)” の例文
すくなくともこの事件が、前記の通りの状態で勃発してのち、如何なる径路をんで吾輩の手にズルズルベッタリにすべり込んで来たか。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
越後の上杉景勝も、慇懃いんぎん、賀使を送って、盟約をみ、四道の風はことごとく、秀吉になびき、秀吉のたもとに吹くを、歓ぶかのような状況である。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ものよしが、近代風の乞食者となるまでには、古い意味の乞食者即、浮浪祝言師——巡遊伶人——の過程をんで来て居る事が思はれる。
国文学の発生(第二稿) (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
僕自身のわずかの経験においてもそういうことが多い。しかしてまた世上せじょう聖人君子が少なき以上、同じ経験をめるものが多いであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
わたしはそれをならふために授業じゆげふけてはゐませんでした』とつて海龜うみがめ長太息ためいきし、『わたしたゞ規則きそくどほりの課程くわていんだゝけです』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
しからば猶太ユダヤの亡国は当然であるが、カイゼルはこの前車の覆轍ふくてつを怖れずして、またもその轍をんで自らその車をくつがえおわった。
永久平和の先決問題 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
霜をんで堅氷至る。ああわが邦の危機かくのごとし。わが人民たる者あにその眼孔を東洋の全局面に注がずして可ならんや。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
その使者はこれこれのことをみ行ない、こうこういう教えを広めて、それが末法の長い時代を指導するのだ、と予言しているのであります。
最終戦争論 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
の白きをんで散歩する市郎のところへ、の七兵衛老爺おやじが駈けて来て、大きな眼と口とをしきりに働かせながら、山𤢖やまわろの一件を注進したのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
果然くわぜんれはいくばくもなくして漢族かんぞくのためにほろぼされた。ひと拓拔氏たくばつしのみならず支那塞外しなさくぐわい蠻族ばんぞくおほむねそのてつんでゐる。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
客観写生という事を志して俳句を作って行くという事は、俳句修業の第一歩として是非ともまねばならぬ順序である。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
実際はその享楽家的な外貌がいぼうの下に戦々兢々せんせんきょうきょうとして薄氷はくひょうむような思いの潜んでいることを、俺は確かに見抜いたのだ。
大きい遺産は、別居して居ると言っても、まだ離婚の手続をんで居ない、夫人の浪子のところへ転げ込むでしょう。
流行作家の死 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
奉「源太郎、其の方儀、去る十四日御老中松平右京殿御下城の折、手続きもまずお駕籠訴申上げ候段不届であるぞ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
〔譯〕已むことを得ざるのいきほひうごけば、則ち動いてくわつせず。ぐ可らざるのみちめば、則ち履んであやふからず。
今年は必ず約をまむとなり。道遠ければ、祭の前日にいで立たむとす。かしまだちの前の夕には、喜ばしさの餘に、我眠のおだやかならざりしも、ことわりなるべし。
此慊堂の書は会に先つこと五日に裁したものである。想ふに慊堂は必ずや約をんで席に列したことであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
定基は其空虚の中に、かしらは天を戴くでもなく、脚は地をむでも無く、東西も知らず南北もわきまえず、是非善悪吉凶正邪、何も分らずふらふらと月日を過した。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
而して彼は終に再び江戸の地をむことを得ざりし也。彼の還るや時正に初夏東山道を経て帰れり。夾山層巒翠揷天、濛々山駅雨為煙、蓋し当時の光景也。
頼襄を論ず (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
新しき家庭を作りて始めて結婚の生涯をむものの中には、あるいは又生と同じ疑問に迷うものもあらん。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
なお山部赤人の歌に、「朝猟に鹿猪ししみ起し、夕狩に鳥ふみ立て、馬めて御猟ぞ立たす、春の茂野しげぬに」(巻六・九二六)がある。赤人のには此歌の影響があるらしい。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
仮の一夜の伴侶を求むるにも、男は必ずこの順序をもうとしたことは、彼らにも不似合いな律儀りちぎさであった。こういう奇妙な慣習は突如として起こり得るものでない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三千代は此暑このあつさおかして前日ぜんじつやくんだ。代助は女のこえを聞き付けた時、自分で玄関迄飛びした。三千代はかさをつぼめて、風呂敷づゝみを抱へて、格子のそとつてゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はじめ母氏は愛児の安濃津に行かんとする時、紅白の小帛こぎれを毅堂が著衣の襟裏に縫いつけ、これを母の形見となし名を成すまでは決して家のしきいんではならぬと言いきかせた。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ここにおいてか獣すなわち啖うその中地ところ土および諸草木すこしく絳色こうしょくを帯び血染のごとし、人その地をむ者芒刺いばらを負う、疑うと信ずるとをいうなく、悲愴せざるはなしと出づ。
私は雪田の縁辺の断石をんで、下りかけたが、いかにもまだるッこいので、雪を横に切って斜に下りようとした、雪のおもては、焼岳の灰がばらついて、胡麻塩色になっている
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
が、それにもかかわらず妙に陽気ようきにはなれなかった。保吉の書斎の机の上には、読みかけたロシュフウコオの語録がある。——保吉は月明りをみながら、いつかそんな事を考えていた。
魚河岸 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
この洞斎の住居を夜に入って密々に訪れたのは、昼の約束をんだ滝之助であった。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
花咲けども春日はるびうららかなるを知らず、楽来たのしみきたれども打背うちそむきてよろこぶを知らず、道あれどもむを知らず、善あれどもくみするを知らず、さいはひあれども招くを知らず、恵あれどもくるを知らず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
吾人は寧ろ進歩的思想にくみするものなり、然りと雖、進歩も自然の順序をまざる可からず、進歩は転化と異なれり、若し進歩の一語の裡に極めて危険なる分子を含めることを知らば
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
けだし正をみ、中を執るということは、いずれの世、いずれの時にも必要です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
撃柝げきたく一声、囃子はやしは鳴りをしずむるとき、口上はかれがいわゆる不弁舌なる弁をふるいて前口上をわれば、たちまち起こる緩絃かんげん朗笛のせつみて、静々歩み出でたるは、当座の太夫元滝の白糸
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はやく養い来ったニルアドミラリの精神は必然の径路をんで自己をあそびの中に韜晦する。あそび即ち芸術である。信を他に置くことの出来ない近代人は自己を信ずるより外ないからである。
詮方せんかたなく帰宿せんとする折しも、重井ひとり帰りて、妾の訪れしを喜び、さて入獄以来の厚情はも忘られず、今回互いに無事出獄せるこそ幸いなれ、ここに決心して結婚の約をまんという。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ちん、明治十四年十月十二日の詔をみ、立憲の政体を大成するの規模は、固より一定する所ありと雖も、其の経営措画そかくに至ては、各国の政治を斟酌して、以て採択に備へるの要用なるが為めに
杜は焼け土の上をんで、丸の内有楽町にあった会社を探した。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
禍機かきんで鎖金しょうきん帳底ちょうていに向う
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「すでに今、三度まで、予は汝を生擒いけどった。この上は約束をんで、汝の首を斬って放たん。孟獲何か云い置くことはないか」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから二年ぜんに私がんで来た通りの道筋を、知らずらずのうちに間違いなく繰り返して辿らせて、カフェー・ユートピアまで連れて来て
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
畫工は猶當時の言を記し居りて、我にその約をまざりしを謝したり。君に別れて羅馬に歸りしに、故郷の音信おとづれありて、直ちに北國へ旅立つことゝなりぬ。
誰も昔を見たことがないのだから何とでも言える訳さ。しかし昔の道を杓子定規しゃくしじょうぎにそのままんで、それでうまく世が治まるくらいなら、誰も苦労はしないよ。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「嫁が欲しきゃ、尋常に手順をむがいい。千二百石の殿様が、町娘を手籠てごめにして済むと思うか。今までにもそので三人も腰元が死んでいるじゃないか」
大夫が邸の三の木戸、二の木戸、一の木戸を一しょに出て、二人は霜をんで、見返りがちに左右へ別れた。
山椒大夫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
城に拠って固守すれば少しは支え得ようが、動こうとすれば四年前の小山田筑前の覆轍ふくてつむほかは無い。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
吾人の理性が天則によって示されたる人類のむべき当然の道に辿たどり着いたものと見なければならぬ。
婦人問題解決の急務 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
此二首なども元、農業の害物駆除の呪言から出たのであるが、やはり、室寿詞の定型をんでは居る。
おえいと多助とは十九と廿はたち年合としあいかんべいと思う、母親おふくろは多助のためには実の叔母なりするから、血統ちすじ三人で此のうちめば大丈夫でいじょうぶ、そうして太左衞門われが後見をして
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
これ我が天職なり、これ我々がまさにむべき道なりとの確信のもとに働ける人、すなわち意志の強き人は世にはびこり、ために何人なんぴとかの進路をさまたげ、人から邪魔視じゃましされる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
三千代はこのあつさを冒して前日の約をんだ。代助は女の声を聞き付けた時、自分で玄関まで飛び出した。三千代は傘をつぼめて、風呂敷包を抱えて、格子こうしの外に立っていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この年の中秋、枕山は遠山雲如、石川艇斎ていさい、鷲津毅堂、鈴木松塘、秋場桂園、横山湖山の六人と同遊の約をなしたが、その当夜前約をんで来り会したものは横山湖山一人のみであった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)