“撃(う)” の例文
さて、屋根(やね)の上(うへ)に千人(せんにん)、家(いへ)のまはりの土手(どて)の上(うへ)に千人(せんにん)といふ風(ふう)に手分(てわ)けして、天(てん)から降(お)りて來(く)る人々(ひと/″\)を撃(う)ち退(しりぞ)ける手(て)はずであります。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
(これは、不意討だった。前に、覗っている奴が見つかったなら、撃(う)たれはしまい。謙信は、鉄砲ぐるみ、兵を斬った事さえある)
近藤勇と科学 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
上から頭を出せばすぐ撃(う)たれるから身体(からだ)を隠して乱射したそうだ。それに疲れると鉄砲をやめて、両側で話をやった事もあると云った。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いまは疑いの余地もない。大将尊氏の胸にあるものは、その搦(から)め手(て)の敵軍を、不意に、真上(まうえ)から撃(う)ち下ろすにあったにちがいない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで出雲の國におはいりになつて、そのイヅモタケルを撃(う)とうとお思いになつて、おいでになつて、交りをお結びになりました。
さては、射的場で、兎(うさぎ)を撃(う)ったことも、十仙出して本物のインディアンと腕角力(うでずもう)をしたことも、マジック・タアオンの鏡の部屋で——。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
柳生藩(はん)の人達は、江戸で二手に別れて、壺をはさみ撃(う)ちにしようというのです。日光御造営に大金のいる日は、刻々近づいてくる。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
乃(すなわ)ち剣を提(ひっさ)げて、衆に先だちて敵に入り、左右奮撃す。剣鋒(けんぽう)折れ欠けて、撃(う)つに堪(た)えざるに至る。瞿能(くのう)と相(あい)遇(あ)う。幾(ほと)んど能の為に及ばる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
船長はポーチにいて、用心深く騙(だま)し撃(う)ちをやられても中(あた)らぬところにいるようにしていた。彼は振り向いて私たちに言った。——
わが將來(ゆくすゑ)の事につきて諸〻のいたましき言(ことば)を聞きたり、但し命運我を撃(う)つとも我よく自らとれに堪(た)ふるをうるを覺ゆ 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
これ最も危険なる最も愉快(ゆかい)なる場合にしてこの時の打者の一撃(いちげき)は実に勝負にも関すべく打者もし好球を撃(う)たば二人の廻了(ホームイン)を生ずることあり
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
虫も蛙となり、蛇となって、九ツ十ウに及ぶ頃は、薪雑棒(まきざっぽう)で猫を撃(う)って殺すようになった。あのね、ぶん撲(なぐ)るとね、飛着くよ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これを聴ける時、妾は思わず手を扼(やく)して、アアこの自由のためならば、死するもなどか惜しまんなど、無量の感に撃(う)たれたり。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
かくて互(たが)ひに衝(つ)いつ撃(う)っつの折(をり)から、おひ/\多人數(たにんず)馳加(はせくは)はり、左右(さいふ)に別(わか)れて戰(たゝか)ふ處(ところ)へ、領主(との)が見(み)えさせられ、左右(さう)なく引別(ひきわけ)と相成(あひな)りました。
鴫を撃(う)つのはこれが初めてだ。彼は以前に、父の猟銃で、鶉(うずら)を一羽殺し、鷓鴣(しゃこ)の羽根をふっとばし、兎を一匹捕(と)り損(そこな)った。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
それが彼を撃(う)った烈しさは、後に彼があの恐ろしい殺人罪を犯すに至った、最初の動機が、実にこの笑いにあったと云っても差支ない程であった。
虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そんなことをして、うろついていると、狩人(かりゅうど)に撃(う)たれてしまいますよ。それよりここに、もうしばらく待(ま)っておいでなさい。やがて鶏(にわとり)が鳴(な)く時分(じぶん)です。
ものぐさなきつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
「昨夜(ゆふべ)の鐵砲は、柱に當つた彈丸(たま)の樣子から見ると、屋根の上か、庭の松の木の上か、廊下の向うにある、納戸の二階から撃(う)つたとしか思はれないが」
先生はまるで雷(らい)に撃(う)たれたように、口を半ば開(あ)けたまま、ストオヴの側へ棒立ちになって、一二分の間(あいだ)はただ、その慓悍(ひょうかん)な生徒の顔ばかり眺めていた。
毛利先生 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
お前の阿父(おつとさん)は此の秩父(ちゝぶ)の百姓を助けると云ふので鉄砲に撃(う)たれたのだが、お前の量見は其れよりも大きいので、如何(どんな)災難が湧(わ)いて来ようも知れないよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
駿州(すんしゅう)清見寺内(せいけんじない)に石碑(せきひ)あり、この碑は、前年幕府の軍艦咸臨丸(かんりんまる)が、清水港(しみずみなと)に撃(う)たれたるときに戦没(せんぼつ)したる春山弁造(はるやまべんぞう)以下脱走士の為(た)めに建てたるものにして
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
若(も)し室内(しつない)にて前記(ぜんき)の如(ごと)き條件(じようけん)の場所(ばしよ)もなく、又(また)は廊下(ろうか)に居合(ゐあは)せて、兩側(りようがは)の張壁(はりかべ)からの墜落物(ついらくぶつ)に挾(はさ)み撃(う)ちせられさうな場合(ばあひ)に於(おい)ては、室(しつ)の出入口(でいりぐち)の枠構(わくがま)へが
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
世間の人は何でも新しい肉がいいと思って今日撃(う)った獲物をその日に料理する事がありますけれどもあれでは肉の味がなくって何の御馳走にもなりません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
弾は撃(う)ち人(て)以上に慌てて飛んでもない方角へ逸(そ)れて往つた。すると直ぐ後(うしろ)から江川がずどんと口火をきつた。猪は急所を撃たれてその儘平伏(へたば)つてしまつた。
ある時、トラが何ものかと相対(あいたい)し貌(がお)に、芝生に座(すわ)って居るので、覗(のぞ)いて見たら、トグロを巻いた地もぐりが頭をちゞめて寄らば撃(う)たんと眼を怒らして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
われは此詞を聞きて、さきに包み藏(かく)して告げざりしサンタとの最後の會見の事を憶ひ起しつ。現(げ)に我頭を撃(う)ちて我夢を醒ましゝは、尊き聖母の御影なりき。
彼は用意の吹矢を取り出すなり、狙(ねら)い撃(う)ちに彼女の咽喉(のど)へ射放(いはな)った。果して、あの致命傷(ちめいしょう)であったのだ。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ふと小姓の一人が、あれが撃(う)てるだろうかと言い出したが、衆議は所詮(しょせん)打てぬということにきまった。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
他の二頭の佐渡牛が小屋の内へ引入れられて、撃(う)ち殺されたのは間も無くであつた。斯の可傷(いたま)しい光景(ありさま)を見るにつけても、丑松の胸に浮ぶは亡くなつた父のことで。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
追(お)へども撃(う)てども敵(てき)も強者(さるもの)、再(ふたゝ)び寄(よ)する七隻(しちせき)の堅艦(けんかん)、怒濤(どたう)は逆卷(さかま)き、風(かぜ)荒(あ)れて、血汐(ちしほ)に染(そ)みたる海賊(かいぞく)の旗風(はたかぜ)いよ/\鋭(するど)く、猛(たけ)く、此(この)戰(たゝかひ)何時(いつ)果(は)つ可(べ)しとも覺(おぼ)えざりし時(とき)。
白鹿(はくろく)は神(かみ)なりという言(い)い伝(つた)えあれば、もし傷(きず)つけて殺すこと能(あた)わずば、必ず祟(たたり)あるべしと思案(しあん)せしが、名誉(めいよ)の猟人(かりうど)なれば世間(せけん)の嘲(あざけ)りをいとい、思い切りてこれを撃(う)つに
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
すなわち羊皮を席上に置かしめ、杖をもってこれを撃(う)つ。塩屑(えんせつ)出(い)ず。薪を負う者すなわち罪に服す
ケンプ博士(はくし)は、まだ破(やぶ)られていない三つ目の窓(まど)に目をはしらせると、ピストルをぶっ放(ぱな)した。ガラスはたまに撃(う)ちぬかれてひび割れ、三角状(かくじょう)の破片(はへん)となって内側へ落ちた。
起(き)を撃(う)つの徒(と)、呉起(ごき)を射刺(せきし)するに因(よ)つて、并(あは)せて悼王(たうわう)に中(あ)つ。悼王(たうわう)既(すで)に葬(はうむ)られて、太子(たいし)立(た)つ。乃(すなは)ち(一一〇)令尹(れいゐん)をして盡(ことごと)く呉起(ごき)を射(い)て并(あは)せて王(わう)の尸(し)に中(あ)てし者(もの)を誅(ちう)せしむ。
新たな敵を見てとったとらは、らんらんたる目をいからし、大口あけてふりむきざまに富士男をめがけて、ひと撃(う)ちとばかりつかみかかった。ドノバンはそのすきにのがれた。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「ダー、ダー、ダー、ダー、ダースコダーダー。」それから、大人(おとな)が太鼓(たいこ)を撃(う)ちました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「したけりゃ告訴するがいい! 一足だってそこを動いたら! 撃(う)ってしまうから! お前は奥さんを毒殺したじゃないか、わたしはちゃんと知ってる、お前こそ人殺しだ……」
その当時、直(ただ)ちに梁(はり)に撃(う)たれ、直ちに火に焚(や)かれたものは、勿論悲惨の極みである。
九月四日 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
僧異(あや)しと見て、六四枕におきたる禅杖(ぜんぢやう)をもてつよく撃(う)ちければ、大きに叫んでそこにたふる。この音に六五主(あるじ)の嫗(うば)なるもの灯(あかし)を照し来るに見れば、若き女の打ちたふれてぞありける。
初めは湖畔(こはん)に出て侵略者(しんりゃくしゃ)を迎(むか)え撃(う)った彼等も名だたる北方草原の騎馬兵(きばへい)に当りかねて、湖上の栖処(すみか)に退いた。湖岸との間の橋桁(はしげた)を撤(てっ)して、家々の窓を銃眼(じゅうがん)に、投石器や弓矢で応戦した。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
物置きに投げ込んであった喇叭(ラッパ)銃に煙硝と鹿撃(う)ちのばら玉をあふれるばかり詰め込み、藁(わら)をたたいて詰めをし、窓の隙間から筒口を出して昨夜(ゆうべ)幽霊が退場した雑木林の入口に見当をつけ
「しかし、女に親切にして、撃(う)たれたという話はまだ聞かんよ。それより君はどうなんだ。あの秋蘭は素晴しい美人だが、毎日あの女を使っているくせに、まさか金仏(かなぶつ)でもないだろう。」
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
嫌だなと思うほど、女を撃(う)ち融(とろ)かす分量のものをもっている。女は生れ付きの女の防禦心から眼をわきへ外らした。しかし身体だけは、ちょっと腰を前横へ押出して僅かなしなを見せた。
富士 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
その本流と可児(かに)川の合(がっ)するところ、急奔(きゅうほん)し衝突し、抱合し、反撥する余勢は、一旦(いったん)、一大鉄城(てつじょう)のごとく峭立(しょうりつ)し突出する黒褐(こっかつ)の岩石層の絶壁に殺到し、遮断されて水は水と撃(う)ち、力は力と抗(さから)い
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
裸(はだか)の薄青い岩から、緑の波のたぎり飛ぶ白い飛沫(しぶき)から、黒い広野の微動だにしない夢想から、雷に撃(う)たれた檞(かしわ)の樹の悲哀から、凡てそれ等のものから我々の理解し得る人間的のものを作り来り
言(い)はさずに置(おく)く物(もの)かと三五郎(らう)を取(とり)こめて撃(う)つやら蹴(け)るやら、美登利(みどり)くやしく止(と)める人(ひと)を掻(か)きのけて、これお前(まへ)がたは三ちやんに何(なん)の咎(とが)がある、正太(しようた)さんと喧嘩(けんくわ)がしたくば正太(しようた)さんとしたが宜(よ)い
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
丁々と相撃(う)つ音は恐しい程であり、竹の羽板はピシャンピシャンと響き渡ったが、もっとも撲った所で怪我は無い。福沢氏は、有名な撃剣の先生の子息である一人の学生に、私の注意を向けた。
自分は一切智者でありながら殊(こと)に日本の僧に遇って置きながら、後で日本人であるということが知れたからといってその知人を罰するということは出来ぬ訳だ。実に好い所から柔かにうまく撃(う)った。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
篠懸(すゞかけ)の葉は翼(つばさ)撃(う)たれし鳥に似て次々に黒く縺れて浚はれゆく。
詩集夏花 (新字旧仮名) / 伊東静雄(著)
かれの手は恐らくわが頭を撃(う)ちたるならむ。
呼子と口笛 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)