)” の例文
この十蔵が事は貴嬢きみも知りたもうまじ、かれの片目はよこしまなる妻が投げ付けし火箸ひばしの傷にてつぶれ、間もなく妻は狂犬にかまれてせぬ。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
百何十年かった今となっては、功業の跡、夢の如くせて、その事蹟じせきは、ドラゴン退治の伝説の英雄となんの選ぶところがない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
再びエレーンと呼ぶにエレーンはランスロットじゃと答える。エレーンはせてかと問えばありという。いずこにと聞けば知らぬという。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わがここに住むもいまだ一とせばかりの事なれば、それよりはるかの昔にせ給ふと見えて、住み給ふ人の一三三ありつる世はしり侍らず。
おんあるひと二年目にねんめせていまあるじ内儀樣かみさま息子むすこ半次はんじはぬもののみなれど、此處こゝ死場しにばさだめたるなればいやとてさら何方いづかたくべき
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
境内の変にからりとして居る訳もこれで合点が行つて、有る可きものがせてゐるのだなと思ひながら、庫裡へと入つた。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
体が冷えて、爪に血の色がせて来ると、医師いしゃがやって来て注射を施した。患者はしばらくのまに渾身みうちが暖まって来た。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
事もなげにこちらに近より、男のすぐ前を通りて何方いづかたへか行き過ぎたり。この人はその折の恐ろしさより煩ひ始めて、久しく病みてありしが、近き頃せたり。
遠野物語 (新字旧仮名) / 柳田国男(著)
あの、厄年の十九を見され、五人、三人一時いっときせるじゃろうがの。死ねば思いが黒髪に残ってその一筋がまた同じ女と生れる、生きかわるわいの。死にかわるわいの。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その遁げる人たちは荷物の山に遮られ、右往左往している中に、片ッ端から荷の山も焼けせて跡は一面に火の海となるという有様……ただ、もう物凄い光景でありました。
「ごらんのごとく、武家屋敷も軒なみ焼けせ、雪之下、塔ノ辻、大町、佐介さすけ、すべてぼうたる焦土でございまする。たまたま残った門や家には、はや諸国の武士が混み入っておりますし」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わが昔崇拜せしアヌンチヤタは今せたり、昔の理想の影は今消えぬ、わがこれを思ふは泉下の人を思ふ如し、さるを若しそのアヌンチヤタならぬアヌンチヤタ又出でゝ、冷なる眼もて我を見ば
小秀は打萎れた姿で路次から消えせた。
きのふの『ねたみ』はせぬ、遺骸なきがらをば
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
噛んでせたのでござりますぞ——
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「衣笠どのがせられた……」
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
あらず、あらず、彼女かれは犬にかまれてせぬ、恐ろしき報酬むくいを得たりと答えて十蔵は哄然こうぜんと笑うその笑声はちまた多きくがのものにあらず。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
境内の変にからりとしている訳もこれで合点がてんが行って、あるべきものがせているのだなと思いながら、庫裡へと入った。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いませたる傘屋かさや先代せんだいふとぱらのおまつとて一代いちだい身上しんじやうをあげたる、女相撲をんなずまふのやうな老婆樣ばゝさまありき、六年前ろくねんまへふゆこと寺參てらまゐりのかへりに角兵衞かくべゑ子供こどもひろふて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
事もなげに此方に近より、男のすぐ前を通りて何方いずかたへか行き過ぎたり。この人はその折のおそろしさよりわずらはじめて、久しくみてありしが、近きころせたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
小田切三也は二年目に急病でせ、小田切家の家督は名実ともに良平が譲り受けました。
百唇の譜 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
をり々あの家にゆきて、せ給ふ人の一三五菩提ぼだいとぶらはせ給ふなり。此の翁こそ月日をもしらせ給ふべしといふ。勝四郎いふ。さては其の翁のみ給ふ家は何方いづべにて侍るや。あるじいふ。
せけむ、おのれその時。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
今はせたる傘屋の先代に太つ腹のお松とて一代に身上をあげたる、女相撲のやうな老婆ばゝさま有りき、六年前の冬の事寺參りの歸りに角兵衞の子供を拾ふて來て
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
太子せたまいければ、太孫をして事に当らしめたまいけるが、太孫もまた寛厚の性、おのずから徳を植えたもうこと多く、又太祖に請いて、あまね礼経れいけいを考え、歴代の刑法を参酌さんしゃく
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わが眠りし間に幸助いずれにか逃げせたり、来たれ来たれ来たれともに捜せよ、見よ幸助は芥溜ごみためのなかより大根の切片きれ掘りだすぞと大声あげて泣けば、うしろより我子よというは母なり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
今はせたる傘屋の先代に太つ腹のお松とて一代に身上しんじやうをあげたる、女相撲おんなすまうのやうな老婆ばばさま有りき、六年まへの冬の事寺参りの帰りに角兵衛の子供を拾ふて来て
わかれ道 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
後にこそ天下の主となりたまいたれ、げん順宗じゅんそう至正しせい四年とし十七におわしける時は、疫病おおいに行われて、御父おんちち御母兄上幼き弟皆せたまえるに、家貧にして棺槨かんかくそなえだにしたもうあたわず
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
母は安兵衛が同胞けうだいなれば此処に引取られて、これも二年ののちはやり風俄かに重く成りてせたれば、のちは安兵衛夫婦を親として、十八の今日まで恩はいふに及ばず
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はゝ安兵衛やすべゑ同胞けうだいなれば此處こゝ引取ひきとられて、これも二ねんのちはやりかぜにはかにおもりてせたれば、のち安兵衞やすべゑ夫婦ふうふおやとして、十八の今日けふまでおんはいふにおよばず
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我が薄井うすゐの家は土地に聞えし名家にて、身はその一つぶもの成りしも、不幸は父母はやくせて、他家ほかに嫁ぎし伯母の是れも良人をつとを失なひたるが、立帰りて我をばおほしたて給ひにき
雪の日 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たヾ一人ひとりありしいもとれと非常ひじやうなかよかりしが、いませてなにもなき、そのいもと姉樣ねえさま正寫そつくりにて、いま在世あらばとこひしさへがたく、お前樣まへさま姉樣ねえさまなればれにはいもとやうおもはれて
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
目鼻めはなだちの何處どこやらが水子みづこにてせたる總領そうりやうによくたりとて、いまはなきひとなる地主ぢぬし内儀つま可愛かあいがられ、はじめはお大盡だいじん旦那だんなたつとびしひとを、父上ちゝうへぶやうにりしは其身そのみ幸福しやわせなれども
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
目鼻だちの何処どこやらが水子みづこにてせたる総領によく似たりとて、今はなき人なる地主の内儀つま可愛かあいがられ、はじめはお大尽の旦那とたつとびし人を、父上と呼ぶやうに成りしはその身の幸福しやわせなれども
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)