)” の例文
そうして、水はこれらの石の間を潜り、上を辷ってねる。細いしわが網を打ったようにひろがる。さざ波は綱の目のように、水面に織られる。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
こうして弥生も半ば過ぎた頃、飛騨の高原をねりくねって洋々と流れる高原川の流域の砂地へ辿たどり着いた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
露営地の外では、細長い爬行はこう動物——この谷の主——東俣の川——が、ねりながら太古の森林の、腐れ香にむせんで、どこまで這って行くことであろう。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
白い小山をねらした雪田が三稜角形に、へららされたようになって、五、六町もつづいている、自分が従来見た雪田というのは、多少の凸凹たかひくがあるにしても
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
眼下には上河内かみこうちの峡流が林の中を碧くねり、ところどころに白い洲に狭められて、碧水が白い泡を立てて流れている、風がさやさやと森を吹き抜いたかとおもうと
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
S字状にねっている、私の足音につれて、石がコロコロと崩れ落ちる、壁一重を隔てて、ざわざわがらがらと、滝のたぎり落ちるような音がする、嘉代吉を振りかえって聞くと
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
大沢が、濶く、峡間に延びて、峡流の分岐したのが、幾筋となくねり、枯木が、踏み砕かれた、肋骨のようになって、何本も仆れている。水に漂流したまま、置いて行かれたのであろう。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
焼岳などの下をねり、四山環峙かんじの中を南の方、島々に出て、また北に向いて走るので、アルプス山圏を半周することになる、川を隔てた八右衛門岳は、霧雨の中から輪廓だけをあらわす
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
前面にはおかのような山が二つ、小隆起をしている、赤沢岳頂上の三角点も、大空を指さしている、谷は次第に高くなる、高くなると共にまって来て、雪のねり方も、波のように烈しいが
槍ヶ岳第三回登山 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
糢糊もこの間にきて游ぶにあらざるかを疑ふ、三浦半島と房総と、長虫の如くねりて出没す、武甲の山は純紫にして、蒸々たる紅玉の日、雲の三段流れにみ入りて、眩光げんくわうを斜に振り飛ばすや
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)