)” の例文
それはであった。長いくちばしの上の方の黄ろい古怪な形をした水禽は、境内の左側になった池にでも棲んでいるのか人に恐れなかった。
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
背嚢ルックザックから乾麺麭かんパンの包みを取りだすと、てのひらの中でこなごなにくだき、たいへん熟練したやりかたでつばといっしょに飲みにしてしまう。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
の眼たかの眼で再び函の中を調べ始めたのであったが、ちょうど木乃伊ミイラの足許に当る部分あたりから、さまざまのものが現れ始めた。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
少なくとも昔話によくいうからすの真似をさせようとする類の新技術の輸入が、永くその効果を挙げ得なかったことは明らかである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
死体にはの毛で突いた程の外傷もなく、鬱血うっけつも、斑紋はんもんも、苦悶の跡も無いばかりでなく、毒物で殺したという疑も絶対にありません。
葬送行進曲 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
水しやくひの娘は、いた玉子たまごを包みあへぬ、あせた緋金巾ひがなきん掻合かきあわせて、が赤いうおくわへたやうに、みよしにとぼんととまつて薄黒い。
光籃 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その時はもう彼女はの毛で突いた程もスキのない無垢の処女らしい態度にかわって、つつましやかに眼を伏せているのであった。
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その森の梢にはたくさんのさぎが棲んでいるが、かん三十日のあいだは皆んな何処へか立ち去って、寒が明けると又帰って来る。
半七捕物帳:68 二人女房 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ところが河井から京都の朝市の事を聞き、早朝の市日を熱心にあさった。商人がの目たかの目であさった後に吾々のような素人が行くのである。
もし身共みどもの鳥ならば、すぐに其処へ渡るのぢやが、……しかしあの講師も阿弥陀仏には、広大無辺くわうだいむへんの慈悲があると云うた。
往生絵巻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
東の池に船などをけて、御所の飼い役人、院の鵜飼いの者に鵜をろさせてお置きになった。小さいふななどを鵜は取った。
源氏物語:33 藤のうら葉 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「ははは、そいつアよかった。さんざん、金時計をに呑ませておいて、一網ひとあみに、吐き出させるなんて、警察も抜け目がない」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初めのうちオーベルは、牧師とヴァトレー氏との学殖や上品な態度に気圧けおされて、彼らの会話をのみにしながら黙っていた。
大昔から何度となく外国文化を模倣しのみにして来た日本にも、いつか一度は光琳こうりんが生まれ、芭蕉ばしょうが現われ、歌麿うたまろが出たことはたしかである。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ソコデもって中津の有志者すなわち暗殺者は、金谷かなやう処に集会をもよおして、今夜いよ/\しまに押掛けて福澤を殺すことに議決した、その理由は
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
途中あまり雨が激しくなったので養魚場の土堤で、ポプラの並木の下でたたずんだ。養魚場の広い池に、が水にもぐっては魚を喰べているのを見た。
それを今日までの毛ほども感づかれないようにしていた幼い者の心づかいが、いじらしくも不憫ふびんでもある一方、あまりのことに小面憎こづらにくい心地さえした。
蓼喰う虫 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかもその際ヒルミ夫人は、その温容なマスクの下から、夫万吉郎の容姿や挙動について、の毛をついたほどの微小なことにも鋭い観察を怠らなかった。
ヒルミ夫人の冷蔵鞄 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
借家主の婆さんは、至って無愛想で、近所の者のことをの目たかの目で探り回るような女だったが、ひそかにジャン・ヴァルジャンの様子をも探っていた。
「歌を詠む参考に水鳥の声をよく聞いときなさい。もう、かもがんも北の方へ帰る時分だから」と言った。
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「さようか、——もう世間が白んで見れば貴様を狙う、の目たかの目は、かえって、視力を失う頃だ。だがそれにしても、あまり危ないことは、せぬがよいぞ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
たとえばついでに長良川へを見に行きたいとか、犬山の提灯祭ちょうちんまつりを見たいとかなんとかいうことであれば、そこは進まないながら、お角さんもぐっと呑込んで
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
何か日本に固有こゆうな思想が一つでもありはせぬかと、の目たかの目で、本邦ほんぽうの制度やら歴史やらを調べると、神道しんとうだけは純粋じゅんすいなる大和やまと民族の思想であることがわかる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しかもそれがの毛ほどもHさんに感づかれてゐないといふ自信は、なんとしても快いものでした。
死児変相 (新字旧仮名) / 神西清(著)
しかし、不思議な事には、全身にわたっての毛ほどの傷もなく、ただ床へ打ち当てた際に、出来たらしい皮下出血の跡が、わずか後頭部に残されているのみだった。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
私は必ずしもこの評判をのみにはしないが、伝統の否定、将棋の場合では定跡の否定、升田七段その人を別に、漠然たる時代的な翹望ぎょうぼうが動きだしているような気がする。
成程なるほど眼で分かる——さもありそうなことだ。の目、鷹の目、掏摸すりの眼、新聞記者の眼、其様そんな眼から見たら、鈍如どんよりした田舎者の眼は、さぞ馬鹿らしく見えることであろう。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこでその海邊の波際なぎさの羽を屋根にして産室を造りましたが、その産室がまだ葺き終らないのに、御子が生まれそうになりましたから、産室におはいりになりました。
一日、一日、僕には、いまのこの世の中の苛烈が、身にしみる。みぢんも、でたらめを許さない。お互ひ、の目、たかの目だ。いやなことだ。いやなことだが、仕方がない。
火の鳥 (新字旧仮名) / 太宰治(著)
京都の中にいて、水の漏れるようなすきの目でさがしつつ、儕輩せいはいを押したおして官位の競望に憂き身をやつした中流公家の心労からは、生れ出ることのない大慈悲心である。
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
私はの目たかの目で、左右の人々に一々眼をくばりながら橋を渡った。けれど玄の姿は一向見当らなかった。嘘を言うはずがないがと不審に思いながら私は橋を一渡りした。
「アレ又引込ひっこんだ、アラ又出た、引込んだり出たり出たり引込んだり、まる水呑みずのみ/\」
の目たかの目油断なく必死となりてみずから励み、今しも一人の若佼わかものに彫物の画を描きやらんと余念もなしにいしところへ、野猪いのししよりもなお疾く塵土ほこりを蹴立てて飛び来し清吉。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
なかにつきて最もやすきは、「ウノノド」ということを三遍唱うべしとなり。これ、は物を丸のみにするものなれば、そのように骨の喉よりただちに下るように祈るの意ならん。
妖怪学 (新字新仮名) / 井上円了(著)
北側はぬまと云う池つづきで、池のまわりは三抱えもあろうと云うくすのきばかりだ。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いえなかのかたづけをおわって、諭吉ゆきちは、おかあさんとめいとをつれて、東京とうきようへかえることになり、ふねにのるため、中津なかつから四キロメートルほど西にししままでいって、宿屋やどやにとまりました。
其処迄そこまでは聞もらしたが兎に角、五年に一度でも、十年に一度でも、斯んな掘出物があるから、愛書家が血眼になったり、蚤取眼のみとりまなこになったり、の目鷹の目になったりするのも無理ではない。
愛書癖 (新字新仮名) / 辰野隆(著)
そして或る時には、からす真似まねをするように、罪人らしく自分の罪を上辷うわすべりに人と神との前に披露ひろうもした。私は私らしく神を求めた。どれ程完全な罪人の形に於て私はそれをなしたろう。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
阿倍あべの島の住む磯に寄する浪なくこのごろ大和しおもほゆ (同・三五九)
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
この現象は五、六年に一回位の割合で起り、鮒に限っているそうであるが、其原因は不明であるという。水鳥も絶えず沼に浮んで居るが、去年は十数羽のが来て、其一羽を網で生擒いけどりしたとか。
尾瀬雑談 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
事実、私はちんちくりんの身体の肩を怒らせひぢを張つて、廊下で行き違ふ新入生のお辞儀を鷹揚おうやうに受けつゝ、ゆるく大股おほまたに歩いた。さうしてたかであらを見出し室長の佐伯に注進した。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
だが、その中でも、恒川氏初め刑事達は、の目たかの目、犯人らしき人物が逃げ出しはせぬかと、一生懸命見張っていたが、ついに鎮火するまで、疑わしき人物さえ発見することが出来なかった。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あのフィリップの言った手形という言葉が、ひどく気になっていたのである。ところが彼女は、そんなことはほども考えてはいない……少なくともわたしには、その時そんなふうに見えたのだ。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
二階の部屋々々をの目たかの目でアラ探しをしてゐたらしい。
黒いの鳥も岩の角には巣喰っている。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
しのゝめやをのがれたる魚浅し
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
反古ほごさへ見ればの目鷹の目。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
の森のあはれにもまた騒がしく
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
振たてゝ柳にちるかがり 林陰
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
磯のの鳥ヤ
雨情民謡百篇 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)