)” の例文
旧字:
うぬ野狐、またせた。と得三室外へ躍出づれば、ぱっと遁出にげだす人影あり。廊下の暗闇やみに姿を隠してまた——得三をぞ呼んだりける。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それとも、お嬢と、おかみさん、二人へ御婦人ばかりだから、また仕事でもしようというんで様子でも見にせやあがったか。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
晩方せた旅僧めも、その同類、茶店のばばも怪しいわ。手引した宰八も抱込まれたに相違ない。道理こそ化物沙汰に輪をかける。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
何が、この頃のひでりで、やれ雨が欲しい、それ水をくれろ、と百姓どもが、姫様ひいさまのお住居すまい、夜叉ヶ池のほとりへ五月蠅うるさきほどにたかってせる。それはまだい。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
みんな手前達が甘やかされて、可愛がられて、風にもあてず育てられた、それほどの果報にも飽き足らず、にきびの出る時分にはその親になきを見せて、金をつかんで、女をもてあそびにせるためだ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はあ、よもや、とはおもふたが、矢張やつぱなまづめがせたげな。えゝ、らちもない、とけて、また番人ばんにんぢや、と落胆がつかりしたゞが、ばんもう一度いちどく、とつともよるけても、何時いつもかげうつらなんだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)