土田耕平
1895.01.25 〜 1940.08.12
著者としての作品一覧
海坊主の話(新字旧仮名)
読書目安時間:約11分
私は子供の時分のことを思ひおこす時、何よりもさきに髯の爺のすがたが目に浮んで来ます。ふさ/\とした長い髯を生してゐましたところから、私は髯のぢい、髯のぢいと呼びなれましたが、今考へ …
読書目安時間:約11分
私は子供の時分のことを思ひおこす時、何よりもさきに髯の爺のすがたが目に浮んで来ます。ふさ/\とした長い髯を生してゐましたところから、私は髯のぢい、髯のぢいと呼びなれましたが、今考へ …
大寒小寒(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
おほ寒こ寒 山から小僧が とんでくる…… 冬のさむい晩のこと、三郎はおばあさんと二人で、奥座敷のこたつにあたつてゐました。庭の竹やぶが、とき/″\風に吹きたわむ音がして、そのあとは …
読書目安時間:約3分
おほ寒こ寒 山から小僧が とんでくる…… 冬のさむい晩のこと、三郎はおばあさんと二人で、奥座敷のこたつにあたつてゐました。庭の竹やぶが、とき/″\風に吹きたわむ音がして、そのあとは …
お母さんの思ひ出(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
私が十一か二の年の冬の夜だつたと覚えてゐる。お父さんは役所の宿直番で、私はお母さんと二人炬燵にさしむかひにあたつてゐた。背戸の丸木川の水も、氷りつめて、しん/\と寒さが身にしみるや …
読書目安時間:約4分
私が十一か二の年の冬の夜だつたと覚えてゐる。お父さんは役所の宿直番で、私はお母さんと二人炬燵にさしむかひにあたつてゐた。背戸の丸木川の水も、氷りつめて、しん/\と寒さが身にしみるや …
柿(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
私の村は「柿の木の村」でした。家といふ家のまはりには、大きな小さな柿の木が、立ち並んでゐました。 夏は、村ぢゆうが深い青葉につゝまれ、秋はあざやかな紅葉に染りました。紅葉がちつてう …
読書目安時間:約3分
私の村は「柿の木の村」でした。家といふ家のまはりには、大きな小さな柿の木が、立ち並んでゐました。 夏は、村ぢゆうが深い青葉につゝまれ、秋はあざやかな紅葉に染りました。紅葉がちつてう …
騎士屋(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
私どもが小学四年生のときの受持は、牛島先生でありました。牛島先生は、色が黒くて目がギロリとして、いかにも怖さうな顔つきでしたが、笑ふと、まるで別の人のやうにやさしい顔になりました。 …
読書目安時間:約3分
私どもが小学四年生のときの受持は、牛島先生でありました。牛島先生は、色が黒くて目がギロリとして、いかにも怖さうな顔つきでしたが、笑ふと、まるで別の人のやうにやさしい顔になりました。 …
狐に化された話(新字旧仮名)
読書目安時間:約6分
枕もとの障子に笹の葉のかげがうつりました。 「太郎や、お月さまが出ましたよ。」 とおばあさんが云ひました。太郎さんは顔をあげて、おもしろく模様形をした笹の葉のかげを、しばらく見てゐ …
読書目安時間:約6分
枕もとの障子に笹の葉のかげがうつりました。 「太郎や、お月さまが出ましたよ。」 とおばあさんが云ひました。太郎さんは顔をあげて、おもしろく模様形をした笹の葉のかげを、しばらく見てゐ …
狐の渡(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
むかし、一人の旅人が、科野の国に旅して、野路を踏みたがへ、犀川べりへ出ました。むかうへ渡りたいと思ひましたが、あたりに橋もなし、渡も見えず、困つてをりますと、 「もうし、旅のお人。 …
読書目安時間:約2分
むかし、一人の旅人が、科野の国に旅して、野路を踏みたがへ、犀川べりへ出ました。むかうへ渡りたいと思ひましたが、あたりに橋もなし、渡も見えず、困つてをりますと、 「もうし、旅のお人。 …
さがしもの(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
文吉は、ある夏休の末のこと、親不知子不知の海岸に近い、従兄の家へあそびに行きました。 そして、毎日従兄と一緒に、浜へつれて行つてもらつて、漁夫たちの網をひくのを見たり、沖の方に、一 …
読書目安時間:約5分
文吉は、ある夏休の末のこと、親不知子不知の海岸に近い、従兄の家へあそびに行きました。 そして、毎日従兄と一緒に、浜へつれて行つてもらつて、漁夫たちの網をひくのを見たり、沖の方に、一 …
芝の芽(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
芝の芽の萌えるころは ふるさとの丘を思ひだす ゆるやかにふわふわと雲の浮かんだ あの丘山を 犬ころが走り 凧があがり ぼくらは寝そべつてゐたつけが 「どこへ行かうかな」 「大きくな …
読書目安時間:約1分
芝の芽の萌えるころは ふるさとの丘を思ひだす ゆるやかにふわふわと雲の浮かんだ あの丘山を 犬ころが走り 凧があがり ぼくらは寝そべつてゐたつけが 「どこへ行かうかな」 「大きくな …
千本木川(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
裏の山から出て、私の村の中ほどをよこぎつて、湖水へ流れこむ川を、千本木川といひました。千本木川——どうして、そんな名まへがついたのでせう。私の幼いころの記憶では、川ぶちに目立つほど …
読書目安時間:約3分
裏の山から出て、私の村の中ほどをよこぎつて、湖水へ流れこむ川を、千本木川といひました。千本木川——どうして、そんな名まへがついたのでせう。私の幼いころの記憶では、川ぶちに目立つほど …
天童(新字旧仮名)
読書目安時間:約5分
はげしい雨風の夜であります。山小屋の爺は、早く雨戸を立てゝ藁布団の中へもぐりこみました。枕もとには、うす暗い置ランプがともつてゐます。時をり戸のすき間から風が吹きこんで来て、ランプ …
読書目安時間:約5分
はげしい雨風の夜であります。山小屋の爺は、早く雨戸を立てゝ藁布団の中へもぐりこみました。枕もとには、うす暗い置ランプがともつてゐます。時をり戸のすき間から風が吹きこんで来て、ランプ …
峠(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
その時、太郎さんは七つ、妹の千代子さんは五つでありました。太郎さんはお父さんに背負はれ、千代子さんはお母さんに背負はれてゐました。 春三月とはいへ、峠の道は、まだきつい寒さでした。 …
読書目安時間:約7分
その時、太郎さんは七つ、妹の千代子さんは五つでありました。太郎さんはお父さんに背負はれ、千代子さんはお母さんに背負はれてゐました。 春三月とはいへ、峠の道は、まだきつい寒さでした。 …
峠(新字新仮名)
読書目安時間:約7分
その時、太郎さんは七つ、妹の千代子さんは五つでありました。太郎さんはお父さんに背負われ、千代子さんはお母さんに背負われていました。 春三月とはいえ、峠の道は、まだきつい寒さでした。 …
読書目安時間:約7分
その時、太郎さんは七つ、妹の千代子さんは五つでありました。太郎さんはお父さんに背負われ、千代子さんはお母さんに背負われていました。 春三月とはいえ、峠の道は、まだきつい寒さでした。 …
時男さんのこと(新字旧仮名)
読書目安時間:約13分
時男さん——それは私の幼な友だちの名まへです。年は三つ違ひで、私が尋常科三年生の時、時男さんは六年生でありました。だから、お友だちといふよりも、まあ兄さんのやうなものでした。 私は …
読書目安時間:約13分
時男さん——それは私の幼な友だちの名まへです。年は三つ違ひで、私が尋常科三年生の時、時男さんは六年生でありました。だから、お友だちといふよりも、まあ兄さんのやうなものでした。 私は …
のぞき眼鏡(新字旧仮名)
読書目安時間:約4分
村の鎮守さまのお祭で、さま/″\の見世物がかゝつてゐました。その中に、のぞき眼鏡の掛小屋があつて、番台の男が、 「さあ坊ちやんがた、一銭銅貨一枚で、ゆつくりのぞくことができますよ。 …
読書目安時間:約4分
村の鎮守さまのお祭で、さま/″\の見世物がかゝつてゐました。その中に、のぞき眼鏡の掛小屋があつて、番台の男が、 「さあ坊ちやんがた、一銭銅貨一枚で、ゆつくりのぞくことができますよ。 …
八ノ字山(新字旧仮名)
読書目安時間:約1分
八ノ字山の 八ノ字ゴウロ 雪がこんこん ふつてゐる どこのお家も 戸をしめて 昼まも夜さも 知らん顔 冬の神さま 早よ去んで あかるい春に なつてくれ 八ノ字ゴウロに 菫が咲いて …
読書目安時間:約1分
八ノ字山の 八ノ字ゴウロ 雪がこんこん ふつてゐる どこのお家も 戸をしめて 昼まも夜さも 知らん顔 冬の神さま 早よ去んで あかるい春に なつてくれ 八ノ字ゴウロに 菫が咲いて …
八の字山(新字旧仮名)
読書目安時間:約7分
私が幼いころ、一ばんさきにおぼえた字は、八といふ字でありました。これは、先生から習つたのではない、山が教へてくれた字であります。 村のうしろに、雑木山が二つ向きあつてゐる間から、擂 …
読書目安時間:約7分
私が幼いころ、一ばんさきにおぼえた字は、八といふ字でありました。これは、先生から習つたのではない、山が教へてくれた字であります。 村のうしろに、雑木山が二つ向きあつてゐる間から、擂 …
身代り(新字旧仮名)
読書目安時間:約12分
五月雨がしよぼ/\と降りつゞいて、うすら寒い日の夕方、三郎さんは、学校からかへつて、庭向きの室でおさらひをしてゐますと、物置の方で、 「三郎や、ちよいと来てごらん。」といふお母さん …
読書目安時間:約12分
五月雨がしよぼ/\と降りつゞいて、うすら寒い日の夕方、三郎さんは、学校からかへつて、庭向きの室でおさらひをしてゐますと、物置の方で、 「三郎や、ちよいと来てごらん。」といふお母さん …
雪に埋れた話(新字旧仮名)
読書目安時間:約3分
お秋さんは、山へ柴刈に行つたかへりに、雪に降りこめられました。こん/\と止めどなく降つてくる雪は、膝を埋め、腰を埋め、胸を埋める深さにまで積つてきました。お秋さんは、大きな柴の束を …
読書目安時間:約3分
お秋さんは、山へ柴刈に行つたかへりに、雪に降りこめられました。こん/\と止めどなく降つてくる雪は、膝を埋め、腰を埋め、胸を埋める深さにまで積つてきました。お秋さんは、大きな柴の束を …
私の祖父(新字旧仮名)
読書目安時間:約2分
私は、幼いころのお父さん、お母さん、おばあさんの思ひ出は、はつきりしてをります中に、おぢいさんといふ人を少しも知りません。おぢいさんとはいつても、まだ四十二で亡くなつたのですから、 …
読書目安時間:約2分
私は、幼いころのお父さん、お母さん、おばあさんの思ひ出は、はつきりしてをります中に、おぢいさんといふ人を少しも知りません。おぢいさんとはいつても、まだ四十二で亡くなつたのですから、 …
“土田耕平”について
土田 耕平(つちだ こうへい、1895年(明治28年)6月10日 - 1940年(昭和15年)8月12日)は、現在の長野県諏訪市出身の歌人、童話作家。
(出典:Wikipedia)
(出典:Wikipedia)
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