)” の例文
そんな馬鹿な話はないと、学者はてんで受けつけません。避雷針を立てて、落雷が殖えるなんて、およそ有りべからざることです。
科学が臍を曲げた話 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
もうこの上は犯人嫌疑者を引張って来て、その手を犬に嗅がせれば、それが真犯人であるか否かをたちまち鑑別しるのであります。
新案探偵法 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
『市当局の配慮により、我が市は今や、樹木の鬱蒼うっそう繁茂はんもせる公園によって飾られ、炎暑のこうにも清涼の気を満喫しるに至れり。』
ぱう貿易外ぼうえきぐわい受取超過額うけとりてうくわがく毎年まいとしおく六七千萬圓まんゑんあるから大體だいたいおい昨年さくねん海外支拂勘定かいぐわいしはらひかんぢやう受取勘定うけとりかんぢやうつぐなることとなつたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
かくてこれ展望てんぼうをほしいまゝにしたわが郵船ゆうせんはナポリこう到着とうちやくし、ヴェスヴィオを十分じゆうぶん見學けんがく機會きかいとらへられるのである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「さよう、近頃のように卒業生がえちゃ、ちょっと、口をるのが困難ですね。——どうです、田舎の学校へ行く気はないですか」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女かのぢよは、片山かたやま一人ひとりためには、過去くわこの一さいてた。肉親にくしんともたなければならなかつた。もつとも、母親はゝおや實母じつぼではなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
一方を服従させようというのでなく、服従するなら互に真理の前に服従しる立派な人格を養って後に結婚するのが大切でしょう。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
げに治子の姉妹はらからなりと言わんもわれいかでたやすく疑いべき、ことに最初わが方を振り向きし時のまなざしは治子のと少しもたがわず
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「双生児でないとすると、全くの他人で、双生児以上によく似た二人の人間が、この世に存在しるかどうかという問題になるね」
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そのあやふきふんで熊を捕はわづか黄金かねため也。金慾きんよくの人をあやまつ色慾しきよくよりもはなはだし。されば黄金わうごんみちを以てべし、不道をもつてべからず。
かりに西洋の原書を離れて、これにうるに日本流の落語滑稽を以てせんとして、その種類を集めたらばいかなるものをべきや。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
防波堤が無かつたら直ちに印度インド洋の荒海あらうみに面したコロムボは決して今日こんにちの如く多数の大船たいせんを引寄せる良港とは成らなかつたであらう。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
さて最初さいしょ地上ちじょううまでた一人ひとり幼児おさなご——無論むろんそれはちからよわく、智慧ちえもとぼしく、そのままで無事ぶじ生長せいちょうはずはございませぬ。
本物の影で、空想の分子を含む。之に接してる所の感じには何処にか遊びがある、即ち文学上の作品にはどうしても遊戯分子ゆうげぶんしを含む。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
おつぎはけつして卯平うへい滿足まんぞくさせることとはおもはなかつたが、かれべてようといへばかゆにでもいてやらうとおもつたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
次にかかる山間の地において、いかんぞ駅馬車を用ゆることをべき。道路と称すべきものなく、人はただ馬によりて行くのみ。
たとえ敬虔けいけんの意と誠実の態度とにおいてはあえて彼をしのぐことをという能わざらんも人の耳をること多からず人の口と筆とを
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
人間にんげんが一にして、おけらになったというようなことは、ひとりかみだけがり、またこうした奇蹟きせきは、かみだけがよくなしることでした。
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
然うしたら社會の人として、あるひ安楽あんらく生活せいくわつるかも知れない。しかし精神てきには、まつたんで了ツたのもおなじことなんだ!
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
頭脳もまた生活の大きな原動力となりべき時代に到達した。女性は多くを失ったとしても、体力に失ったほどには脳力に失っていない。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
婦人の婚姻に因りてる処のものはおほむね斯の如し。しかうして男子もまた、先人いはく、「妻なければたのしみ少く、妻ある身にはかなしみ多し」
愛と婚姻 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
瓦斯なるために薪炭まきすみの置場を要せず、烟突えんとつを要せず、鍋釜の底のすすに汚れるうれいもなく、急を要する時もマッチ一本にて自在の火力をべし。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
だが、この快楽けらくるには、あの血みどろのレールの上に、呪われたカーヴの上に鋼鉄の列車を操つらなければならなかった。
鉄路 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
猪熊いのくまおじは、老女の救いをると共に、打ち物も何も投げすてて、こけつまろびつ、血にすべりながら、いち早くどこかへ逃げてしまった。
偸盗 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
海より天の吸上ぐる物(諸〻の川これによりてその中に流るゝものを)を返さんとて、その注ぐ處にいたるまで 三四—三六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
屹度私は何時までも彼女等の親切な友達でありるだらう——といふやうなことを屡々雪子は私に云つてゐたが、私には意味が解らなかつた。
熱い風 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
今日こんにちこれ復興ふくこうするをべし、而してその復興ふくこうはうたるや、安楽椅子あんらくいすかゝり、或は柔軟じうなんなる膝褥しつぢよくうへひざまづ如何程いかほど祈祷きたう叫号きうごうするも無益むえきなり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
新渡戸にとべ博士は婦人雑誌の原稿をかく時には、細君の同意をるやうな考へしか書かないさうだが、もつてのほかの不了見である。
なほそのおろかなはゝたいしてそゝぎるだらうか? あゝしもさうだとしたならば——? 彼女かのぢよはたゞ子供こどものために無慾むよく無反省むはんせい愛情あいじやうのために
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
われわれは恐ろしい陰謀いんぼうをたくらみながらも、軽い諧謔かいぎゃくをたのしみるほどに余裕があった。わしは忘れることができない。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
「ムフムフ。変ったにしたところが、一時間十八ノットの船を押し流すような海流が、地球表面上に発生しる理由はないてや」
難船小僧 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
右のうち吹針には武技ぶぎをもって試合することを、また遠駆けには相手方、騎乗きじょう徒歩かちいずれにても随意ずいいたるべきものなり
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしそのおかげで一般消費者は日々のかてに不自由を感ぜざることをる、鉱夫の石炭を採掘するもまた自己の生活のためにほかならざれども
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
『本当に、心から、客を喜んで迎えれば、食べ物や飲み物に奇蹟が起って、どんな粗末なものでも、神の酒となり神の食物となりるのです。』
また例の「君の望むことにてわが力にてできべき限りにおいて言へ」を言ふ。われ曰く「なし」と。このげんはたして、かれの心よりの言葉か。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
いわんやこの海底戰鬪艇かいていせんとうていは、波威はてい沈降ちんかうすること三十フヒート乃至ないし五十フヒートその潜行せんかう持續ぢぞく時間じかん無制限むせいげんであるから、一度ひとたびこの軍艇ぐんてい睥睨にらまれたる軍艦ぐんかん
大兵だいひょうとチビ公、無論敵しべくもない、生蕃はチビ公の横面をぴしゃりとなぐった、なぐられながらチビ公はてぬぐいのはしをにぎってはなさない。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
無我とは結局無内容だ。無内容はくうだ。空な物が膽力どころではない、これから何物をもることは出來ないのだ。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
温雅優麗な貴公子を父として、昔ならばきさきがねともなりる藤原氏の姫君に、歌人としての才能をもって生れてきた。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あるいは支那の独立は望んでべからず、ついに不幸なる最後を見ぬとも限らない。上下四千年の歴史を有する大国家もここに滅亡するかも知れぬ。
されど今さら入らずしてまん心もなければ、後れじものと従いて入るに、下ること二、三十歩にして窟の内やや広くなり、人々立ち行くことを
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
始から高利と名宣なのつて貸すのだから、否な者は借りんが可いので、借りん者を欺いて貸すのぢやない。宮の如き畜生が何で再び人間に成りるものか
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ところもの其人そのひとほねみなすでちたり、ひと其言そのげんのみ君子くんしは、其時そのときればすなは(二)し、其時そのときざればすなは(三)蓬累ほうるゐしてる。
曙覧が清貧の境涯はほぼこの文に見えたるも、彼の衣食住の有様、すなわち生活の程度いかんはその歌によって一層つまびらかに知ることをべし。その歌左に
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
以上いじやう概括がいくわつしてその特質とくしつげると、神佛しんぶつたうといもの、幽靈ゆうれいすごいもの、化物ばけもの可笑おかしなもの、精靈せいれうむしうつくしいもの、怪動物くわいどうぶつ面白おもしろいものとる。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
これを思えば道すなわち道徳はそのせい高くしてそのよう低く、その来たるところ遠くして、その及ぼすところ広く、田夫野人でんぷやじんも守りるものであるらしい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
第四十条 両議院ハ法律又ハノ他ノ事件ニつき各々おのおのノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ採納さいのうヲ得サルモノハ同会期中ニおいふたたヒ建議スルコトヲ得ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
娘は意外に思うらしく慌ててそっと手をいだし、一秒間程相手の手を握る。貴夫人のおのれと握手する事はありべからざるように思いおるゆえ驚きしなり。
手紙は書きをはらずにめたものらしく、引きいた巻紙まきがみと共に文句もんく杜切とぎれてゐたけれど、読みるだけの文字で十分に全体の意味を解する事ができる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)