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草津
剰え大阪より附き添い来りし巡査は皆
草津にて交代となりければ、
切めてもの顔
馴染もなくなりて、
憂きが中に三重県津市の監獄に着く。
得たりと打悦び互ひに笑ひつ笑はれつ何時か
草津石部も夢の間に打過て水口の驛に着し頃は夏の日なれども
早申刻過共思はれける八九里の道を
寢息もやがて
夜着の
襟に
白く
花咲くであらう、これが
草津の
常の
夜なのである。けれども
馴れては
何物も
懷しい、
吹雪よ、
遠慮なく
私の
顏を
撫でゝゆけ!