“估(う)” の例文
然るに二十年後の今日に到っては日本全国ビーヤホールの名を掲げて酒を估(う)る店は一軒もなく、傖父(そうふ)も滑(なめらか)に Café の発音をなし得るようになった。
申訳 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
時を匡(たゞ)し道に順(したが)ひ、仰いで鳳鳴を悲み、俯して匏瓜を嘆ず、之を估(う)りて售(う)れざらんことを恐れ、之を藏めて失はんことを憂ふ、之れ正は即ち正なりと雖も
人生終に奈何 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
老母の手馴(てな)れのまぜめしがよく估(う)れた。若い母親は絶えず子供に気を取られて自分の箸(はし)を持つ暇はなかつた。子供は覚束(おぼつか)ない箸どりで危つかしい碗(わん)の持ち方をして、よく食つた。
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
清河八郎に最も近かった数人を除けば、いずれも腹の減った、物食いのいいやつが多いので、皆估(う)らん哉の人間どもでありましたから、そこからいえば、近藤だっても悪くもいわれない。
話に聞いた近藤勇 (新字新仮名) / 三田村鳶魚(著)
今日は彼岸にや本堂に人数多(あまた)集りて和尚の称名(しょうみょう)の声いつもよりは高らかなるなど寺の内も今日は何となく賑やかなり。線香と花估(う)るゝ事しきりに小僧幾度か箒(ほうき)引きずって墓場を出つ入りつ。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)