)” の例文
その人ならず、善く財を理し、事を計るに由りて、かかる疎放の殿をいただける田鶴見家も、さいはひ破綻はたんを生ずる無きを得てけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
先輩に聞けば一口にして知り得べき者を数月数年の苦辛くしんを経て漸く発明するが如きは、ややに似たれどもなかなかに迂ならず。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
もってベンサムの眼中に国境なきことを推知することが出来る。人あるいはこの論を読んでベンサムのわらう者もあらん。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
そして、忠平公も、あんな暢気のんきなお方だから、おれが仕えていることも、ッかりしておいでになるのかもわからない。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世間の道義は之に対して声を励まして正邪を論ず、何ぞなるの甚しき。文化は人に被らすに数葉の皮を以てす、之を着ざれば即ち曰く、破徳なりと。
窮理きゆうりけつしてなるにあらず実践じつせんなんあさしと云はんや。魚肴さかな生臭なまぐさきがゆゑやすからず蔬菜やさい土臭つちくさしといへどもたふとし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
同じ汽車にて本庄ほんじょうまで行き、それより児玉こだま町を経て秩父に入る一路は児玉郡よりするものにて、東京より行かんにははなはだしくなるが如くなれども
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
夜の空気を揺るがせて余音の嫋々を伝うるとき寒灯の孤座に人知れず泣く男の女房に去られてと聞いてもそのを嗤うよりは、貰い泣きするが情だ。
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
孔子に面と向ってずけずけと「これあるかな。子のなるや!」などと言ってのける人間は他に誰もいない。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
かつであったということには私の敬して近づけられていない或点からもある。(よいことではないが)
「イヤ、時期を待っていたのです。かつにしゃべっては、却て相手に用心させるばかりですからね」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
また議論の質を表現するのが目的であるにかかわらず、量的にくどくどと細箇条を説明せねばならぬ。それが私に不得手な事であるのみならず、私自身の表現としてははんとに堪えない。
鏡心灯語 抄 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
僕はむしろ諸君のを笑いたいと思う、かくいわば君達は例に依って僕を攻撃なさるかと存ずるが、僕はまた僕だけに自信がある、君達もとっくに御承知であろう、かのアルキメヂスという男は
太陽系統の滅亡 (新字新仮名) / 木村小舟(著)
安兵衛は心のうちで、これはかつな談議はつつしまなければならないと思った。細井広沢は或る事情があって、くに一党の真意を知っている人なのだ。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかるに文学者とも言はるるほどの学者が団十だんじゅう菊五きくごなどを相手にして演劇の改良を説くに至つては愚と言はうかと言はうか実にその眼孔の小なるに驚かざるを得ない。(六月十八日)
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
……アア、成程、成程今までそこへ気がつかぬとは、僕は何というかつ者だ。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
云えば云えぬでは無いが、そんななことを馬鹿正直に云うよりも、相手の推しを其儘そのままにいなせて、「如何にも」と云ったまま少時しばらく考えたが、たちまち思い得たところがあったか薄笑いして、成程
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
聞けば、衛府えふやからは、おれたちのわらい、自分らの手でってみせるといいおるそうな。——意地でもある。盛遠は、この手で、とらえてみせたいところだ。
いくさ奉行長崎は、かつではなかったのである。ひょっとしたら、千早を陥すいい智恵を持ちあわせている者かもしれず、ばあいによっては、軍師とあがめて利用してもいい。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
たたんで上げると、何ともいえない嫌な匂いがするので——オヤ、死人しびと臭い——とっかり云ったら、お師匠様が、きっと私を見て、黙っていろ、と恐い眼をしてこう仰っしゃったんですよ
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ほかのお方はともかく、武蔵様だけは、かつに遊廓の外へ出られませぬぞ」
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世に生きとし生ける雑多な人間——どん、お天気、軽薄、付焼刃つけやきば、いかなる凡才にせよ、何かの役に立たないという者はなく、何か一面の特性をもたないという者はないけれど
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう誰も、かつな顔や、鼻の先で聞いているような態度は改めた。
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、彼は敢えてそのを取った。まず領民を総結するためである。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
呂布はさん臭い顔して、その男の風采ふうさいを黙って見つめていた。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、かえって、左右の人びとのを、笑われた。
道誉は、兼好のかつさを、また笑って
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
施薬院はそのわらうように
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)