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俯
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ふ
ふりがな文庫
“
俯
(
ふ
)” の例文
内儀は賊の姿を見るより、ペったりと
膝
(
ひざ
)
を折り敷き、その場に打ち
俯
(
ふ
)
して、がたがたと
慄
(
ふる
)
いぬ。白糸の度胸はすでに十分定まりたり。
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「はあ実は」又四郎は眼を
俯
(
ふ
)
せた、「——実はですね、あの方と、お二人きりで、その、折入ったお話が、その、したいのですが」
百足ちがい
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
折々、水道栓でぶつかる
初々
(
ういうい
)
しい娘があった。紙人形のように薄手で弱そうな子であった。露地で逢っても
俯
(
ふ
)
し眼に過ぎるだけだった。
忘れ残りの記:――四半自叙伝――
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
吾人、仰いで
観
(
み
)
、
俯
(
ふ
)
して察するときは、自然に一種高遠玄妙の感想を喚起す。これすなわち、理想の大怪物の光景に感接したるときなり。
妖怪学講義:02 緒言
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
荘田は、恥しそうに顔を
俯
(
ふ
)
している瑠璃子の、薄暗の中でも、くっきりと白い襟足を、
貪
(
むさぼ
)
るように見詰めながら、有頂天になって云った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
▼ もっと見る
繊
(
ほそ
)
い指を
反
(
そら
)
して
穿
(
は
)
めている指環を見た。それから、
手帛
(
ハンケチ
)
を丸めて、又袂へ入れた。代助は眼を
俯
(
ふ
)
せた女の額の、髪に連なる所を眺めていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
混再拝シテ
白
(
もう
)
ス。書
並
(
ならび
)
ニ詩話ヲ
辱
(
かたじけなく
)
ス。厳粛ノ候尊体福履、家ヲ挙ゲテ
慰浣
(
いかん
)
セリ。
俯
(
ふ
)
シテ賜フ所ノ詩話ヲ読ム。巻ヲ開イテ
咫尺
(
しせき
)
ニシテ
飢涎
(
きぜん
)
忽
(
たちま
)
チ流ル。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
深井は耳の根元まで真紅に染めて羞恥のためか顔面を
俯
(
ふ
)
せてしまった。動機に平一郎自身深い因縁と責任のあることは平一郎も思い及ばなかった。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
久しく頭を
俯
(
ふ
)
した後
虚空
(
こくう
)
に昇り、自分で火を出し身を
焚
(
や
)
いて遺骸地に堕ちたのを、王が収めてこの塔を立てたと見ゆ。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
演壇の右側には一警視の剣を
杖
(
つ
)
きて、弁士の横顔穴も
穿
(
あ
)
けよと
睨
(
にら
)
みつゝあり、三名の巡査は
俯
(
ふ
)
して速記に
忙殺
(
ばうさつ
)
せらる
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
アカシアがまだ
対
(
つい
)
の葉を
俯
(
ふ
)
せて睡っている、——そうした朝早く、不眠に悩まされた彼は、早起きの子供らを伴れて、小さなのは
褞袍
(
どてら
)
の中に
負
(
お
)
ぶって
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
息巻くお峯の前に彼は
面
(
おもて
)
を
俯
(
ふ
)
して言はず、静に
思廻
(
おもひめぐ
)
らすなるべし。お峯は心着きて栗を剥き始めつ。その一つを終ふるまで
言
(
ことば
)
を継がざりしが、さて
徐
(
おもむろ
)
に
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
お静は黙って立ち上がると、
箪笥
(
たんす
)
から羽織を出して、涙ぐましい目を
俯
(
ふ
)
せたまま、後ろから着せてやりました。
銭形平次捕物控:013 美女を洗い出す
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
孔子もさすがに不愉快になり、冷やかに公の様子を
窺
(
うかが
)
う。霊公は面目無げに目を
俯
(
ふ
)
せ、しかし南子には何事も言えない。
黙
(
だま
)
って孔子のために次の車を
指
(
ゆび
)
さす。
弟子
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
そは
兎
(
と
)
まれ
角
(
かく
)
まれ、昧者初心ものといはるゝ人にも
俯
(
ふ
)
して教を受くるものと、仰いで言を立つるものとあり。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
復
(
ふたた
)
びかしこに行きて
念比
(
ねんごろ
)
にとぶらひ給へとて、杖を
曳
(
ひ
)
きて
前
(
さき
)
に立ち、相ともに
壠
(
つか
)
のまへに
俯
(
ふ
)
して声を
放
(
あ
)
げて嘆きつつも、其の夜はそこに念仏して明かしける。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
われは日ごとに公苑に往き
戲園
(
しばゐ
)
に入り、又心安からぬまゝに寺院を尋ねて、
聖母
(
マドンナ
)
の足の下に
俯
(
ふ
)
することあり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
庭下の坂が直ぐ湖氷に落ちてゐるのであるから、一列の人々を見るには、可なり
俯
(
ふ
)
し
目
(
め
)
にならねばならぬ。
諏訪湖畔冬の生活
(新字旧仮名)
/
島木赤彦
(著)
仰いで見たところで、岩石の落ち来るべきところではない、
俯
(
ふ
)
して見たところで、人の気配のないところ。
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
バッタリ床上に身を
俯
(
ふ
)
せる刹那、三発の銃声、薄黒い室の片隅にパッと火花が散る。間もあらばこそ、書記の身体がドッと倒れた。ルパンが早くも足を掬ったのだ。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
友野は一寸眼を
俯
(
ふ
)
せると、すぐすらすらと出し物をいった。しかし、その中にはネネの名はなかった。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
落
(
おと
)
し忽ち
産後
(
さんご
)
の
血
(
ち
)
上
(
あが
)
り是も其夜の
明方
(
あけがた
)
に
相果
(
あひはて
)
ければ
跡
(
あと
)
に
殘
(
のこり
)
しお三婆は
兩人
(
ふたり
)
の
死骸
(
しがい
)
に取付天を
仰
(
あふ
)
ぎ地に
俯
(
ふ
)
し
泣悲
(
なきかな
)
しむより外なきは見るも
哀
(
あは
)
れの次第なり
近邊
(
きんぺん
)
の者ども
婆
(
ばゝ
)
が
泣聲
(
なきごゑ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
我はこれを受くる時、画工の手の氷の如く
冷
(
ひややか
)
になりて、いたく震ひたるに心づきぬ。……さて
俯
(
ふ
)
してあまたゝび我に接吻し、かはゆき子なり。そちも聖母に願へ、といひき。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ミチミはそれを鼻にかかった甘ったるい声でいって、眼を下に
俯
(
ふ
)
せた。そこには単衣をとおして、香りの高いはち切れるような女の肉体が感ぜられる、丸々とした膝があった。
棺桶の花嫁
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
仮令
(
たとえ
)
数ありとするも、測り難きは数なり。測り難きの数を
畏
(
おそ
)
れて、
巫覡卜相
(
ふげきぼくそう
)
の徒の前に
首
(
こうべ
)
を
俯
(
ふ
)
せんよりは、知る可きの道に従いて、古聖前賢の
教
(
おしえ
)
の
下
(
もと
)
に心を安くせんには
如
(
し
)
かじ。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
其処には二十歳位の女の半身がある。代助は眼を
俯
(
ふ
)
せて
凝
(
ぢつ
)
と女の顔を見詰めてゐた。——
文芸的な、余りに文芸的な
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そう云って彼女は子供をつき
退
(
の
)
けた。ぴたりと正座して、その窓に
対
(
むか
)
って低頭した。子供も母親に見ならうのだ。親たちの気持を素直に反射して、そこに手をついて眼を
俯
(
ふ
)
せた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
而れども
俯
(
ふ
)
して熟考すれば之れ
最終
(
さいしう
)
の
露宿
(
ろしゆく
)
にして、前日来の露宿中は
雨
(
あめ
)
殆
(
ほと
)
んどなく、
熟睡
(
じゆくすい
)
以て白日の
労
(
らう
)
を
慰
(
ゐ
)
せし為め、
探検
(
たんけん
)
の
目的
(
もくてき
)
を
遂
(
と
)
ぐるを得せしめしは、
実
(
じつ
)
に天恩無量と云つべし
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
障子をあけて見ますと、庭さきの物置小屋の軒下に、
白手拭
(
しろてぬぐひ
)
を姉さんかぶりにしたお母さんの姿が見えました。足もとに何か居ると見えて、お母さんは
俯
(
ふ
)
し目にして立つて居られます。
身代り
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
重景は
愧
(
はづか
)
しげに
首
(
かうべ
)
を
俯
(
ふ
)
し、『如何でかは』と答へしまゝ、はか/″\しく
應
(
いらへ
)
せず。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
僕はステツキも持たずに、かうべを
俯
(
ふ
)
して歩いてゐる。街道が大きいので、人どほりがさう繁くないやうに思はれる。平坦な街道がいつの間にか少し低くなつて、そこを暫く歩いてゐる。
接吻
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
是
(
こ
)
の
故
(
ゆえ
)
に明君は民の産を制し、必ず仰いでは
以
(
もっ
)
て父母に
事
(
つこ
)
うまつるに足り、
俯
(
ふ
)
してはもって妻子を
畜
(
やしな
)
うに足り、楽歳には終身飽き、凶年には死亡を免れしめ、
然
(
しか
)
る後
駆
(
か
)
って善に
之
(
ゆ
)
かしむ。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
今まで胸を張って堂々と歩みし者が、胸を狭くし下を
俯
(
ふ
)
して
悄然
(
しょうぜん
)
として歩むようになる。そして自己の計画が自己を滅ぼす結果となりて、自分の張った網に自分が捕えらるるようになる。
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
首
(
こうべ
)
を
俯
(
ふ
)
してこちらの様子を窺っているらしいので、下役人は更に二の矢を射かけると、今度はその胸に命中したので、さすがの怪物も驚いたらしく、遂にうしろを見せておめおめと立ち去った。
中国怪奇小説集:06 宣室志(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
龍
(
りよう
)
首
(
こうべ
)
を
俯
(
ふ
)
し尾を
垂
(
た
)
れて、
遁
(
のが
)
る。
母となる
(新字旧仮名)
/
福田英子
(著)
稲荷の祠と、背なか合せに、
木洩
(
こも
)
れ
陽
(
び
)
を浴び、落葉をしいて、乳ぶさのうちに寝入った子を、
俯
(
ふ
)
しのぞいている若い母があった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と
後
(
うしろ
)
へ
反
(
そ
)
り前へ
俯
(
ふ
)
し、
悶
(
もだ
)
え苦しみのりあがり、
紅
(
くれない
)
蹴返す
白脛
(
しらはぎ
)
はたわけき心を乱すになむ、高田駄平は酔えるがごとく、酒打ち飲みていたりけり。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
彼女は眼を
俯
(
ふ
)
せて、自分の
傍
(
そば
)
を
擦
(
す
)
り抜けた。その時自分は彼女の
瞼
(
まぶた
)
に涙の宿った
痕迹
(
こんせき
)
をたしかに認めたような気がした。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いつもうつ向けにして、
俯
(
ふ
)
し眼づかいで、立ち居もおっとりとしなやかで、大助になにか云うにもあまったるい、蚊の鳴くような声をだしていたのにな
改訂御定法
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
彼等はその無分別を
慙
(
は
)
ぢたりとよりは、この
死失
(
しにぞこな
)
ひし見苦しさを、天にも地にも
曝
(
さら
)
しかねて、
俯
(
ふ
)
しも仰ぎも得ざる
項
(
うなじ
)
を
竦
(
すく
)
め、
尚
(
なほ
)
も為ん方無さの目を閉ぢたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
地に
俯
(
ふ
)
して亡き袖のいる冥土を慕ってみたが、死者の霊をこの世によびもどす招魂の法をもとめるすべもなく、さればとて天を仰いで捨ててきた故郷のことを思うと
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
都の
巷
(
ちまた
)
には影を没せる円太郎馬車の、
寂然
(
せきぜん
)
と大道に傾きて、
痩
(
や
)
せたる馬の
寒天
(
さむぞら
)
に
俯
(
ふ
)
して
藁
(
わら
)
を
食
(
は
)
めり
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
我は頭を傾けて姫の面を
俯
(
ふ
)
し視たるに、姫はそのそこひ知られぬ
目
(
ま
)
なざしもて打ち仰ぎ、そのめでくつがへられたるをさな子は、父もなく母もなきあはれなる身となりぬ
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
こんな日に
鼹鼠
(
もぐらもち
)
のようになって、内に引っ込んで、本を読んでいるのは、世界は広いが、先ず君位なものだろう。それでも机の上に
俯
(
ふ
)
さっていなかっただけを、僕は
褒
(
ほ
)
めて置くね。
かのように
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
仰いで天文を望めば、日月星辰、
秩然
(
ちつぜん
)
として羅列するもの、一つとして妖怪ならざるはなし。
俯
(
ふ
)
して地理を察するに、山川草木、
鬱然
(
うつぜん
)
として森立するもの、またことごとく妖怪なり。
妖怪学講義:02 緒言
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
そうしてテントから二
間
(
けん
)
ほど離れた所に、月に照らされた真白な砂原の上に、ポツンと黒く、小さな犬か何かのように一人の少年がしゃがんだまま、じっと顔を
俯
(
ふ
)
せて動かないでいる。
虎狩
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
当時
崛強
(
くつきやう
)
の男で天下の実勢を洞察するの明のあつた者は、君臣の大義、順逆の至理を気にせぬ限り、何ぞ首を
俯
(
ふ
)
して生白い公卿の
下
(
もと
)
に付かうやと、勝手理屈で暴れさうな情態もあつたのである。
平将門
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
夜半
(
やはん
)
眼覚め、
防寒
(
ばうかん
)
の為炉中に
薪
(
たきぎ
)
を
投
(
とう
)
ぜんとすれば、月光清輝幽谷中に
冴
(
さ
)
へ
渡
(
わた
)
り、両岸の
森中
(
しんちう
)
には高調凄音群猿の
叫
(
さけ
)
ぶを
聞
(
き
)
く、
俯
(
ふ
)
して水源未知の利根を
見
(
み
)
れば、
水流
(
すゐりう
)
混々
(
こん/\
)
、河幅猶ほ
広
(
ひろ
)
く水量甚
多
(
おほ
)
し
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
彦根に対して
俯
(
ふ
)
して敵を射るの好地にあるではござらぬか、加賀と尾張の二大藩を腹背に受けているようではござるが、一方は馬も越せぬ山つづき、一方は大河と平野によって別天地をなしてござる
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「最善の努力をいたして参ります」と、阿賀妻は目を
俯
(
ふ
)
せた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
俯
漢検1級
部首:⼈
10画
“俯”を含む語句
俯伏
俯向
俯臥
真俯向
俯瞰
差俯向
突俯
俯仰
真俯伏
打俯
下俯
内俯
俯目
差俯
俯居
俯視
眞俯向
俯仰天地
俯向形
俯向加減
...