)” の例文
〔欄外「主客相合うて売買が成立つ。」〕衆生はけようとし、仏は与えようとし、相会うところで摂化済度のことが成るのである。
親鸞 (新字新仮名) / 三木清(著)
もし生はこれ気をけて、しかしてたちまちあり。死はこれ気散じて、しかしてたちまち無ならば、すなわち誰をか鬼神となすや。
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
人間は足腰の立つ間は社会に役立つ有益な仕事をせねばならん天職をけている。それ故早く老い込んではオ仕舞だ。
生を微賤の家にけしにも因るべく、最初に受けし教育にも因るべく、又恆に人の廡下ぶかに倚る境遇にも因るなるべし。
人蟒すなわち慈心を生じ、七たび舎利弗を顧みて、往生昇天したとある。竜気をけて生まれてだにこんなだ。
閼伽あか香華こうげの供養をば、その妻女一人につかさどらしめつゝ、ひたすらに現世げんぜの安穏、後生の善所を祈願し侍り。されども狂人の血をけ侍りし故にかありけむ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
予はもと、父母よりけたる、資質と、しかも自らの修養とに依り、物に動せざる特性は確かに、備へをりたり。この点は人よりも称せられ、また自らもたのみいたりしなり。
一青年異様の述懐 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
人間五十年化転げてんの内をくらぶれば夢幻の如く也、一度ひとたび生をけ滅せぬ物のあるべきか……
桶狭間合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
実に教育の箇条は、前号にも述べたる如く極めて多端なりといえども、早くいえば、人々が天然自然にけ得たる能力を発達して、人間急務の仕事を仕遂しとげ得るの力を強くすることなり。
家庭習慣の教えを論ず (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
耳には子供のアクセントが焼き付いた。目には、曲がりかどの朽ちかかった黒板塀くろいたべいとおして、木部からけた笑窪えくぼのできる笑顔えがおが否応なしに吸い付いて来た。……乳房はくすむったかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
彼の成効せいこうに少なからぬ貢献をもたらしたらしく思われる、社交上きわめて有利な彼のこの話術は、その所有者の天からけた諧謔趣味かいぎゃくしゅみのために、一層派出はでな光彩を放つ事がしばしばあった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
こいねがわくは殿下観覧を賜いて、安寧無為の福をけ給わん事を祈る。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
気を父のたね
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その人の性格の基礎となるべき個性のうちには、先天的の分子、即ち遺伝に依ってけ継いだ性質が多分に含まれている事は学者の証明するところであります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
形に厚くすというは、いわく、ただ祭祀さいしを行うなり。神に薄くすというは、いわく、去識厳しからざるなり。もし仏教をくるときは、すなわち神に厚くして、形に薄くす
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
日本民族の血をけているという自覚だけは持っています。そんな残忍な……恥知らずな……毛唐式の学術の研究や、実験の御厄介になるのは死んでも嫌です。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
根本天理をけ得て生ずるものなれば、死するとひとしく本然にかえるといえる理あれども、一度体をけて霊気のあつまる所あれば、子たるものの哀慕に感じ復するにより
通俗講義 霊魂不滅論 (新字新仮名) / 井上円了(著)
もとより生一本の能楽気質の翁が、こうした能静氏の風格をけ継いだ事は云う迄もない。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
その細胞自身が先祖代々からけ伝えて来た記憶や、その細胞の主人公自身の過去の記憶の中から、手当り次第に喚び起して、勝手気儘に重ね合せたり、繋ぎ合せたりしつつ
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
戦国武士の血を多分にけ継いでいる忠之は、芥屋けや石の沓脱台くつぬぎに庭下駄を踏み鳴らして癇をたかぶらせた。成行によっては薩州と一出入り仕兼ねまじき決心が、その切れ上ったまなじりに見えた。
名君忠之 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
翁にしてもし、元亀天正の昔に生をけていたならば、たしかに天下を聳動しょうどうしていたであろう。如何なる権威にも屈せず、如何なる勢力をも眼中にかない英傑児の名を、青史に垂れていたであろう。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)