)” の例文
くわかたげし農夫の影の、橋とともにおぼろにこれにつる、かの舟、音もなくこれをき乱しゆく、見る間に、舟は葦がくれ去るなり。
たき火 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
みんなは、毎日まいにち潮風しおかぜにさらされているとみえて、かおいろが、って、赤黒あかぐろかった。
大きなかに (新字新仮名) / 小川未明(著)
壕水ほりみづつる星影寒くして、松のこずゑに風音すごく、夜も早や十時になんなんたり、立番の巡査さへ今は欠伸あくびながらに、炉を股にして身を縮むる鍛冶橋畔かぢけうはんの暗路を、外套ぐわいたうスツポリと頭からかむりて
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
蚊帳をでてまだ障子あり夏の月、雨戸を開けるでもなく、ただ風の入るばかりの隙間から、体がすっと細くなり、水につる柳の蔭の隠れたように、ふと外へ出て見えなくなりましたと申しますな。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
沈める水につるとき
若菜集 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)