)” の例文
山峡にそって流れている太田川が、この街の入口のところで分岐すると、分岐の数は更にえ、街は三角洲の上にひろがっている。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
海は日毎ひごとに荒模様になって行った。毎朝、なぎさに打ち上げられる漂流物の量が、急にえ出した。私たちは海へはいると、すぐ水母くらげに刺された。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
と、ばかり迎え入れて、さらに新規の客膳がえた。やがてまたこれへ三好武蔵守が加わる。蜂須賀彦右衛門父子も交じる。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
去年はこの位だつたがと小さいてのひらを双方ぴつたりつけて、てんでに繭をすくひとるやうにくぼませて見せて、今年はもつとやすのだといつた。
桑摘み (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
郊外では四月よつき五月いつつきも釣る蚊帳かやが、ここでは二十日か、三十日位しからない。でも、毎年のように蚊がえた。その晩も皆な蚊帳の内へ入った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
今までは、期限が来るごとに、幾度も幾度も証書の書換をした。そのために、証書の金額は、年一年えて行ったものゝ、うにか遣繰やりくりは付いていた。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
こうして、このむらに、床屋とこやが二けんでありましたうちは、まだ無事ぶじですみましたけれど、ふいに、もう一けんあたらしい、おなじような床屋とこやえたのであります。
五銭のあたま (新字新仮名) / 小川未明(著)
柳吉は白い料理着に高下駄たかげたといういきな恰好で、ときどき銭函ぜにばこのぞいた。売上額がえていると、「いらっしゃァい」剃刀屋のときと違って掛声も勇ましかった。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
自分の子達は何れも人並すぐれて立派な出世を遂げ、幸福な内に益々ます/\その進むべき道に発展してゐる。可愛い孫の数も十位を以て数へなければならない程にえた。
(新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
「どうもやはり北海道米はなあえが悪るうて。したら内地米の方に……何等どこにしますかなあ」
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
以前から、東京への往き帰りに、時々仙台で下車しては、小宮こみやさんのところで一泊して休ませてもらって来ることがあった。南画が始まってからは楽しみが一つえた。
南画を描く話 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
その後重ねて教を乞ひにと行く度々鳥籠は一ツ二ツときたりてその年の冬には六畳の間の片隅一間の壁に添ひて繍眼児の籠はさながら鳥屋の店の如く積重ねらるる事二
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
家の中には急に種々なものがえてきた。幾代と兼子との夢想は実現されていった。兼子の身体も肥ってきたようだった。彼女の膝の前には、美しい友禅模様の布が並んだ。
子を奪う (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
『薬が足りないのだろうよ、今夜あたりお神さんにそう言って二合もやしておもらいな。』
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
手廻りの道具もえた。新吉がどこからか格安に買って来た手箪笥や鼠入ねずみいらずがツヤツヤ光って、着物もまず一と通りそろった。保険もつければ、別に毎月の貯金もして来た。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
こうしてありあまる仕事のあるうえ、エチエネットにはまた一つ、看護婦かんごふの役がえた。
しかし、鶴子は子供らしい秘密をもつとやして行つた。拡げて行つた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
きたないとか、綺麗きれいだとかえたとか、減ったとかいうが、それはつまり個々の事物にとらわれ、単に肉眼によって見る、差別の偏見から生ずるのであって、高処に達観し、いわゆる全体的立場に立って
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
ごふ権衡はかりは公園にお茶屋ちやゝりまして、其処そこ据付すゑつけてりますが、みなさんがぼく地獄ぢごくてから体量えたなどゝつてよろこんでります、浄玻璃じやうはりの鏡は、ストウブをきますうへかざつてあります
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
月給がえるからといつておもちやママ投げ出したくはないんだ
玩具の賦:昇平に (新字旧仮名) / 中原中也(著)
電車の新しい線路だけでも大変えていますからね。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
高みゆく砥石といしの響——鈍刀なまくらえゆくすべり——
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そして夏蚕の掃立をうんとやすことにした。
夏蚕時 (新字旧仮名) / 金田千鶴(著)
彼の本陣はこの二寺をあわせ用い、刻々にえる軍勢を、附近の長洲から大物の浦までたして、十一日はここで過した。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それも葉書で済ませる場合にはなるべく簡単に。それだけ書くべき手紙の数が一方にはえて来た。一日かかって何通となく書くことはめずらしくない。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのうち仕事の関係で彼は盛場裏の酒場や露次奥の喫茶店に足を踏み入れることが急にえて来た。
火の唇 (新字新仮名) / 原民喜(著)
女給さんになってから黒子はいつの間にかえて三つになったので、君江さんは後援者が三人できるのだろうと、内心喜んだり気をんだりしているという事が書いてあった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
こういうわけで、わたしが鉱山こうざんに下りて行くあいだ、マチアとカピが町はずれへ出かけて、音楽と芝居しばい興行こうぎょうをして、それでわたしたちの財産ざいさんやすという、やくそくができあがった。
いたずらにえた髪のしもでもなく、欠伸あくびをしてつくった小皺こじわでもない。
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そのから、そらに、金色きんいろあたらしいほしが一つえました。
めくら星 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三吉はあらたに妹が一人えたことをめずらしく思った。読書の余暇には、彼も家のものの相手に成って、この妹を款待もてなそうとした。お雪は写真の箱を持出した。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ふたりの髪には、はや白いものがえていた。信玄が死んでから後、急にそれは目立っていた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから僕は東京と広島の間を時々往復しているが、僕の混乱と僕の雑音はえてゆくばかりなのだ。僕の中学時代からの親しい友人が僕に何にも言わないで、ぷつりと自殺した。
鎮魂歌 (新字新仮名) / 原民喜(著)
ある日、私が見舞に行くと、急に白髪のえた頭を持あげ、いろんなことをしゃべった。
廃墟から (新字新仮名) / 原民喜(著)
こうした人の噂は節子の小さな胸を刺激せずには置かなかった。諸方ほうぼうから叔父の許へ来る手紙、にわかにえた客の数だけでも、急激に変って行こうとする彼女の運命を感知させるには充分であった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
長浜ながはまの町には、灯のかずが夜ごとのようにえてゆく。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
新しい家屋がえるばかりだ。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)