)” の例文
のみならずそのおもざしは、円頂僧衣えんちょうそういの姿に変ってこそおれ、い初いしさ、美しさ、朝程霧の道ではっきり記憶に刻んでおいたあのなぞの娘そっくりでした。
ここがすなわち素人のぶなところで、特に田舎出の人々の陥り易いところである。
私の小売商道 (新字新仮名) / 相馬愛蔵(著)
前の洞穴ほらあなの内部。「さん・せばすちあん」は十字架の下の岩の上へ倒れている。が、やっと顔を起し、月明りの落ちた十字架を見上げる。十字架はいつかいしい降誕の釈迦しゃかに変ってしまう。
誘惑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
岸に近づく舟をめがけて飛び立てば、舟子どもから朝食の奉納があり、新婦の竹青はいしく恥じらいながら影の形に添う如くいつも傍にあって何かと優しく世話を焼き、落第書生の魚容も
竹青 (新字新仮名) / 太宰治(著)
豊かにくびれた腰の線や、重たげに張りきった胸のふくらみが白一色に消されて、いつもの陽気で嬌羞きょうしゅうにあふれているかよとはまったくべつな、い初いしく、殆んど清浄な印象を与えるのであった。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
匂やかに、恥じらわしげに、ぞっとい初いしさが泌み入るような風情があるのです。