)” の例文
初めて商売に出て、その男を知った時のことなどが、情味にえているような浅井の耳に、また新しく響いた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
如何いかんとなれば本人は元来きず持つ身にして、その気すでえたるが故に、大節に臨んで屈することなきを得ず。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
暴徒に襲われるのはこれが始めてではなかったが、この時は最も困窮におちいった。糧道りょうどうが絶たれ、一同火食せざること七日におよんだ。さすがに、え、つかれ、病者も続出する。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「私はこれを持って、毎日市へ出てまいりまして、毎日幾等かの金を取って、それであわを買って、一家十余人がえずこごえずにくらしております。これにうえ越す宝がありましょうか。」
王成 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
〔譯〕靈光れいくわう障碍しやうげ無くば、則ち乃ち流動りうどうしてゑず、四體したいかるきをおぼえん。
気がえきって来ると、笹村はそっとにげるように宿の門を出た。足は自然に家の方へ向いた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
お銀が勝手の方でといで来た米を入れた行平ゆきひらを火鉢にかけて、かゆを拵えていると、子供は柔かい座蒲団のうえに胡坐あぐらをかいて、健かなえを感ずる鼻にうまい湯気を嗅ぎながら待っていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)