狐の渡きつねのわたし
むかし、一人の旅人が、科野の国に旅して、野路を踏みたがへ、犀川べりへ出ました。むかうへ渡りたいと思ひましたが、あたりに橋もなし、渡も見えず、困つてをりますと、 「もうし、旅のお人。」 といふ声がします。見ると、いつどこからとも知らず、一人の …