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失
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う
ふりがな文庫
“
失
(
う
)” の例文
そのほの暗い車室の中に、私達二人丈けを取り残して、全世界が、あらゆる生き物が、
跡方
(
あとかた
)
もなく消え
失
(
う
)
せてしまった感じであった。
押絵と旅する男
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
平次の言葉を静かに聴き入っているうちに、お町の眼の色が次第に力が
失
(
う
)
せて顔には死の色がサッと
刷
(
は
)
かれているではありませんか。
銭形平次捕物控:150 槍の折れ
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ゴンゴラ総指揮官が
真赤
(
まっか
)
になって金博士の方に振返った時には、既に博士の姿は卓上の酒壜と共に、かき消すように消え
失
(
う
)
せていた。
独本土上陸作戦:――金博士シリーズ・3――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「大事の前の小事、そんな者に当り散らしているひまに、離れの奴が蜂須賀家の
侍
(
さむらい
)
と知ったら、風を食らって逃げ
失
(
う
)
せぬとも限らぬ」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼方
(
かなた
)
の
山背
(
やまかげ
)
からぞろ/\と
現
(
あら
)
はれて
來
(
き
)
たが、
我
(
わ
)
が
鐵車
(
てつしや
)
を
見
(
み
)
るや
否
(
いな
)
や
非常
(
ひじやう
)
に
驚愕
(
おどろ
)
いて、
奇聲
(
きせい
)
を
放
(
はな
)
つて、
向
(
むか
)
ふの
深林
(
しんりん
)
の
中
(
なか
)
へと
逃
(
に
)
げ
失
(
う
)
せた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
▼ もっと見る
いかに多くの輝かしい眼がくもり、いかに多くの柔かい頬に血の気が
失
(
う
)
せ、いかに多くの美しい姿が墓の中に消えていったことか。
傷心
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
「ばかばかしい。
早
(
はや
)
く
死
(
し
)
んで
失
(
う
)
せろ。いくらでもおまえがたの
代
(
か
)
わりは
生
(
う
)
まれてくるわ。」と、
幹
(
みき
)
は
体
(
からだ
)
を
震
(
ふる
)
わして
怒
(
おこ
)
ったのであります。
葉と幹
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
それからは、
一言
(
ひとこと
)
も話さなかったような気がします。ふたりは、まもなくその広間を出て行きました。
夕暮
(
ゆうぐれ
)
の
薄明
(
うすあか
)
りが消え
失
(
う
)
せました。
絵のない絵本:01 絵のない絵本
(新字新仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
士族
気質
(
かたぎ
)
のマダ
失
(
う
)
せない大多数の語学校学生は突然の廃校命令に不平を
勃発
(
ぼっぱつ
)
して、何の
丁稚
(
でっち
)
学校がという勢いで商業学校側を
睥睨
(
へいげい
)
した。
二葉亭四迷の一生
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
前の
仁王門
(
におうもん
)
の
大提灯
(
おおじょうちん
)
。大提灯は次第に上へあがり、前のように
仲店
(
なかみせ
)
を見渡すようになる。ただし大提灯の下部だけは消え
失
(
う
)
せない。
浅草公園:或シナリオ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
私の書架は貧しくて何も目ぼしいものはなく、辛うじてその真淵書入の『古今集』ぐらいが最上等のものであったのに、それも
失
(
う
)
せた。
三筋町界隈
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
生活の連鎖や、過去の悲しみや、未来の懸念や、彼らの心中に積もってきた
嵐
(
あらし
)
など、すべて他のことは、消え
失
(
う
)
せてしまっていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
ロレ さうした
過激
(
くわげき
)
の
歡樂
(
くわんらく
)
は、とかく
過激
(
くわげき
)
の
終
(
をはり
)
を
遂
(
と
)
ぐる。
火
(
ひ
)
と
煙硝
(
えんせう
)
とが
抱合
(
だきあ
)
へば
忽
(
たちま
)
ち
爆發
(
ばくはつ
)
するがやうに、
勝誇
(
かちほこ
)
る
最中
(
さなか
)
にでも
滅
(
ほろ
)
び
失
(
う
)
せる。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
天下に何一つ消え
失
(
う
)
するものは無うして、ただその瞬間、その瞬く者にのみ消え失すると知らば、我等が世にあることを
怪
(
あやし
)
むまい。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私
(
わたくし
)
が
自身
(
じしん
)
で
持参
(
じさん
)
したのはただ
母
(
はは
)
の
形見
(
かたみ
)
の
守刀
(
まもりがたな
)
だけで、いざ
出発
(
しゅっぱつ
)
と
決
(
きま
)
った
瞬間
(
しゅんかん
)
に、
今
(
いま
)
まで
住
(
す
)
んで
居
(
い
)
た
小屋
(
こや
)
も、
器具類
(
きぐるい
)
もすうっと
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せ
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
いずれはさりともと思うてまた河を廻りて西に着くほどに、河の中にて力
竭
(
つ
)
きて空しく流れ
失
(
う
)
せぬ、心多き物は今生後生ともに叶わぬなり
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
竜騎兵中尉も消え
失
(
う
)
せたようにいなくなった。いつも盛んな事ばかりして、人に評判せられたものが、今はどこにいるか、誰も知らない。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
『何だ。この
餓鬼
(
がき
)
め。人をばかにしやがるな。トマト二つで、この大入の中へ
汝
(
おまえ
)
たちを
押
(
お
)
し
込
(
こ
)
んでやってたまるか。
失
(
う
)
せやがれ、
畜生
(
ちくしょう
)
。』
黄いろのトマト
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
語りやんだHさんはさも誇らしげな目つきで、じろじろ千恵の顔を観察してゐました。もちろん千恵の唇には血の気が
失
(
う
)
せてゐたでせう。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
この最後の一首は、
磯辺
(
いそべ
)
病院で
失
(
う
)
せられた
枕
(
まくら
)
もとの、手帳に書きのこされてあったというが、末の句をなさず
逝
(
ゆ
)
かれたのだった。
九条武子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
隅田川の風景によって偶然にもわが記憶の中に
蘇
(
よみがえ
)
り
来
(
きた
)
った遠い過去の人物の
正
(
まさ
)
に消え
失
(
う
)
せんとするその
面影
(
おもかげ
)
を
捉
(
とら
)
えたに過ぎない。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
已
(
や
)
むなく帰省して見れば、両親は
交々
(
こもごも
)
身の老衰を打ち
喞
(
かこ
)
ち、家事を監督する気力も
失
(
う
)
せたれば何とぞ
家居
(
かきょ
)
して万事を処理しくれよという。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
ナオミがじいッと視線を据えて、顔面の筋肉は微動だもさせずに、血の気の
失
(
う
)
せた唇をしっかり結んで立っている邪悪の
化身
(
けしん
)
のような姿。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
焼け
失
(
う
)
せた函館の人もこの卑い根性を真似ていた。札幌の人はあたりの大陸的な風物の静けさに圧せられて、やはり静かにゆったりと歩く。
初めて見たる小樽
(新字新仮名)
/
石川啄木
(著)
碧瑠璃
(
へきるり
)
の大空に
瞳
(
ひとみ
)
ほどな黒き点をはたと打たれたような心持ちである。消えて
失
(
う
)
せるか、溶けて流れるか、
武庫山
(
むこやま
)
卸
(
おろ
)
しにならぬとも限らぬ。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
あの
涙
(
なみだ
)
の
池
(
いけ
)
で
泳
(
およ
)
いでからは
何
(
なに
)
も
彼
(
か
)
も
變
(
かは
)
つたやうで、
硝子
(
ガラス
)
洋卓
(
テーブル
)
も
小
(
ちひ
)
さな
戸
(
と
)
のあつた
大廣間
(
おほびろま
)
も
全
(
まつた
)
く
何處
(
どこ
)
へか
消
(
き
)
え
失
(
う
)
せて
了
(
しま
)
ひました。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
二人は底知れぬ谷に
墜
(
お
)
ち
失
(
う
)
せたり。
千秋万古
(
せんしゅうばんこ
)
、ついにこの二人がゆくえを知るものなく、まして一人の
旅客
(
たびびと
)
が情けの光をや。
詩想
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
すでに、そういう占う男の言葉によらなくとも、何か気負うた生絹の眉や眼の奥にも、
難波
(
なにわ
)
の土の匂いはとうに
失
(
う
)
せていた。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
仰向
(
あおむい
)
て
瞻
(
み
)
る
蒼空
(
あおぞら
)
には、
余残
(
なごり
)
の色も何時しか消え
失
(
う
)
せて、今は一面の青海原、星さえ
所斑
(
ところまだら
)
に
燦
(
きらめ
)
き
出
(
い
)
でて
殆
(
と
)
んと
交睫
(
まばたき
)
をするような
真似
(
まね
)
をしている。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
あなたのお顔には何か肝心なもの——なんといったらいいかしら——まあ命の水気——光といったようなものがすっかり
失
(
う
)
せてしまったわね。
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
姿は見えなくなっても私の眼の前から、今の二人の姿だけは消え
失
(
う
)
せないのです。なんという、人魚のような
婀娜
(
あで
)
やかさだろうと思いました。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
あとはもう言うべきことのすべてが
失
(
う
)
せて姉妹のように手をとり合わぬばかり、泣いて泣いて、泣きつくせぬ両人であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
その子の
失
(
う
)
せし後、彼は再び唯継の子をば生まじ、と固く心に誓ひしなり。
二年
(
ふたとせ
)
の
後
(
のち
)
、
三年
(
みとせ
)
の後、
四年
(
よとせ
)
の後まで
異
(
あやし
)
くも宮はこの誓を全うせり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
これも小僧に見させたるに門の
外
(
そと
)
にて見えずなりしかば、驚きて和尚に語り、よく見ればまた茶は畳の間にこぼしてあり、老人はその日
失
(
う
)
せたり。
遠野物語
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
夏の
夜
(
よ
)
の快さが、
忽
(
たちま
)
ち消え
失
(
う
)
せて、灰色の、物悲しい景色になった。夜の明方になって、急に秋が来て、美しい幻の影を破ってしまったのである。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
尾津の
前
(
さき
)
八
の一つ松のもとに到りまししに、先に、
御食
(
みをし
)
せし時、
其地
(
そこ
)
に忘らしたりし
御刀
(
みはかし
)
、
失
(
う
)
せずてなほありけり。ここに御歌よみしたまひしく
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
さては
渡
(
わたし
)
の狐であつたのかと、旅人は合点して、小判を火にあてましたところ、めらめらと焼け
失
(
う
)
せてしまひました。
狐の渡
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
われわれが馬の介抱に気をとられて、夢中になって騒いでいるうちに、
彼女
(
かれ
)
は何処へか消え
失
(
う
)
せてしまったらしい。
水鬼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
昔、伊勢の国のある山寺の小僧、ふと
失
(
う
)
せて見えなくなり、一両日を過ぎて堂の上におるを見つけ、これを引きおろして見るに、全く正気を失いいたり。
迷信解
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
黙祷
(
もくとう
)
や合掌こそしないが、どうみても抱えであった時分からの気習が
失
(
う
)
せず、子供たちの騒々しさや晴れやかさの中で、どこかちんまりした物静かさで
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
あの人は芝居というものを信用しないで、いつもわたしの夢を
嘲笑
(
ちょうしょう
)
してばかりいた。それでわたしも、だんだん信念が
失
(
う
)
せて、気落ちがしてしまったの。
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
消滅する事物の
塗抹
(
とまつ
)
のうちにも、消え
失
(
う
)
する事物の縮小のうちにも、哲学はすべてを認知する。ぼろを再び
緋衣
(
ひい
)
となし、化粧品の破片を再び婦人となす。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
「まァようがす。とっとと
消
(
き
)
えて
失
(
う
)
せろッてんなら、あんまり
畳
(
たたみ
)
のあったまらねえうちに、いい
加減
(
かげん
)
で
引揚
(
ひきあ
)
げやしょう。——どうもお
邪間
(
じゃま
)
いたしやした」
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
私は5+5を
羽左衛門
(
うざえもん
)
がやると100となったり、
延若
(
えんじゃく
)
がやると55となったり、
天勝
(
てんかつ
)
がやると消え
失
(
う
)
せたりするような事を
大
(
おおい
)
に面白がる
性分
(
しょうぶん
)
なのである。
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
そこへ下男の佐吉も
蓑
(
みの
)
と
笠
(
かさ
)
とで
田圃
(
たんぼ
)
の見回りから帰って来て、中津川の大橋が流れ
失
(
う
)
せたとのうわさを伝えた。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
竿も二
間
(
けん
)
ばかりしかなくて、誰かのアガリ竿を貰いか何ぞしたのであろうか、穂先が穂先になってない、けだし頭が三、四寸折れて
失
(
う
)
せて
終
(
しま
)
ったものである。
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
しかし側面から眺めると、この原始の肉体は
忽
(
たちま
)
ち消え
失
(
う
)
せて植物性の柔軟な姿に変ってしまう。胸が平板で
稍々
(
やや
)
猫背であるため
体躯
(
たいく
)
が柔い感じを帯びてくる。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
梶は高田とよく会うたびに栖方のことを
訊
(
たず
)
ねても、家が焼け
棲家
(
すみか
)
のなくなった高田は、栖方についてはもう興味の
失
(
う
)
せた答えをするだけで、何も知らなかった。
微笑
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
漁夫二 (俊寛を突きやり)
失
(
う
)
せろ、流人め。二度とこんなまねをしやがったら、生かしてはおかないぞ。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
暴食の
癖
(
くせ
)
なども
殆
(
ほとん
)
ど
失
(
う
)
せたせいか、健康もずっと増し、二十
貫目
(
かんめ
)
近い体に
米琉
(
よねりゅう
)
の
昼丹前
(
ひるたんぜん
)
を
無造作
(
むぞうさ
)
に着て
岡本一平論:――親の前で祈祷
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
失
常用漢字
小4
部首:⼤
5画
“失”を含む語句
失敗
失策
過失
紛失
失錯
失望
大失策
失笑
失礼
失敬
消失
紛失物
失踪
失禮
喪失
見失
遺失
茫然自失
大失敗
失念
...