哀音あいおん
——汽車の窓にて 夏の日の午さがり、 我が汽車は物憂げに 黒き煙を息吹きつゝ、 炎天の東海道を西へ馳す。 世ゆゑ、はたわれからの 黒熱に膿み爛れ、 灰汗の洪水の胸底の 政の庁を失ひし 病人なれば、天地の 眺望ことごと灰濁みて、 あゝうたてし …