)” の例文
まだ昨日きのうったあめみずが、ところどころのくぼみにたまっていました。そのみずおもてにも、ひかりうつくしくらしてかがやいていました。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なみがうごき波が足をたたく。日光がる。この水をわたることのこころよさ。菅木すがきがいるな。いつものようにじっとひとの目を見つめている。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
たとへにも天生峠あまふたうげ蒼空あをぞらあめるといふひとはなしにも神代じんだいからそまれぬもりがあるといたのに、いままではあまがなさぎた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大木のこずえからは雨もっていないのにしずくがぽたりぽたりとれ、風もないのに梢の上の方にはコーッという森の音がこもっていた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
この氷滑こほりすべりがゆきたのしみの一つで、とうさんもぢいやにつくつてもらつた鳶口とびぐち持出もちだしては近所きんじよ子供こどもと一しよゆきなかあそびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
とつぜんばらばらとひょうがって来た。はじめすこしばかりわたしたちの顔に当たったと思ううちに、石を投げるようにって来た。
彼を思ひ是を思ふに、身一つにりかゝるき事の露しげき今日けふ此ごろ、瀧口三の袖を絞りかね、法體ほつたい今更いまさら遣瀬やるせなきぞいぢらしき。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
次にひとりの十字架にかゝれる者わが高まれる想像の中にりぬ、侮蔑と兇猛を顏にあらはし、死に臨めどもこれを變へず 二五—二七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
およそ、あるかぎりな矢も、これぎりとする大木や大石も、地鳴りとともにって、崖の肌から敵影てきえいをなだれに捲いて拭き去った。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
艸木のまろきをうしなはざるも気中にしやうずるゆゑ也。雲冷際れいさいにいたりて雨とならんとする時、天寒てんかん甚しき時はあめこほりつぶとなりてくだる。
なにしにつていたこともなければ、ひととの紛雜いざなどはよしつたにしろれはつねことにもかゝらねばなにしにものおもひませう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そうして黄色い声や青い声が、梁をまと唐草からくさのように、もつれ合って、天井からってくる。高柳君は無人むにんきょうに一人坊っちでたたずんでいる。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此時このとき今迄いまゝで晴朗うらゝかであつた大空おほぞらは、る/\うち西にしかたからくもつてて、熱帶地方ねつたいちほう有名いうめい驟雨にわかあめが、車軸しやぢくながすやうにつてた。
白刃しらはえたような稲妻いなづま断間たえまなく雲間あいだひらめき、それにつれてどっとりしきる大粒おおつぶあめは、さながらつぶてのように人々ひとびとおもてちました。
「まだりくさる、まだ降りくさる」とセミョーンは、顔の雪を拭きながら呟いた、「よくもこんなにあるこった、呆れ返ったもんだね。」
追放されて (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
午後ごゝんだがれさうにもせずくもふようにしてぶ、せまたに益々ます/\せまくなつて、ぼく牢獄らうごくにでもすわつて
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わつしはね今日けふはアノとほり朝からりましたので一にちらくようと思つて休んだが、うも困つたもんですね、なんですい病気は。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しろ切干きりぼしさずにしたのであつた。切干きりぼしあめらねばほこりだらけにらうがごみまじらうがひるよるむしろはなしである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
よ、ほか人一個ひとひとりらぬ畑中はたなか其所そこにわびしき天幕てんとりて、るやらずのなかる。それで叔母達をばたちるとも、叔父をぢとも此所こゝとゞまるといふ。
火箸ひばしさきんでて、それからつゞいて肉汁スープなべや、さら小鉢こばちあめつてました。公爵夫人こうしやくふじんは、其等それらつをも平氣へいきりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ってわいた大変ごとというべきは、むすめのお艶がある夜殿様の源十郎にさらわれて来て奥の納戸なんどへとじこめられた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お政はきゅうにやとい女をんで灯明とうみょうめいじ、自分はちゃ用意よういにかかった。しとしとと雨はる、雨落あまおちの音が、ぽちゃりぽちゃりとちはじめた。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
三人の魔女なぞをつかわすよりも、六牙象王ろくげのぞうおう味噌漬みそづけだの、天竜八部てんりゅうはちぶ粕漬かすづけだの、天竺てんじくの珍味をらせたかも知らぬ。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのうちあめがざあざあってきて、うちへかえるにもかえれなくなりました。どうしようかとおもって見回みまわしますと、そこに大きな木のうろをつけました。
瘤とり (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「おお! おかみさん、えらくりだしたじゃねえか。いやになるねえ、いつまでも寒くて、この大雪おおゆきじゃ、わしのぼろぐつで歩くのはこたえまさあね」
其晩そのばん湿しめやかな春雨はるさめつてゐた。近所隣きんじよとなりひつそとして、れるほそ雨滴あまだれおとばかりがメロヂカルにきこえる。が、部屋へやには可恐おそろしいかげひそんでゐた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ムスメはつひにうつむいたまヽ、いつまでも/\わたし記臆きおく青白あをじろかげをなげ、灰色はいいろ忘却ばうきやくのうへをぎんあめりしきる。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
飴売あめうり土平どへい道化どうけ身振みぶりに、われをわすれて見入みいっていた人達ひとたちは、っていたような「おせんがた」というこえくと、一せいくびひがしけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かうなると大雨おほあめるたびに、やまつちすなはどん/\ながれおち、またおそろしい洪水こうずいがおこるようになりました。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
人間がタイタニックを造って誇りに乗り出すと、氷山ひょうざんが来て微塵みじんにする。勘作が小麦を蒔いて今年は豊年だと悦んで居ると、ひょうって十分間に打散らす。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
寶暦九年ほうれきくねん七月二十八日しちがつにじゆうはちにち弘前ひろさきおい西北方せいほくほうにはかくもはひらしたが、そのなかには獸毛じゆうもうごときものもふくまれてゐたといふ。これは渡島おしま大島おほしま噴火ふんかつたものである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
昨夜来さくやらいしきりにり来る雨は朝に至りて未だれず、はるかに利根山奥をのぞむに雲烟うんえん濛々もう/\前途漠焉ばくえんたり、藤原村民の言の如く山霊さんれい果して一行の探検たんけんを拒むかとおもはしむ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
光明后宮の維摩講ゆいまこううたわれた仏前唱歌「しぐれの雨間あめまくなりそくれないににほへる山の散らまく惜しも」
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
あふちいてゐるいへ外側そとがは木立こだちの下蔭したかげに、ぽた/\とつゆちるほどに、かぜきとほる。それは、幾日いくにちつゞいてをつた梅雨ばいうあがかぜである、といふ意味いみです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
よるよ、やれ、はややれ、ローミオー! あゝ、よるひるとはおまへことぢゃ。よるつばさりたおまへは、からすいまりかゝるそのゆきしろゆるよりもしろいであらう。
はなはだもけてなみち五百小竹ゆざさうへしもを 〔巻十・二三三六〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
馬越は綺麗に片付けられた部屋にしよんぼり坐つて、しきる雨の音を聞きながらさう思つた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
この仕組みをどんなに有難く思ってよいでしょう。何も複雑なものが直ちに醜いものとはいえないでしょうが、単純なものの方に恵みは多くり注がれているのであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
え/″\として硝子がらすのそとに、いつからかいとのやうにこまかなあめおともなくつてゐる、上草履うはざうりしづかにびしいひゞきが、白衣びやくえすそからおこつて、なが廊下らうかさきへ/\とうてく。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
白い二本の太腿が、相前後して、異様なりものとなって、スーッと屋根の向うへ消えて行った。群集の間から、まるで花火をでも褒める様な「ワーッ」という歓声が揚がった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これと同時に幾多の殺人事件がって湧いたと云う。鬼婆おにばばあが殺されたと云う。聞く事毎に人を騒がす事ばかりなので、ある者は嘘だろうと云い消した。けれども、事実は争われぬ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ときふゆはじめで、しもすこつてゐる。椒江せうこう支流しりうで、始豐溪しほうけいかは左岸さがん迂囘うくわいしつつきたすゝんでく。はじくもつてゐたそらがやうやうれて、蒼白あをじろきし紅葉もみぢてらしてゐる。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ここには今でも安倍貞任あべのさだとうの母住めりと言い伝う。あめるべき夕方など、岩屋いわやとびらとざす音聞ゆという。小国、附馬牛つくもうしの人々は、安倍ヶ城のじょうの音がする、明日あすは雨ならんなどいう。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼女は何物が天よりり来りしとように驚きつつ、拾いとりてまたしば躊躇ためらいたり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ずこの様子ならりではなかろう、主人の注意と下婢かひの働きで、それぞれの準備を終り、穂高よりすぐ下山する者のためにとて、特に案内者一名をやとい、午前の四時、まだくらいうち
穂高岳槍ヶ岳縦走記 (新字新仮名) / 鵜殿正雄(著)
ひとしきり毎日毎夜まいよのやうにりつゞいた雨のあと、今度は雲一ツ見えないやうな晴天が幾日いくにちかぎりもなくつゞいた。しかしどうかして空がくもるとたちまちに風が出てかわききつた道の砂を吹散ふきちらす。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
雪はいつの間にかんでいた。カフェーの前にはちらちら人が通りだした。
五階の窓:04 合作の四 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
けれどもさいわいに子家鴨こあひるはうまくげおおせました。ひらいていたあいだからて、やっとくさむらなかまで辿たどいたのです。そしてあらたにつもったゆきうえまったつかれたよこたえたのでした。
この独照がまだ小さな庵室に籠つてゐる頃、ひと秋雨のしよぼ/\しきる夕方とん/\と門のを叩くものがある。独照は何気なく出てみると、若い女が外に立つてしく/\泣いてゐる。
「娘のお君は十八、少し淋しいけれど、可愛い娘ですよ、でも、気の変になった母親の介抱かいほうをして、るほどの縁談にも首を縦に振らないのが、あっしに逢いたいというから面白いでしょう」
銭形平次捕物控:282 密室 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)