)” の例文
米と塩とは尼君がまちに出できたまうとて、いおりに残したまいたれば、摩耶まやも予もうることなかるべし。もとより山中の孤家ひとつやなり。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四五年経つと家の都合がだいぶん以前とは違って来て、何か些細の仕事でもしなければえそうになるので是非なく中国に帰って来た。
頭髪の故事 (新字新仮名) / 魯迅(著)
真理への思慕 その昔、知識にえた一人の青年がありました。彼は真理の智慧を求むべく、エジプトのザイスという所へ行きました。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
興味も熱心も希望ももっていない——えたる犬の食を求むるごとくにただただ詩を求め探している詩人は極力排斥はいせきすべきである。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
「それにしても、犯人はこんなまねをして、一体どうするつもりだったのかな。え死にするのを待つというのは少し気の永い話だが」
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
一戸の内に普通の労働能力がある限り、そうして不可抗な天災が襲って来ない限り、何人もえに迫られるはずはないのである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
爾後じごうるときは鉄丸をくらい、かっするときは銅汁を飲んで、岩窟がんくつの中に封じられたまま、贖罪しょくざいの期のちるのを待たねばならなかった。
食に飽かしむれば、善良なる有用動物であり、食にやせば、怖るべき悪魔であることの可能性は、犬にのみ限ったものではありません。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかし、戦局は全面的に日本の敗色に傾いている空襲直前の、新緑のころである。噂にしても、誰も明るい噂にえかつえているときだった。
微笑 (新字新仮名) / 横光利一(著)
どこで食っているのか、えているにちがいなかろうが、がつがつしている風も見えない。台所のものなども狙わぬらしい。
黒猫 (新字新仮名) / 島木健作(著)
僕はもう虫をたべないでえて死のう。いやその前にもう鷹が僕を殺すだろう。いや、その前に、僕は遠くの遠くの空の向うに行ってしまおう。
よだかの星 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
こういう場合には家族はえねばならぬか、しからざれば時たまの恵みを当てにして暮す外ないのだということがはっきりわかっているならば
いくら説得しようと努力しても、えきった胃はいっかな満足せず、薄氷うすらいのような疼痛とうつうだけをみなぎらせて、全身に力を供給しようとはしない。
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
くこの間は衣食の安定を得たので、思想を追究するあたかもゆるが如き二葉亭は安心して盛んに読書に没頭した。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
えたる行動は、一気に遂行する勇気と、興味に乏しいから、自らその行動の意義を中途で疑う様になる。彼はこれをアンニュイとなづけていた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それから僕等がゑた時、烈しい食慾を与へてゐる。それから僕等が戦場に立つた時、弾丸を避ける本能を与へてゐる。
今日は珍しく京のどこにも兵火の見えぬのがかえって物足らぬぐらいだ。俺は事にえておる。事がなくては一日半時も生きてはゆけぬと思うほどだ。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
一年ほど前から此邊をねぐらにして居る三十男、のんびりした江戸の世界には、よく斯う言つた屑のやうな人間がゑもこゞえもせずに存在して居たのです。
その夜は山中の旅行にえていた美味、川魚のフライ、刺身、鯉こく、新鮮な野菜、美しい林檎りんご、芳烈な酒、殆んど尽くる所を知らず四人して貪った。
木曽御嶽の両面 (新字新仮名) / 吉江喬松(著)
頼みのかあさん、南辺みなみへんに賃仕事して裏家住み。死んだあとでは袖乞非人そでごいひにんえ死にをなされようかと、それのみ悲しさ
黒髪 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
漂泊する旅人は幾群か丑松のわきを通りぬけた。落魄の涙に顔を濡して、ゑた犬のやうに歩いて行くものもあつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そこで義家よしいえ身方みかた軍勢ぐんぜいひきいて、こんどもえとさむさになやみながら、三ねんあいだわきもふらずにたたかいました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかるに伯夷はくい叔齊しゆくせいこれぢ、しう(三四)ぞくくらはず、首陽山しゆやうざんかくれ、つてこれくらふ。ゑてまさせんとするにおよんでうたつくる。いは
「男持ちの蝙蝠傘こうもりがさを出して下さい。」「草履ぞうりを出して下さい。」「河を渡って桃を見に行くから。」私は必ずしも、男性にえているというわけではなかった。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
えた者の求める正義と、飽いた者の求める正義とは、同じ正義でも、気持の上で大きな開きがあることは、次郎と恭一との場合だけには限られないであろう。
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
雪の少しく積ってある岩の間に小さな草のえて居る所があります。えたる時は食をえらばずではない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
つかまれば目前に食物と寝床は与えられますが、売女宿の食い物となる覚悟がなければなりません。捕まるまいとすればそれと反対に今夜のえをしのぐ工夫もない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おれたち一家がにしかけても、おれはあんな、あさましい買い出しなんかに出掛けやしないのだから、そのつもりでいてくれ。それはおれの最後の誇りなんだ。
雪の夜の話 (新字新仮名) / 太宰治(著)
餌食えじきえた、二匹の野獣をみつめているような気がして、いつもであれば浅間しさに眼をそむけずにはいられないのだが、今の場合、二人の姿がみぐるしく映れば映るほど
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
僕はさいわいにして最初から高い処に居ないからそんな外見みっともないことはしないんだ! 君なんかは主義で馬鈴薯を喰ったのだ、きで喰ったのじゃアない、だから牛肉にえたのだ
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
このごろ、どこのごみをあさっても、あまりものつからないので、都会とかいにすむえたからすたちは、よわとりをいじめてそのにくべることをかんがえついたのでした。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして二人はっていた。妻は気にして時々赤坊を見た。生きているのか死んでいるのか、とにかく赤坊はいびきも立てないで首を右の肩にがくりと垂れたまま黙っていた。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
我子わがこならば親友しんいうもとる、さなくばくびくゝらうと、乞食こじきをせうと、ゑて途上死のたれじにをしをらうとまゝぢゃ、誓文せいもん我子わがことはおもはぬわい、また何一なにひとつたりと、おのれにはれまいぞよ。
これほど邪慳じやけんひとではなかりしをと女房にようぼうあきれて、をんなたましひうばはるればれほどまでもあさましくなるものか、女房にようぼうなげきはさらなり、ひには可愛かわゆをもじにさせるかもれぬひと
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二人して一生懸命に働きましたら、まさかにえるようなことも御座いますまい。先生のお家にこうして居ますればこそ、先生にも奥様にも御心配を懸けて済まぬので御座います。
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
案内者は味噌みその入った握飯を、行く先々で用意し、えをしのぐのだったが、そこまで来るともう安心で、前橋へ入って来たところで、彼は各自の希望をき、ここにとどまるものは
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
なんじらがつるぎえたり汝ら剣に食をあたえよ、人の膏血あぶらはよき食なり汝ら剣にあくまで喰わせよ、あくまで人の膏膩あぶらえと、号令きびしく発するや否、猛風一陣どっと起って
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
蓋し猛虎もゆるが故に他をくわくす、然れども何の日か猛虎の全く餓ゆるなきを得む。
想断々(2) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
え死をまぬかれたわけやが、そこのおばはんいうのが、こらまた随分とうないりん気深い女子おなごで、亭主が西瓜すいか時分になると、大阪イ西瓜売りに行ったまンま何日も戻ってけえへんいうて、大騒動や。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
久吉が暗い台所から持ち出して来た盆からはゑたお幸に涙をこぼさせる程の力のある甘いにほひが立つて居ました。お幸は弟の好意を其儘そのまま受けて物も云はずその焼芋を食べてしまひました。
月夜 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
だんだんその叫び声が自分ながら霜夜に啼くえた野狐の声のような気がされてきて、私はひどく悲しくなってきて、私はそのまま地べたに身体を投げだして声の限り泣きたいと思った。
父の出郷 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
「食べものが無いわ。ゑ死にしておしまひになつてよ。」と彼女は云つた。
そつとさし置たち出しが又立もどり熟眠うまひせし其顏熟々つく/″\打ながめ偶々たま/\此世で親と子に成しえにしも斯ばかりうすちぎりぞ情なし然どなんぢを抱へては親子がつひゑ死に外にせんすべなきまゝに可愛いとし我が子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
終には御自身のももの肉を割愛して、え求むる者に与え去らしめたというが如き、姑息弥縫こそくびほうの解決手段のほかに、この悲しむべき利害の大衝突を、永遠に調和せしむる策を見出し得ざったのであす。
善良なる一日本人として時々は愉快な笑いを誘われるところもある。これをあの実に不愉快にして愚劣なる「洛陽らくようゆ」のごときものに比べるとそれはいかなる意味においても比較にならぬほどよい。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
どうしたもんでしょう、あのままじゃえ死んでしまいます。
イワンの馬鹿 (新字新仮名) / レオ・トルストイ(著)
うえつかれているのだ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
三 まづしけれどもゑず。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
血汐にうるほこさきを
騎士と姫 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
ゑる赤兒の泣き聲を
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)