“打(う)” の例文
こんどやってきたら、鉄砲(てっぽう)で打(う)ち殺(ころ)してしまうといっている人(ひと)もあるくらいです。けれど、正(しょう)ちゃんは黒犬(くろいぬ)をかわいがっていました。
僕がかわいがるから (新字新仮名) / 小川未明(著)
ある時(とき)は、隣室(りんしつ)に臥(ね)てゐるKの夫人(ふじん)に搖(ゆす)り起(おこ)されて眼(め)を覺(さ)ましたが、彼女(かのぢよ)にはそれが單(たん)に夢(ゆめ)とばかり、打(う)ち消(け)すことができなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
と言(い)って、あたりを見𢌞(みまわ)した時(とき)の袖子(そでこ)は何(なに)がなしに悲(かな)しい思(おも)いに打(う)たれた。その悲(かな)しみは幼(おさな)い日(ひ)に別(わか)れを告(つ)げて行(ゆ)く悲(かな)しみであった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
黒いおじさんだって、女ひとりが斯(こ)うして駆け込んで来た以上、いざ縄(なわ)打(う)って代官所へなんて、野暮なことを云やあしないでしょう。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
何(なに)なりと訊(たず)ねて貰(もら)います。研究(けんきゅう)の為(た)めとあれば、俺(わし)の方(ほう)でもそのつもりで、差支(さしつかえ)なき限(かぎ)り何(なに)も彼(か)も打(う)ち明(あ)けて話(はな)すことにしましょう。
さうして愛情(あいじやう)の結果(けつくわ)が、貧(ひん)のために打(う)ち崩(くづ)されて、永(なが)く手(て)の裡(うち)に捕(とら)へる事(こと)の出來(でき)なくなつたのを殘念(ざんねん)がつた。御米(およね)はひたすら泣(な)いた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「この尼僧院には私たちのオーリャが居るのよ」とソフィヤ・リヴォヴナは言って、やはり十字を切ったが、その身は打(う)ち顫(ふる)えた。
前を通ろうとして、我にもあらず立淀(たちよど)んだ。散策子は、下衆儕(げしゅうばら)と賭物(かけもの)して、鬼が出る宇治橋(うじばし)の夕暮を、唯(ただ)一騎(いっき)、東へ打(う)たする思(おもい)がした。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ところがだん/\進歩(しんぽ)するに從(したが)つて石塊(いしころ)に多少(たしよう)の細工(さいく)を加(くは)へ、手(て)に握(にぎ)つて物(もの)を打(う)ち壞(こわ)すに便利(べんり)な形(かたち)にこしらへるようになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
と言うを耳にも掛けず、これでも言わねえか/\と二つ三つ続け打(うち)に打(う)たれて、多助は心の中で、情ないとは思いながらもしおらしく
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
偶然、その目的が同じ蜂須賀家にあるのであるから、打(う)ち溶(と)けて話しあってみれば、必ず何か、双方の利となることがあるに違いない。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
今(いま)さらお前(まえ)さんとこの太夫(たゆう)が、金鋲(きんびょう)を打(う)った駕籠(かご)で迎(むか)えに来(き)ようが、毛筋(けすじ)一本(ぽん)動(うご)かすような女(おんな)じゃねえから安心(あんしん)しておいでなせえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そのとき、アッカは首をのばし、つばさを力づよく打(う)って、全速力(ぜんそくりょく)で飛んでいきました。いまこそ、いくべきところがわかったのです。
「まあ/\、何とかそこのところを都合つけてくれ。この通りもう腰が立たないんだから、打(う)っ棄(ちゃ)って置けば凍え死んでしまう」
一年の計 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
樵夫(そま)を僦(やと)ふて僕(ぼく)を索(さが)す、此(この)暗(くら)い溪底(たにそこ)に僕(ぼく)の死體(したい)が横(よこたは)つて居(ゐ)る、東京(とうきやう)へ電報(でんぱう)を打(う)つ、君(きみ)か淡路君(あはぢくん)か飛(と)んで來(く)る、そして僕(ぼく)は燒(や)かれてしまう。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そこでさっそく打(う)ち出(で)の小槌(こづち)を振(ふ)って、そこへ食(た)べきれないほどのごちそうを振(ふ)り出(だ)して、お姫(ひめ)さまと二人(ふたり)で仲(なか)よく食(た)べました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いつかその簾のそとに打(う)ち萎(しお)れていた、若い頭の君の艶な姿が、ふいと私には苦しいほどはっきりと俤(おもかげ)に立ったりするのだった。
ほととぎす (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
天女(てんによ)御空(みそら)に舞(ま)ふが如(ごと)き美音(びおん)は、心(こゝろ)なき壇上(だんじやう)の花(はな)さへ葉(は)さへ搖(ゆる)ぐばかりで、滿塲(まんじやう)はあつと言(い)つたまゝ水(みづ)を打(う)つた樣(やう)に靜(しづ)まり返(かへ)つた。
踊(をど)つて唄(うた)うて渇(かつ)した喉(のど)に其處(そこ)に瓜(うり)が作(つく)つてあるのを知(し)れば竊(ひそか)に瓜(うり)や西瓜(すゐくわ)を盗(ぬす)んで路傍(みちばた)の草(くさ)の中(なか)に打(う)ち割(わ)つた皮(かは)を投(な)げ棄(す)てゝ行(ゆ)くのである。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
特にこのことを感じたのは私が彼と打(う)ち解(と)けようとするときであつた。私の打ち開いた心に對して何等の答へもないのであつた。
彼の顔面には此の一瞬間弱い心の悶(もだ)えと怖れとがあり/\と現はれて見えた。それは其の汽笛の威嚇に打(う)ち克(か)たうとする反抗の色であつた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
お氣(き)の毒樣(どくさま)なこつたが獨活(うど)の大木(たいぼく)は役(やく)にたゝない、山椒(さんしよ)は小粒(こつぶ)で珍重(ちんちよう)されると高(たか)い事(こと)をいふに、此野郎(このやらう)めと脊(せ)を酷(ひど)く打(う)たれて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
本堂(ほんだう)の方(はう)では経(きやう)を読(よ)む声(こゑ)、鉦(かね)を打(う)つ音(おと)もしてゐる。道子(みちこ)は今年(ことし)もいつか盆(ぼん)の十三日(にち)になつたのだと初(はじ)めて気(き)がついた時(とき)である。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風、永井壮吉(著)
さて打(う)っ遣(ちゃ)って置く訳にいかないものですからまずその婦人をよく宥(なだ)めてまあ静かに寝さしてしまうような方法を取りました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
漸々(ぜんぜん)不活溌となり、なおそのままに打(う)っ遣(ちゃ)っておけば、周囲には充分の食物があるとしても、終(つい)には多く分裂したものが全く死滅してしまう。
なるほど猿(さる)が中にはいっておれば、人形がひとりでに踊(おど)るのも不思議(ふしぎ)ではありません。甚兵衛は手を打(う)って面白(おもしろ)がりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
外國市場(ぐわいこくしぢやう)に於(おい)て他國品(たこくひん)と競爭(きやうさう)の位置(ゐち)にある場合(ばあひ)に爲替相場(かはせさうば)の下落(げらく)の爲(た)めに日本品(にほんひん)が競爭(きやうさう)に打(う)ち勝(か)つて多(おほ)く賣(う)れることは時々(とき/″\)經驗(けいけん)した處(ところ)である。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
「おれたちがあいつとけんかをはじめるとする。あいつが切りかかる。すると、ひと打(う)ちで七人やられてしまう。それじゃ、とてもかなわん。」
よつて天のヤスの河を中に置いて誓約(ちかい)を立てる時に、天照らす大神はまずスサノヲの命の佩(は)いている長い劒をお取りになつて三段に打(う)ち折つて
ヂュリ 乳母(うば)を出(だ)してやった時(とき)、時計(とけい)は九(こゝの)つを打(う)ってゐた。半時間(はんじかん)で歸(かへ)るといふ約束(やくそく)。若(も)しや逢(あ)へなんだかも知(し)れぬ。いや/\、さうでは無(な)い。
ね、そら、あの鉄砲(てっぽう)打(う)ちの小さな変な人ね、そしてね、『おい、こんどはも少しよく、粉にして来なくちゃいかんぞ。』
毒もみのすきな署長さん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
とうとう二、三盤(ばん)打(う)つことにした。人間も糟谷(かすや)のような境遇(きょうぐう)に落(お)つるとどっちへむいても苦痛(くつう)にばかり出会(であ)うのである。
老獣医 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
火箸(ひばし)が眞(ま)ッ先(さき)に飛(と)んで來(き)て、それから續(つゞ)いて肉汁(スープ)鍋(なべ)や、皿(さら)や小鉢(こばち)の雨(あめ)が降(ふ)つて來(き)ました。公爵夫人(こうしやくふじん)は、其等(それら)が我(わ)が身(み)を打(う)つをも平氣(へいき)で居(を)りました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
それから今まで借りていた紅矢の着物を返して旧(もと)の通りに着せて、自分は新しい男の着物を着込んで、お婆さんの着物は打(う)っ捨(ちゃ)ってしまいました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作、杉山萠円(著)
其人(そのひと)に問(と)うて見(み)ると、自分(じぶん)の持地(もちち)からは澤山(たくさん)破片(はへん)が出(で)るが、未(ま)だ誰(たれ)も發掘(はつくつ)した事(こと)は無(な)いといふ。然(さ)らば近日(きんじつ)發掘(はつくつ)をさして呉(く)れと其場(そのば)で手金(てきん)を打(う)つた。
しかし、わたしの猫を打(う)つ理由は、彼等の交合に因るのではなく、彼等の騒ぎに因るので、騒がれるとわたしは眠れないからである。わたしは思う。
兎と猫 (新字新仮名) / 魯迅(著)
裂(さ)き捨(す)てられる立禁(たちきん)の札(ふだ)。馘首(かくしゆ)に対(たい)する大衆抗議(たいしうこうぎ)。全市(ぜんし)を揺(ゆる)がすゼネストの叫(さけ)び。雪崩(なだ)れを打(う)つ反(はん)×(15)のデモ。
恐ろしくなりて急ぎ家に帰り入り、門の戸を堅(かた)く鎖(とざ)して打(う)ち潜(ひそ)みたれども、夜通し狼の家をめぐりて吠ゆる声やまず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
が、年輩は彼是(かれこれ)同じ位らしく、それだけ又世間の親分子分よりも、打(う)ち融(と)けた交情が通つてゐる事は、互に差しつ抑へつする盃の間にも明らかだつた。
鼠小僧次郎吉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大江ノ匡衡(まさひら)は、と御尋ねあれば、鋭士数騎、介冑(かいちゅう)を被(こうむ)り、駿馬(しゅんめ)に鞭(むち)打(う)って、粟津の浜を過ぐるにも似て、其鉾(ほこさき)森然(しんぜん)として当るものも無く見ゆ、と申す。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
晴(はら)すべしと其夜近所(きんじよ)合壁(がつぺき)の寢靜(ねしづま)りたる頃藤重が家に忍(しの)び行て見るに是は如何に何程(なにほど)開(ひら)かんとしても戸(と)は釘(くぎ)にて外(そと)より打(う)ち付(つけ)て有ば少しも開(あか)ず内の樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
所謂(いはゆる)敵情偵察(てきじようていさつ)である。敵情(てきじよう)が悉(こと/″\)くわかつたならば、災禍(さいか)をひき起(おこ)すところのかの暴力(ぼうりよく)を打(う)ち碎(くだ)くことも出來(でき)よう。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
過酷な労働が強制され、白人監督に笞(むち)打(う)たれる黒色人褐色人の悲鳴が日毎に聞かれた。脱走者が相継ぎ、しかも彼等の多くは捕えられ、或いは殺された。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
けれど、このシャツのままで打(う)っちゃって置(お)かれないのは、もう目に見えていた。仕方(しかた)なしに箪笥(たんす)をあけて、まだ袖(そで)を通(とお)さない新(あたら)しいシャツをとり出した。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
第一次の帝都空襲に、予想以上の大痛手(おおいたで)をうけた祖国日本は近く第二次の大空襲を、太平洋と亜細亜(アジア)大陸両方面から、挟(はさ)み打(う)ちの形で受けようとしている。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
間(ま)もなく邸宅(ていたく)にいよいよ買(かひ)手がついたといふ話(はなし)が傳(つた)はつて、ラアネフスカヤが悲(かな)しみに打(う)たれて卒倒(そつとう)する塲面(ばめん)となつてくるのであるがその間(あひだ)裏(うら)手からカチン
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
戦場で負傷(ふしょう)したきずに手当てをする余裕(よゆう)がなくて打(う)っちゃらかしておくと、化膿(かのう)してそれに蛆(うじ)が繁殖(はんしょく)する。その蛆がきれいに膿(うみ)をなめつくしてきずが癒(い)える。
蛆の効用 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「そのお拵(こしら)えは——ははあ、雪の日に、尾羽(おは)打(う)ち枯らした御浪人、刀をさした案山子(かかし)という御趣向で、なるほどな、おそれいりました。おそれいりました。」
元禄十三年 (新字新仮名) / 林不忘(著)
お国は二十二三の商売人上がりらしい女ですが、白粉(おしろい)っ気のない、少し打(う)ち萎(しお)れたところなど、お小夜の品の良いのに比べると、恐ろしく仇(あだ)っぽく見えます。
ラランはかう答(こた)へるや否(いな)や、もう、羽(はね)をひろげた。ほかの鴉(からす)たちはペンペを馬鹿(ばか)なやつだと思(おも)ひながらもヱヴェレストの頂上(てうじやう)目指(めざ)して飛(と)びだす元気(げんき)に打(う)たれた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)