)” の例文
唯ここに不思議なことは、金蔵は右の足に踏み抜きをして、それがだんだんにんで来て、ひと足も外へ出られないと云うのです。
半七捕物帳:64 廻り灯籠 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
玄一郎は傷がんだりして、それから夏いっぱい休み、ようやく治って、起きられるようになったときは、もう秋風が立ちはじめていた。
いさましい話 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
庖丁ほうちょうやナイフで手をった時塩を塗っておく代りにお砂糖の固まりを押付けて疵口きずぐちへよく浸み込ませておけばむような事はありません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
曲者の体は、そのために業病ごうびょうのように腫れあがって、やぶれた傷口は柘榴ざくろの如くみ、そこから白い骨が見えるほどだった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
顔のどの部分と言わずかゆい吹出ものがして、み、れあがり、そこから血が流れて来た。おさえがたく若々しい青春のうしおは身体中をけめぐった。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私が取手とりでという小さな町に住んでいたとき、私の顔の半分がれ、ポツポツと原因不明のみの玉が一銭貨幣ぐらいの中に点在し、もっとも痛みはないのである。
いずこへ (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
その間も、寅二郎の疥癬しつは、少しもえないばかりでなく、どれもこれも、無気味に白くんでしまった。
船医の立場 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
肥溜こえだめ桶があった。いたちの死骸がりんの色にただれて泡をかぶっていた。桶杓ひしゃくんだ襤褸ぼろの浮島に刺さって居た。陀堀多はその柄を取上げた。あたり四方へ力一ぱい撒いた。
百喩経 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
折れてくるか怒鳴りこんで来るかと待ちかまえていたが、んだともつぶれたとも、なんの音沙汰おとさたもない。藤五郎のほうでは拍子ぬけがして呆気あっけにとられる始末だった。
顎十郎捕物帳:18 永代経 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
その代りマッチ工場独特の骨壊疽こつえそにかかった老人や、歯齦はぐきが腐って歯がすっかり抜け落ちてしまった勤続者や、たびたびの火傷やけどに指がただれんで、なりっぽのように
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
満面ただれて見る蔭もないその老婆は! 重症も重症二目と見られぬ癩病やみの、その老婆は!
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
色々と調べられたが、乃公はんだとも潰れたとも言わなかった。其中そのうちに校長はくしゃみを始めた。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
見たところではれてもんでもいないので、何処が痛むのか分らないのであるが、疾患部は左脚のひざの辺から爪先つまさきまでであるらしく、寝返りを打っても、はだにそうっと触っても
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それは崇高というよりも、寧ろ汚穢おわいで、調和的というよりも、寧ろ乱雑で、その一つ一つの曲線と、そこにただれた百花の配置は、快感よりは一層限りなき、不快を与えさえします。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わしのけがをしたことは、全く他の人たちにとっては些細ささいなことなんだろう。だが、それやあまり不人情だろうと思われる。ことに、私の足はんでしまって、痛くてたまらないんだ。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
誇張こちょうしていえば、その時豹一の自尊心は傷ついた。また、しょんぼりした。はずかしめられたと思い、性的なものへの嫌悪けんおもこのとき種を植えつけられた。敵愾心てきがいしんは自尊心の傷からんだ。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
邑宰は先例に従って厳重に期限を定めて督促した。成はその期限を十日あまりも遅らしたので、その罰で百杖たたかれて、両股の間がみただれ、もういって虫を捉えることもできなくなった。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
彼れは毎日毎日小屋の前に仁王立におうだちになって、五カ月間積り重なった雪の解けたためにみ放題に膿んだ畑から、恵深い日の光に照らされて水蒸気の濛々もうもうと立上る様を待ち遠しげに眺めやった。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
んじゃったらしいんです。」その人はそう云う私の顔をいかにも情けなさそうな顔をして見て、その箇所を指で押して、「これが悪いんだな、切ってとっちまうか。」そんなふうに云った。
その人 (新字新仮名) / 小山清(著)
「もうんでいる。これは痛いでしょう。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
胸はまたみてつぶれぬ。
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
「山淵父子の謀叛むほんなら、なおりかけた腫物はれものが、また少しみ出したまでのことじゃ。自然にふっきれるまでほうっておけ」
新書太閤記:02 第二分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実施させたき下心ありて熱心なり「中川君、君の話によるとたくみにさえればあときになおるようだがその疵口がんだりれたりして病気になる事はないかね」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
例のとりに突かれたり蹴られたりした幾カ所の疵がんで熱を持って、こんにちで云えば何か悪い黴菌ばいきんでもはいったんでしょう、ようよう這って歩くような始末なので
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
すぐ医者にもみせ、骨ぎにもかよわせて、いちおう治ったようにみえたのに、四十日ばかり経つと太腿の折れた部分がみだし、それがみるまに脱疽だっそというものになって、死んでしまったのである。
追いついた夢 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
黒熱こくねつただ
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
足の裏の傷がんでいるのだった。それゆえにきょうは馬の背を借りて歩いているものとみえる。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
死んで石とってしまったかのように、武蔵はいつまでも動かなかった。体の内からはんでふくれ上がった患部が火のような脈を打ち、体の外からは十二月の夜の寒気がひしひしと肌を刺した。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)