草津くさつ)” の例文
あまつさえ大阪より附き添い来りし巡査は皆草津くさつにて交代となりければ、めてもの顔馴染なじみもなくなりて、きが中に三重県津市の監獄に着く。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
得たりと打悦び互ひに笑ひつ笑はれつ何時か草津くさつ石部いしべも夢の間に打過て水口の驛に着し頃は夏の日なれどもはや申刻なゝつすぎ共思はれける八九里の道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
寢息ねいきもやがて夜着よぎえりしろ花咲はなさくであらう、これが草津くさつつねよるなのである。けれどもれては何物なにものなつかしい、吹雪ふゞきよ、遠慮ゑんりよなくわたしかほでゝゆけ!
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
もはや御一行が江州ごうしゅう草津くさつまで動いたという二十二日の明け方になって、吉左衛門は夜通し早駕籠はやかごを急がせて来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「もう水戸が見える筈だ」そう云ったのは、賊を追って、お茶の水の濠傍ほりわきから、戸波研究所の地下道を突撃して行ったことで顔馴染かおなじみの、参謀草津くさつ大尉であった。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しぶしぶ丹三郎を連れて国元を出発したが、京を過ぎて東路あずまじをくだり、草津くさつ宿しゅくに着いた頃には、そろそろ丹三郎、皆の足手まといになっていた。だいいち、ひどく朝寝坊だ。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
持病ぢびやうといふのはれかと切込きりこまれて、まあ其樣そんところでござんせう、お醫者樣ゐしやさまでも草津くさつでもと薄淋うすさびしくわらつてるに、御本尊ごほんぞんおがみたいな俳優やくしやつたられのところだといへば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
熱海あたみ修善寺しゅぜんじ箱根はこねなどは古い温泉場でございますが、近年は流行りゅうこういたして、また塩原しおばらの温泉が出来、あるい湯河原ゆがわらでございますの、又は上州に名高い草津くさつの温泉などがございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一六〇〇年九月十五日に、徳川家康が、関ヶ原の戦いに勝ち、同年九月二十日、近江おうみ草津くさつ駅に、大兵をひきいて駐屯したときには、朝廷は、特使を草津につかわして、家康をねぎらった。
ふる草津くさつかくれて、冬籠ふゆごもにも、遙々はる/″\高原かうげんゆきけて、うらゝかなつてゐる。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)