)” の例文
時候が次第に寒くなって、お玉の家の流しの前に、下駄で踏むところだけ板が土にめてある、その板の上には朝霜が真っ白に置く。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
それはわたしの家の接ぎ目を割ったので、そのための空気洩れをとめるためにその後多くの倦怠けんたいをもってめられなければならなかった。
これは制限されたスペースの中に所定の字数をめなければならないという制約から生れた美しさだ。工藝ではしばしば不自由が美を自由にさせる。
台湾の民芸について (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
最後は俺の智恵をかりにくるばかりさ、と納まつてゐたが、世の中はさういふものではない。昨日までの青二才が穴をめ立派にやつて行くものだ。
二流の人 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
牛屋ぎゅうやのちゃぶ台の真中まんなかへ丸く木をめてあろうという組織であるのに、お座料がまた必ずしもお安くない。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その空間を彼女のしなやかな感触でめたかった。彼は、虚脱したようにシートの背にもたれた。
その一年 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
あに今人ノ韻ヲヒ字ヲメテややモスレバ千百言ヲ成スノ比ナランヤ。韓昌黎かんしょうれいハ硬語横空。元微之げんびし玉磬ぎょっけいノ声声ニシテ徹シ金鈴ノ箇箇円ナルヲ以テ二ナガラつらネテコレヲ称ス。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
魯西亜ロシアと日本は争わんとしては争わざらんとしつつある。支那は天子蒙塵てんしもうじんはずかしめを受けつつある。英国はトランスヴㇵールの金剛石を掘り出して軍費の穴をめんとしつつある。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
点々とその窪洞うろめながら、ギザギザに尖っている輪廓を、無数に空に投げ掛けている。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
「戯談と聞かれちゃまらない、こう言出すまでにはどの位苦しんだと思いなさる」
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
われらは落懸おとしがけのうしろや、花活の周囲や、違い棚の下などをめている闇を眺めて、それが何でもない蔭であることを知りながらも、そこの空気だけがシーンと沈み切っているような
陰翳礼讃 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それから靴の中底を引き出した。それから靴のかかとめてある、きたない綿を引き出した。綿には何やらくるんである。それを左の手に持って、爺いさんは靴を穿いた。そして身を起した。
橋の下 (新字新仮名) / フレデリック・ブウテ(著)
それよりゃアその金を借金方へめて精出し、働らいてもうけた銭で買った着物を着て往かなけりゃアならねえと思って居りやす、旦那え不思議なことにゃアお浪が此の頃神信心かみしんじんを始めやした
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
用なきくぼみをばめ、いらぬすきまをば塞ぎ、上に草をけば、家すでに成れり。我牧者の家は丘の上にありて兩層あり。せばき戸口なるコリントスがたの柱は、當初墳墓を築きしときの面影なるべし。
衆人力を一つにして、急いでその穴をめに往く。
その中の一人が涼を求めて観の背後に出ると、土を取った跡らしい穴の底に新しい土がまっていて、その上に緑色に光るはえが群がり集まっていた。
魚玄機 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それに対処する方法は、親しんで狎れず、といふことで、一定の距離を置き、その距離を礼節でめる方法だつた。
我鬼 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
十分間じつぷんかん七十五輌しちじふごりやうあへ大音寺前だいおんじまへばかりとははない。馬道うまみちくるままつた。淺草あさくさはうくはしことは、久保田くぼたさん(まんちやん)にくがい。……やま本郷臺ほんがうだい
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あの二人にとって生活とは、それぞれの退屈をかぎりなくめていく行為でしかないのだ。
愛のごとく (新字新仮名) / 山川方夫(著)
幸子はところどころ想像で穴をめながら聞いて行かなければならなかった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
はだへの皺は繁くして、縮めたる網の如し。黒き瞳はまぶちめん程なり。
しかもその箱の半以上を、茶褐色の背革の大きい本三冊が占めていて、跡は小さい本と雑記帳とでまっている。三冊の大きい本はごく新しい。薄暗い箱から、背革に記してある金字が光を放っている。
二人の友 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
暮しの穴をめて貰つたのに氣が附いては、好い顏はしない。
高瀬舟 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
目貫の穴は二つあって、一つは鉛でめてあった。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)