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搏
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う
ふりがな文庫
“
搏
(
う
)” の例文
乱れ打つ急調なリズムは、
宛然
(
さながら
)
相
搏
(
う
)
つ白骨の音で、その間を縫う怪奇な旋律は、妖鬼の笑いと、鬼火の閃めきでなくて何んでしょう?
死の舞踏
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
自分や雪子とはちょっと心臓の
搏
(
う
)
ち方の違ったところがある妹なので、まあ、露骨に云えば、全幅的には信用していない点があった。
細雪:02 中巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
すると、何千羽とも知れない
水禽
(
みずとり
)
が、いちどに翼を
搏
(
う
)
って飛び立った。面々の駒は
愕
(
おどろ
)
いて、幾頭かは沼水の深いところへ跳ねこんだ。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
皆まで嘘でなかろう、虎が蝟に制せらるるは昨今聞かぬが
豪猪
(
やまあらし
)
を
搏
(
う
)
つとてその
刺
(
はり
)
に犯され致命傷を受くる事は近年も聞くところだ。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「——
搏
(
う
)
ってるじゃないの、こんなに、ほら、どきんどきんって、——ずいぶん強い
動悸
(
どうき
)
だわ、あたしの手をはね返しそうだわよ」
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
▼ もっと見る
「のう、お前、わしはお前にそう言い聞かせたはずじゃ。」と叔父は、例の二つの凹みのところを微かに脈
搏
(
う
)
たせながら、言った。
二都物語:01 上巻
(新字新仮名)
/
チャールズ・ディケンズ
(著)
ほんの
僅
(
わず
)
かしかなかったにゅうに、これもよく見入るとあたらしくにゅうが五分ばかりふえ、それの走りのするどさに
搏
(
う
)
たれた。
陶古の女人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
しかもこの、
白金
(
プラチナ
)
の神経を持った女を、一目見た時から妖しく胸を
搏
(
う
)
たれた自分自身に、私は狼狽に似た驚きを覚えたのである。
白金神経の少女
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
この間二三度刺客達は、討ち果そうとして走りかかったが、安房守の威厳に
搏
(
う
)
たれたものか、いつも途中で引き返してしまった。
大捕物仙人壺
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
新秋
(
しんしう
)
の
氣
(
き
)
もちいゝ
風
(
かぜ
)
が
簾
(
すだれ
)
を
透
(
とほ
)
して
吹
(
ふ
)
く、それが
呼吸氣管
(
こきうきくわん
)
に
吸
(
す
)
ひ
込
(
こ
)
まれて、
酸素
(
さんそ
)
が
血
(
ち
)
になり、
動脈
(
どうみやく
)
が
調子
(
てうし
)
よく
搏
(
う
)
つ………その
氣
(
き
)
が
味
(
あぢ
)
はへない。
ねこ
(旧字旧仮名)
/
北村兼子
(著)
市内電車の隅の方に、熱心に夕刊を読んでいる鳥打帽の男の横顔に目をそそいだ瞬間、梅本清三の心臓は妙な
搏
(
う
)
ち方をした。
被尾行者
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
このように女性的なスタイルの文章を書いていた私は今、刺すがごとき、
搏
(
う
)
つがごとき攻撃的のポーズで書くようになった。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
昔キリストは
姦淫
(
かんいん
)
を犯せる少女を石にて
搏
(
う
)
たんとしたパリサイ人に対し、汝らのうち罪なき者まず彼女を石にて搏つべしと言ったことがある。
二つの道
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
子路は、虎を
搏
(
う
)
ちそこねて、崖から真逆さまに落ちて行くような気がした。顔渕と閔子騫とは少し伏目になって、自分たちの前の床を見つめた。
論語物語
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
会堂の
隅
(
すみ
)
から隅へ流れわたる時には、自分の身体もそれに運ばれ、翼を
搏
(
う
)
ってあちらこちらと飛び回り、その誘いに身をうち任せるのほかはない。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
豊干禅師
(
ぶかんぜんじ
)
を乗せたお前。
和唐内
(
わたうない
)
に
搏
(
う
)
たれたお前。それからウイルヤム・ブレエクの有名な詩に歌はれたお前。虎よ。お前は最大のコスモポリタンだ。
動物園
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
翼を
脂
(
やに
)
の上に
搏
(
う
)
つべし、我等
頂上
(
いたゞき
)
を棄て岸を楯とし、汝たゞひとりにてよく我等を凌ぐや否やをみん 一一五—一一七
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
諸羽
(
もろはね
)
を
搏
(
う
)
つと、ひらりと舞上る時、緋牡丹の花の影が、雪の
頸
(
うなじ
)
に、ぼっと
沁
(
し
)
みて
薄紅
(
うすくれない
)
がさした。そのまま山の
端
(
は
)
を、高く森の
梢
(
こずえ
)
にかくれたのであった。
灯明之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
とにかく、そのままにして置けば、死線を越すまで体力と角とで
搏
(
う
)
ち合うのであるから素晴らしく豪儀である。
越後の闘牛
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
僕は荒涼たる阿蘇の草原から駆け下りて突然、この
人寰
(
じんかん
)
に投じた時ほど、これらの光景に
搏
(
う
)
たれたことはない。
忘れえぬ人々
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
それを見て、店の男や女もおどろいて、彼らは鶏を叱って追いやろうとしたが、かれは狂えるように
暴
(
あ
)
れまわって、あくまでも女を追い
搏
(
う
)
とうとするのである。
半七捕物帳:51 大森の鶏
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一蝉
方
(
まさ
)
に美蔭を得て而して其身を忘れ、蟷螂
翳
(
かげ
)
を執りて而して之を
搏
(
う
)
たんとし、得るを見て而して其形を忘れ、
異鵲
(
いじゃく
)
従つて而して之を利し、利を得て而して其真を
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
分って見れば何事もなかったが、此の刹那に彼を襲った驚愕の激しさ! はっと胸を
搏
(
う
)
って来るものの強さ! これは凶事の恐るべき予感だったのであろうか………
扉は語らず:(又は二直線の延長に就て)
(新字新仮名)
/
小舟勝二
(著)
満身の力を両の翅に籠めて、五たび六たび空を
搏
(
う
)
つと共に、双翼に風を張って悠揚自在に翔して行く。
黒部川奥の山旅
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
医術の適中 それから脈など見ますとほんの
微
(
かす
)
かに
搏
(
う
)
って居るばかりで、腹の中に手を入れて見ると幾分か
温気
(
あたたまり
)
がある。首筋を持って見ると非常に堅くなって居る。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
些々
(
ささ
)
たる戦況に
一喜一憂
(
いっきいちゆう
)
することなく、
如何
(
いか
)
なる場合にも冷静にがっしりと規則正しく脈
搏
(
う
)
っていたが、しかし極めて
稀
(
まれ
)
には、大いなる
憂
(
うれ
)
い、大いなる喜びのために
偉大なる夢
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
機を設けて胸の前にて繰り
搏
(
う
)
つて飛行す、地より直ぐに
颺
(
あが
)
ることあたはず、屋上よりはうちて出づ。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
瑠璃子は、勝平と相
搏
(
う
)
っている相手が、もしや恋人の直也でありはしないかと思うと、
此
(
こ
)
の一徹の老人が、一気に銃口を向けやしないかと思う心配で、心が怪しく
擾
(
みだ
)
れた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
恐しいのはその精神が溢れているからである。私達を
搏
(
う
)
つのは彫刻上の技巧ではなく、わけてその形ではなく、而もその中に
籠
(
こも
)
って出て来る物凄い
気魄
(
きはく
)
のようなものである。
回想録
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
細くかつ低い声には相違ないが、眠らんとする春の
夜
(
よ
)
に
一縷
(
いちる
)
の脈をかすかに
搏
(
う
)
たせつつある。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
吾々の見えざる触手が感覚の花の盛りを呼びきたすならば、香水の移りゆく香気は、ま
どみ
(
ママ
)
のなかに羽を
搏
(
う
)
つ蝶のごとく、彼方此方に吾々の感情の色どりを植ゑてゆくだらう。
「香水の表情」に就いて:――漫談的無駄話――
(新字旧仮名)
/
大手拓次
(著)
木
(
き
)
の
下
(
した
)
に
徉徜
(
さまよ
)
つてると
何處
(
どこ
)
ともなく
叱
(
し
)
ッと
云
(
い
)
ふ
聲
(
こゑ
)
がしたので、
思
(
おも
)
はず
愛
(
あい
)
ちやんは
後退
(
あとじさ
)
りしました、ト一
羽
(
は
)
の
大
(
おほ
)
きな
鳩
(
はと
)
が
顏
(
かほ
)
に
飛
(
と
)
びついて、
翼
(
つばさ
)
を
以
(
もつ
)
て
激
(
はげ
)
しく
愛
(
あい
)
ちやんを
搏
(
う
)
ちました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
搏
(
う
)
つわ、飲むわ——
博徒
(
ばくと
)
の仲間にはいって、人殺し兇状を重ね、とうとうほんものの泥棒
渡世
(
とせい
)
をかせいで、
伝馬町
(
てんまちょう
)
の大牢でも顔を売り、
遂
(
つい
)
に、
三宅島
(
みやけじま
)
に送られ、そこを破ってからは
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
胸を
搏
(
う
)
って踊って曰く、『余が孫を殺す不義なり。余、天に請うことを得たり』
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
東北地方は既に
厳霜凄風
(
げんそうせいふう
)
に
搏
(
う
)
たれて、ただ見る
万山
(
ばんざん
)
の紅葉は
宛
(
さなが
)
らに
錦繍
(
きんしゅう
)
を
列
(
つらぬ
)
るが如く、
到処秋景惨憺
(
いたるところしゅうけいさんたん
)
として、
蕭殺
(
しょうざつ
)
の気が
四隣
(
あたり
)
に
充
(
み
)
ちている
候
(
こう
)
であった、
殊
(
こと
)
にこの地は東北に師団を置きて以来
雪の透く袖
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
縮毛の大男と、若い水夫とが、野獣のような
唸
(
うめ
)
きを立てて、たちまち、
肉弾
(
にくだん
)
相
(
あい
)
搏
(
う
)
つ
凄
(
すさ
)
まじい格闘をはじめた。
慾
(
よく
)
の深い水夫たちは、二人の勝敗
如何
(
いか
)
にと、
血眼
(
ちまなこ
)
になってこの格闘を見守っている。
怪奇人造島
(新字新仮名)
/
寺島柾史
(著)
よしんば男の手に、産後の脈が
搏
(
う
)
たうと、それはほんの些細な事で……。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
鷲はその強い大きな翼を
搏
(
う
)
つてすさまじい勢で風をきり、たちまちに追ひ付き、その鋭い
爪
(
つめ
)
と
嘴
(
くちばし
)
とで、鶴を突いたり、
蹴
(
け
)
つたりするので、空は鶴の白い羽がとび散り、まるで雪がふるやうでした。
子良の昇天
(新字旧仮名)
/
宮原晃一郎
(著)
次の脈が
搏
(
う
)
つ時に展開し
来
(
きた
)
る事情をば全くアテもなく待つのであった。
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
猶太
(
ユダヤ
)
教奉ずる囚人が、羅馬の
帝
(
みかど
)
の嚴しき仰によりて、大石を引き上げさせられしこと、この平地にて獸を鬪はせ、又人と獸と相
搏
(
う
)
たせて、前低く後高き廊の上より、あまたの市民これを觀きといふ事
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
躍り立ち羽
搏
(
う
)
ち巻き立つ波の穂のあひだに徹り青空のいろ
海阪
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
民族の血潮が胸を
搏
(
う
)
つおれたちのどのひとりが
間島パルチザンの歌
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
すべての呻きが地を
搏
(
う
)
ってゆらめきあがる空
原爆詩集
(新字新仮名)
/
峠三吉
(著)
わが日よ、
高羽
(
たかは
)
焔にめぐり
搏
(
う
)
ちね
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
自然と生物とが同じ脈を
搏
(
う
)
ち
南洋館
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
貫
(
つらぬ
)
く
羽
(
はね
)
を
搏
(
う
)
ち
羽
(
は
)
ぶく
孔雀船
(旧字旧仮名)
/
伊良子清白
(著)
一刀、虎のどこかを
搏
(
う
)
ったが、その
虎尾
(
こび
)
は、李逵の体を、はるかへ叩き飛ばしていた。虎は彼の上へ、腹を見せて、すぐ躍ッてくる。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
まだ少年らしい柔軟な薄い膚であるが、育ちざかりの、新鮮な、活き活きした力の脈
搏
(
う
)
っているのが、その膚の下に感じられた。
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
………あ、リヽーかな、やれ嬉しや! さう思つた途端に動悸が
搏
(
う
)
ち出して、
鳩尾
(
みぞおち
)
の辺がヒヤリとして、次の瞬間に直ぐ又がつかりさせられる。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「鐘の音と鐘の音の間が、八五郎の脈は五十六
搏
(
う
)
つて、俺の脈は六十二搏つ——なんてことを、八丁堀の旦那方が眞面目に聽いてくれると思ふか」
銭形平次捕物控:219 鐘の音
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
搏
漢検1級
部首:⼿
13画
“搏”を含む語句
羽搏
脈搏
相搏
搏風
一搏
龍攘虎搏
搏撃
搏動
搏浪
搏闘
搏絶
脉搏
脈搏計
相搏噬
気搏
搏飯
搏音
搏撠
搏打
搏戦
...