“偃(ふ)” の例文
末段に「来春、九州肥前に営すべし、時日を移さず、降幡を偃(ふ)せて来服すべし、もし匍匐膝行遅延するに於ては、速かに征伐を加うべきや必せり」
其の蔓をして依つて以て纒繞せしむ可き竹條葭幹等を與へて之を扶殖して地に偃(ふ)すこと無からしめ、丁寧に其の蠹蚜(とが)を去るが如きは、即ち助長である。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
クレーチの名折(なをれ)偃(ふ)しゐたり、彼我等を見て己が身を噛みぬ、そのさま衷(うち)より怒りにとらはれし者に似たりき —一五
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「何とて胎(たい)より出でし時に気息(いき)絶えざりしや……しからば今は我れ偃(ふ)して安んじかつ眠らん」
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
上るに従って、偃松小さくなり、傾斜緩(ゆるやか)なる処に至りて、低く地に偃(ふ)す。その上を踏みて行くを得べし。うれしや、偃松を踏みて行くを得るようになれば、頂上は遠からざる也。
層雲峡より大雪山へ (新字新仮名) / 大町桂月(著)
孔子対えて曰く、子、政を為すに焉(な)んぞ殺すことを用いん、子、善を欲せば而(すなわ)ち民善からん、君子の徳は風なり、小人の徳は草なり、草はこれに風を上(くわ)(加)うるとき必ず偃(ふ)す。(同、一九)
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
控ふ 剣豪犬士の功に非ざる無し 百里の江山掌握に帰す 八州の草本威風に偃(ふ)す 驕将敗を取るは車戦に由る 赤壁名と成すは火攻の為めなり 強隣を圧服する果して何の術ぞ 工夫ただ英雄を
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
踏みしだかれて草は偃(ふ)す。
見れば路の辺の草のいろ/\、其とも分かず皆いづれも同じやうに枯れ果てゝ崩折(くづほ)れ偃(ふ)せり。珍らしからぬ冬野のさま、取り出でゝ云ふべくはあらねども、折からの我が懐(おもひ)に合ふところあり。
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)