(
き
)
た。
彼
(
かれ
)
は
又
(
また
)
歩
(
ある
)
き
出
(
だ
)
す。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「
俺
(
お
)
らおめえ、
手洟
(
てばな
)
はかまねえよ」といつたりがら/\と
騷
(
さわ
)
ぎながら、
笑
(
わら
)
ひ
私語
(
さゝや
)
きつゝ、
濡
(
ぬ
)
れた
手
(
て
)
を
前掛
(
まへかけ
)
で
拭
(
ふ
)
いて
再
(
ふたゝ
)
び
飯
(
めし
)
つぎを
抱
(
かゝ
)
へた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
それをニヤニヤ笑ってながめながら、秀吉、足を
拭
(
ふ
)
いて
楯
(
たて
)
の上にあがった。加藤
孫一
(
まごいち
)
、すがたは見せないが、向こうの楯のかげで
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
荷車
曳
(
ひ
)
きの爺さんは、薄ぎたない
手拭
(
てぬぐひ
)
で、額の汗を
拭
(
ふ
)
き拭き、かう言つて、前に立つた婦人の顔を敵意のある眼で見返しました。
黒猫
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
紺三郎なんかまるで立派な
燕尾服
(
えんびふく
)
を着て
水仙
(
すゐせん
)
の花を胸につけてまっ白なはんけちでしきりにその
尖
(
とが
)
ったお口を
拭
(
ふ
)
いてゐるのです。
雪渡り
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
若者はようやく立上って体を
拭
(
ふ
)
いて行ってしまおうとするのをお婆様がたって頼んだので、黙ったまま私たちのあとから
跟
(
つ
)
いて来ました。
溺れかけた兄妹
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
クリストフは少し心が静まると、眼を
拭
(
ふ
)
いて、ゴットフリートを眺めた。ゴットフリートは彼が何か尋ねたがってるのを
覚
(
さと
)
った。
ジャン・クリストフ:04 第二巻 朝
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
可愛らしい鼓村は、大きな、
入道
(
にゅうどう
)
のような体で恐縮し、間違えると子供が
石盤
(
せきばん
)
の字を消すように、箏の
絃
(
いと
)
の上を
掌
(
てのひら
)
で
拭
(
ふ
)
き消すようにする。
朱絃舎浜子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ゆい子は家事に慣れないようすで、めしの
炊
(
た
)
きかたもうまくないし、
拭
(
ふ
)
き掃除や
洗濯
(
せんたく
)
なども、時間ばかりかかってとんと片づかなかった。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
お神はそう言って涙を
拭
(
ふ
)
いたが、
昏睡
(
こんすい
)
中熱に浮かされた銀子は、しばしば
呪
(
のろ
)
いの
譫言
(
うわごと
)
を口走り、春次や福太郎が
傍
(
そば
)
ではらはらするような
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「僕は禿にはならずにすんだが、その代りにこの通りその時から
近眼
(
きんがん
)
になりました」と金縁の眼鏡をとってハンケチで
叮嚀
(
ていねい
)
に
拭
(
ふ
)
いている。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
妻は「死んだ」と言う語に驚いたらしく、
前掛
(
まえかけ
)
で手を
拭
(
ふ
)
き拭き
一寸
(
ちょっと
)
解
(
げ
)
せないらしく、「兵さん?」と言って、そのまま黙った。
あまり者
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
涙と
寝垢
(
ねあか
)
をリスリンできれいに
拭
(
ふ
)
き取ってそのあとの顔へ彼女は「娘」を一人
絵取
(
えど
)
り出した。それは実際にはありそうも無い「娘」だった。
売春婦リゼット
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私は頬をふくらませて、何も云わずに、汗を
拭
(
ふ
)
いていた。どうも、さっきから、あの夾竹桃の
薄紅
(
うすあか
)
い花が目ざわりでいけない。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「馬鹿になるのもいい加減におしよ。お前、そんなふうだと、次郎にどこまでも甘く見られて、今にお尻まで
拭
(
ふ
)
かされるよ。」
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
見ると、彼は漫然と雑巾がけをしているのではなくて、その扉へ誰かが
白墨
(
はくぼく
)
でいたずら書きをしたのを、
拭
(
ふ
)
きとっていたのだ。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
狭い道ですから、人力車が通る時は、傍の垣根にぴったり附いていないでは危いくらいです。門灯の下で車夫は汗を
拭
(
ふ
)
き拭き笑っています。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
農婦は性急な泣き声でそういう
中
(
うち
)
に、早や泣き出した。が、涙も
拭
(
ふ
)
かず、
往還
(
おうかん
)
の中央に突き立っていてから、街の方へすたすたと歩き始めた。
蠅
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
何か言うのかと思うと、手を口のところへ持って行って、口びるを
撫
(
な
)
でた。言葉を
拭
(
ふ
)
き
脱
(
と
)
ったような具合だ。黙り込んで
曖昧
(
あいまい
)
なお
低頭
(
じぎ
)
をした。
魔像:新版大岡政談
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
すてはその
瞼
(
まぶた
)
を優しく閉じてやってやはり
其処
(
そこ
)
から動かずに、芝のうえに坐ってまた冷たい汗を
拭
(
ふ
)
いて、貝ノ馬介の死体を茫然と
打眺
(
うちなが
)
めていた。
舌を噛み切った女:またはすて姫
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
この部屋に入るものとては、たゞ女中が、土曜日ごとにやつて來て、一週間の靜かな
埃
(
ほこり
)
を、鏡や家具から
拭
(
ふ
)
き取るだけだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
自分で洗って自分で
拭
(
ふ
)
いて、それで一切の
後片附
(
あとかたづけ
)
を終って、その膳を拭いたという事を最後の
名残
(
なごり
)
として——いよいよ出て行くというのである。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
マッサージ師が入つて来て、身体を
拭
(
ふ
)
き終へたエルアフイを隣の調整室の寝台へ案内した。記者はエルアフイの運動着と靴をかゝへて後に従つた。
亜剌比亜人エルアフイ
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
やがて
雁首
(
がんくび
)
を奇麗に
拭
(
ふ
)
いて一服すつてポンとはたき、又すいつけてお高に渡しながら気をつけておくれ店先で言はれると人聞きが悪いではないか
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
振り向くと、隣の係長室から出てきたのであろう、制服姿の小西が酒太りのした赤い顔をタオルで
拭
(
ふ
)
きながら、ばかに元気な様子で近づいてきた。
五階の窓:03 合作の三
(新字新仮名)
/
森下雨村
(著)
僕は
薄縁
(
うすべり
)
の上に
胡坐
(
あぐら
)
を
掻
(
か
)
いて、
麦藁
(
むぎわら
)
帽子を脱いで、ハンケチを出して額の汗を
拭
(
ふ
)
きながら、舟の中の人の顔を見渡した。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
胡蝶 (涙を
拭
(
ふ
)
き拭き)……あたし……あたし、……蝶々の
翅
(
はね
)
で、……髪かざりを作ったの。(またおいおい泣き出す)
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
そこでパーシウスは涙を
拭
(
ふ
)
いて、出来るだけ勇ましい顔になって、その見知らぬ人に向って
可
(
か
)
なり元気に答えました。
ワンダ・ブック――少年・少女のために――
(新字新仮名)
/
ナサニエル・ホーソーン
(著)
私
(
わたくし
)
は一
生
(
しょう
)
懸命
(
けんめい
)
、
成
(
な
)
るべく
涙
(
なみだ
)
を
見
(
み
)
せぬように
努
(
つと
)
めましたが、それは
母
(
はは
)
の
方
(
ほう
)
でも
同様
(
どうよう
)
で、そっと
涙
(
なみだ
)
を
拭
(
ふ
)
いては
笑顔
(
えがお
)
でかれこれと
談話
(
はなし
)
をつづけるのでした。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
懷中
(
くわいちう
)
して何國ともなく立去けり左仲は跡に
大汗
(
おほあせ
)
拭
(
ふ
)
き偖々危ふきめに逢しと
呟
(
つぶや
)
きながら道玄次郎が
投
(
なげ
)
出したる一分の金を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
姉をお
勢
(
せい
)
と言ッて、その頃はまだ十二の
蕾
(
つぼみ
)
、
弟
(
おとと
)
を
勇
(
いさみ
)
と言ッて、これもまた袖で
鼻汁
(
はな
)
拭
(
ふ
)
く
湾泊盛
(
わんぱくざか
)
り(これは当今は某校に入舎していて宅には居らぬので)
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
主人公が、膳を買つて來て、それを、自分で、丁寧に
拭
(
ふ
)
いたり、疊の上において眺めたり、寢る時には枕もとに置いて、目をさます
毎
(
ごと
)
に眺めたり、する。
「鱧の皮 他五篇」解説
(旧字旧仮名)
/
宇野浩二
(著)
手に取って息を吹きかけて
拭
(
ふ
)
こうとする時、私の心臓は一時に止まり、わたしの細胞という細胞が嬉しいような、怖ろしいような感激におののき出した。
世界怪談名作集:10 廃宅
(新字新仮名)
/
エルンスト・テオドーア・アマーデウス・ホフマン
(著)
帰りしな、
林檎
(
りんご
)
はよくよくふきんで
拭
(
ふ
)
いて
艶
(
つや
)
を出すこと、
水密桃
(
すいみつとう
)
には手を触れぬこと、果物は
埃
(
ほこり
)
をきらうゆえ始終
掃塵
(
はたき
)
をかけることなど念押して行った。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
やがて、その
時間
(
じかん
)
になると、
年
(
とし
)
ちゃんは、
上衣
(
うわぎ
)
のかくしから、よごれたハンカチを
出
(
だ
)
して、
自分
(
じぶん
)
のハーモニカを
拭
(
ふ
)
いてちゃんとラジオの
前
(
まえ
)
にすわりました。
年ちゃんとハーモニカ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
おまけに私のムシャぶり付いた相手がフガ英語の達人ときているから今や大苦しみで、私はポタポタと汗を垂らすやら額を
拭
(
ふ
)
くやら大車輪の奮闘であった。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
実に
美々
(
びび
)
しい
打扮
(
いでたち
)
でこの時ばかりはいかに不潔なチベットの者でもその前夜から湯を沸かして身体を
拭
(
ふ
)
きます。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「血が少し附いていますが、わざと
拭
(
ふ
)
いてありません。衝突の時に、
腕環
(
うでわ
)
の
止金
(
とめがね
)
が肉に喰い入ったのです。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
拭
常用漢字
中学
部首:⼿
9画
“拭”を含む語句
手拭
拭掃除
濡手拭
払拭
西洋手拭
手拭掛
一拭
押拭
古手拭
拭布
手拭地
置手拭
尻拭
白手拭
掛手拭
汗拭
半拭
靴拭
拭込
拭巾
...