トップ
>
憂
>
う
ふりがな文庫
“
憂
(
う
)” の例文
その驚き方は、長男の庄次郎が
板新道
(
いたじんみち
)
の女に
憂
(
う
)
き
身
(
み
)
をやつしているのを発見した時の場合などとは、比較にならないほど大きかった。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
阿蘇に登るのももの
憂
(
う
)
い。計画を中止して、ここでじっと待とうか。そうしたいのだが、女指圧師が駅で待っているかも知れない。
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
彼を思ひ是を思ふに、身一つに
降
(
ふ
)
りかゝる
憂
(
う
)
き事の露しげき
今日
(
けふ
)
此ごろ、瀧口三
衣
(
え
)
の袖を絞りかね、
法體
(
ほつたい
)
の
今更
(
いまさら
)
遣瀬
(
やるせ
)
なきぞいぢらしき。
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
その
他
(
ほか
)
多くの者の名を彼一々我に告ぐるに、彼等皆名をいはるゝを厭はじとみえ、その
一者
(
ひとり
)
だに
憂
(
う
)
き
状
(
さま
)
をなすはあらざりき 二五—二七
神曲:02 浄火
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
また心
憂
(
う
)
き事
侍
(
はべ
)
りき、その大臣の娘
座
(
おわ
)
しき、
色
(
いろ
)
容
(
かたち
)
愛
(
めで
)
たく世に
双人
(
ならぶひと
)
なかりき、
鑑真
(
がんじん
)
和尚の、この人千人の男に逢ひ給ふ相
座
(
おわ
)
すと
宣
(
のたま
)
はせしを
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
▼ もっと見る
剰
(
あまつさ
)
え大阪より附き添い来りし巡査は皆
草津
(
くさつ
)
にて交代となりければ、
切
(
せ
)
めてもの顔
馴染
(
なじみ
)
もなくなりて、
憂
(
う
)
きが中に三重県津市の監獄に着く。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
いいえ、
勿体
(
もったい
)
ないより、
済
(
す
)
まないのはあたしの
心
(
こころ
)
。
役者家業
(
やくしゃかぎょう
)
の
憂
(
う
)
さ
辛
(
つら
)
さは、どれ
程
(
ほど
)
いやだとおもっても、
御贔屓
(
ごひいき
)
からのお
迎
(
むか
)
えよ。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
園が出ていった戸口の方にもの
憂
(
う
)
い視線を送りながら、このだだ広い汚ない家の中には自分一人だけが残っているのだなとつくづく思った。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ワツと泣き
洩
(
も
)
る声を無理に制せる梅子は、ヒシとばかり銀子を
抱
(
いだ
)
きつ、燃え立つ二人の花の唇、一つに合して、
暫
(
し
)
ばし人生の
憂
(
う
)
きを逃れぬ
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
岩瀬肥後も今は
向島
(
むこうじま
)
に
蟄居
(
ちっきょ
)
して、客にも会わず、号を
鴎所
(
おうしょ
)
と改めてわずかに好きな書画なぞに日々の
憂
(
う
)
さを慰めていると聞く。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
道教は浮世をこんなものだとあきらめて、儒教徒や仏教徒とは異なって、この
憂
(
う
)
き世の中にも美を見いだそうと努めている。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
鳥沢
(
とりざわ
)
も過ぐれば猿はし近くにその夜は宿るべし、
巴峡
(
はきよう
)
のさけびは聞えぬまでも、
笛吹川
(
ふゑふきがは
)
の響きに夢むすび
憂
(
う
)
く、これにも
腸
(
はらわた
)
はたたるべき声あり
ゆく雲
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ただ、故主を慕う有王だけは、俊寛の最期を見届けたく、千里の旅路に、
憂
(
う
)
き
艱難
(
かんなん
)
を重ねて、鬼界ヶ島へ下ったのである。
俊寛
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
私は店先に腰かけて黙って見ていたが小さな女の子までも同じ
憂
(
う
)
き目に逢ってワアッと泣いて行くのを
可哀
(
かわい
)
そうに思った。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
それにも、うきねといふ
言葉
(
ことば
)
に
憂
(
う
)
きといふ
厭
(
いや
)
な、
情
(
なさけ
)
ない
悲觀
(
ひかん
)
すべき
意味
(
いみ
)
の
言葉
(
ことば
)
が、
音
(
おん
)
から
感
(
かん
)
じられる
習慣
(
しゆうかん
)
になつてゐます。
歌の話
(旧字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
それで五平を叩っきりそこなうと、すぐその場から、おさらばをきめて、それからはお定まりの、
憂
(
う
)
き
艱難
(
かんなん
)
というやつさ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
女は針の手をやめると、もの
憂
(
う
)
そうに顔を挙げて見せた。
眉
(
まゆ
)
の迫った、眼の切れの長い、感じの鋭そうな顔だちである。
母
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
則重がおめ/\捕われの身となって生き耻を
曝
(
さら
)
しながら、敵の城中に
憂
(
う
)
き年月を送っていた心事については、あまり
腑甲斐
(
ふがい
)
なく思われるけれども
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それにあの気まぐれなもの
憂
(
う
)
さこそ、ああいう陰気な人柄にはぴったりするように思える、と思いきって言いだした。
幽霊花婿:ある旅人の話
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
わななく手でさてもこの世は夢まぼろしなどとへたくその和歌を鼻紙の表裏に書きしたためて、その日その日の
憂
(
う
)
さを晴らしている有様だったので
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しばらく、物
憂
(
う
)
く、
嫉
(
ね
)
たく、しかも陽気な世の中が自分に
見
(
まみ
)
えた。自分は娯しい中に胸迫るものを感じ続けて来た。
富士
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
武男が遠洋航海の留守の間心さびしく
憂
(
う
)
き事多かる浪子を慰めしは、燃ゆるがごとき武男の書状を除きては、千鶴子の訪問ぞその
重
(
おも
)
なるものなりける。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
父善太郎氏は、親の報いとあきらめもしようけれど、可愛い子供が三人まで、同じ
憂
(
う
)
き
目
(
め
)
を見せられるとは、余りと云えば残酷だ。そればかりではない。
魔術師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
……
田舍
(
ゐなか
)
づくりの、かご
花活
(
はないけ
)
に、づツぷりぬれし
水色
(
みづいろ
)
の、たつたを
活
(
い
)
けし
樂
(
たの
)
しさは、
心
(
こゝろ
)
の
憂
(
う
)
さもどこへやら……
木菟俗見
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
園部は、これも青くないとは云えない顔色に、
憂
(
う
)
るわしげに
眉
(
まゆ
)
をひそめて、みどりの顔色をのぞきこんでいる。
麻雀殺人事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「わずか五十銭ばかりの金で、頭の
憂
(
う
)
さをすっかり吹き払って、アルコオルなしで
楽しむこと
(
エンジョイ
)
のできる所へ!」
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
さしもに豪華をうたわれた岩下氏もある事件に
蹉跌
(
さてつ
)
して
囹圄
(
れいご
)
につながれる運命となった。名物お鯉も世の
憂
(
う
)
きをしみじみとさとらなければならなくなった。
一世お鯉
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
角を
繋
(
つな
)
がれたまま、頭はじっと動かさずに、彼は腹に
皺
(
しわ
)
を寄せ、
尻尾
(
しっぽ
)
でもの
憂
(
う
)
げに
黒蠅
(
くろばえ
)
を追いながら、女中が
箒
(
ほうき
)
を手に持ったまま居眠りをしているように
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
何の因果で
斯様
(
かよう
)
な
憂
(
う
)
き目と泣いて怨めど肝腎カナメの。当の患者はアラレヌ眼付きで。キョロリキョロリとしているばっかり……チャカポコチャカポコ……
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
げにかう
憂
(
う
)
きめ見つる後は重き病をも得るものなり。
二一二
ゆきて月ごろを過せとて、人を添へて出でたたす。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
世の
憂
(
う
)
き事、人生のつらいことが毎日われわれの眼に
映
(
うつ
)
り耳に
響
(
ひび
)
きながら、われわれの胸にはなんらの影をも落とさず、なんらの共鳴をも引き起こさない。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
雲が重苦しく空に低くかかった、もの
憂
(
う
)
い、暗い、
寂寞
(
せきばく
)
とした秋の日を一日じゅう、私はただ一人馬にまたがって、妙にもの
淋
(
さび
)
しい地方を通りすぎて行った。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
春の夜を淋しく交る白い糸を、
顎
(
あご
)
の下に抜くも
嬾
(
もの
)
うく、世のままに、人のままに、また取る年の積るままに捨てて吹かるる
憂
(
う
)
き
髯
(
ひげ
)
は小夜子の方に向いている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
軽躁
(
けいそう
)
と心附かねばこそ、身を軽躁に持崩しながら、それを
憂
(
う
)
しとも思わぬ様子※
醜穢
(
しゅうかい
)
と認めねばこそ、身を不潔な境に
処
(
お
)
きながら、それを何とも思わぬ
顔色
(
かおつき
)
。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
人生の
憂
(
う
)
さがわかりながら私の知らず顔をしていますのも、世の中のならわしに従っているだけなのです。
源氏物語:47 橋姫
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
子の上に
関
(
かゝ
)
る
憂
(
う
)
き夢より醒め
候
(
さふら
)
ひしは二三時の頃に
候
(
さふら
)
ひけん、月
明
(
あか
)
く
水色
(
みづいろ
)
の船室を
照
(
てら
)
し
居
(
を
)
り申し
候
(
さふら
)
ひき。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
追憶のなかに出てくる青年のおもかげは、いつも、すがすがしく、もの
憂
(
う
)
く、あわれで、やるせない思いをかきたてられたものだったが、いまは軽蔑しか感じない。
あなたも私も
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
そはやはりふるさとは詩歌の国ならず、あさましきこと
憂
(
う
)
きこと、きのふの夕より知りそめしに候。
ひらきぶみ
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
○余が病気保養のために
須磨
(
すま
)
に居る時、「この上になほ
憂
(
う
)
き事の積れかし限りある身の力ためさん」
病牀六尺
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
種蒔け、種蒔け、蒔かずにやゐられぬ、蒔かねば
憂
(
う
)
さやの、子種はどつさり、畑は上々で、
畝高
(
うねだか
)
で
畑の祭
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
丁度、その日光室の中には
快癒期
(
かいゆき
)
の
患者
(
かんじゃ
)
らしい外国人が一人、
籐椅子
(
とういす
)
に
靠
(
もた
)
れていたが、それがひょいと上半身を起して、私たちの方をもの
憂
(
う
)
げな
眼
(
まな
)
ざしで眺め出した。
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
貫一は
心陰
(
こころひそか
)
に女の成効を祝し、かつ雅之たる者のこれが為に
如何
(
いか
)
に
幸
(
さいはひ
)
ならんかを想ひて、あたかも
妙
(
たへ
)
なる楽の
音
(
ね
)
の計らず
洩聞
(
もれきこ
)
えけんやうに、
憂
(
う
)
かる己をも忘れんとしつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
世の常ならば
生面
(
せいめん
)
の客にさえ交わりを結びて、旅の
憂
(
う
)
さを慰めあうが航海の習いなるに、
微恙
(
びよう
)
にことよせて
房
(
へや
)
のうちにのみ
籠
(
こも
)
りて、同行の人々にも物言うことの少なきは
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
まことに、旅は大正昭和の今日、汽車自動車の便あればあるままに
憂
(
う
)
くつらくさびしく、五十一歳の
懐子
(
ふところご
)
には、まことによい浮世の手習いかと思えばまたおかしくもある。
柿の種
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
と独りごちて、
浄人
(
きよめ
)
が家のありけるに入りにけり。男
憂
(
う
)
れしもいと憐に、不思議と覚えけり。
くぐつ名義考:古代社会組織の研究
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
これあるがためにもの
憂
(
う
)
げな冬の長さも、早く過ぎて行きます。雪と手仕事とには厚い
因縁
(
いんねん
)
がひそみます。これこそは北国に様々な品物を生ましめる一つの原因であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
ふ、ふ、川へ落ちたぐらいが何だね、借金が何だね、
憂
(
う
)
き世の波におじ気がつきましたかね。……おとなしいお子供さん、そのうちにどこかの小父さんが
讃
(
ほ
)
めてくれるだろう。
六月
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
歩くにも、さももの
憂
(
う
)
そうに、しゃなりしゃなりとやっている。いい
風情
(
ふぜい
)
だなあ、じつに!
ワーニャ伯父さん:――田園生活の情景 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それからさまざまの
憂
(
う
)
き
艱難
(
かんなん
)
を経て、ある時は
相模
(
さがみ
)
の
大山石尊
(
おおやませきそん
)
に
参籠
(
さんろう
)
し、そこで二十四の時に
真言
(
しんごん
)
に就いて出家をとげ、それより諸国を修行し、或いは諸所の寺々の住職をし
大菩薩峠:35 胆吹の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
世間
(
よのなか
)
を
憂
(
う
)
しと
恥
(
やさ
)
しと
思
(
おも
)
へども
飛
(
と
)
び
立
(
た
)
ちかねつ
鳥
(
とり
)
にしあらねば 〔巻五・八九三〕 山上憶良
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
憂
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
“憂”を含む語句
憂慮
憂鬱
憂愁
憂鬱症
鬱憂
杞憂
憂欝
憂悶
憂鬱病
憂患
物憂
憂苦
無憂樹
憂思
憂晴
憂世
憂惧
憂事
欝憂
憂欝症
...