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飢
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う
ふりがな文庫
“
飢
(
う
)” の例文
わずかの金銀家財、これを有りぎりに養育しまいらせ、御命なお長く、たから尽きたらば、共に
飢
(
う
)
え死に申さるべく候。……(大略)
日本名婦伝:小野寺十内の妻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
リント少将は、ピストルをにぎって勝ってみるのはいいが、少将は、やがてこの戦車の中で、
飢
(
う
)
えと寒さのため死んでしまうだろう。
地底戦車の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
三
人
(
にん
)
は、つねに、こうしたときの
用意
(
ようい
)
にしまっておいたかつお
節
(
ぶし
)
や、こんぶなどをとり
出
(
だ
)
して、わずかに
飢
(
う
)
えをしのいだのでした。
南方物語
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
オーレンカはサーシャが両親にすっかり
打棄
(
うっちゃ
)
られて、一家の余計者扱いにされ、
飢
(
う
)
え
死
(
じに
)
しかけているような気がしてならなかった。
可愛い女
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
タカが、マドロス君が
飢
(
う
)
えに迫って、お
櫃
(
ひつ
)
をかっぱらったとか、鶏を盗んだとかいう程度が、村民の蒙っていたすべての被害ではないか。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
▼ もっと見る
ゆえに
神経質
(
しんけいしつ
)
なる僕のごとき者は、(僕と同感の青年が何万とあったろう)すがりよって、教えを求めようと
飢
(
う
)
え
渇
(
かわ
)
いていたものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
飢
(
う
)
ゑを覚えた時に、かれは始めて立つて、七輪の下を
煽
(
あふ
)
いだ。また、世話人の持つて来て置いて行つて呉れた四角の
小櫃
(
こびつ
)
の中の米をさがした。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
愛
(
あい
)
ちやんは
媚
(
あま
)
へるやうな
聲
(
こゑ
)
で、『まァ、
可哀相
(
かあいさう
)
に!』と
云
(
い
)
つて、
思
(
おも
)
はず
口笛
(
くちぶえ
)
を
吹
(
ふ
)
かうとしました、が、
待
(
ま
)
てよ、
若
(
も
)
し
其犬
(
そのいぬ
)
ころが
飢
(
う
)
ゑて
居
(
ゐ
)
ては
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
たとえわしが射落としたにせよ、わしがこんなに
飢
(
う
)
えていなかったら、成経殿に
譲
(
ゆず
)
っただろう。たかが小鳥一羽ぐらい!
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
そのうえおまえを
養
(
やしな
)
っていては、自分たちが
飢
(
う
)
えて死ななければならないと思っているのだ。そこでおまえにひとつ
心得
(
こころえ
)
てもらいたいことがある。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
勿論、はぎ野も一緒であったが、一年に余る野の臥戸ぐらしに衣裳はやぶれ落ち、飯も自ら作ることをしないために
飢
(
う
)
えがちだということであった。
野に臥す者
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
鳥もけものも、みな
飢
(
う
)
え死にじゃ人もばたばた
倒
(
たお
)
れたじゃ。もう
炎天
(
えんてん
)
と
飢渇
(
きかつ
)
の
為
(
ため
)
に人にも鳥にも、親兄弟の見さかいなく、この世からなる
餓鬼道
(
がきどう
)
じゃ。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
片岡山
(
かたおかやま
)
という
言葉
(
ことば
)
に
冠
(
かぶ
)
せた
飾
(
かざ
)
りの
枕言葉
(
まくらことば
)
で、
歌
(
うた
)
の
意味
(
いみ
)
は、
片岡山
(
かたおかやま
)
の上に
御飯
(
ごはん
)
も
食
(
た
)
べずに
飢
(
う
)
えて
寝
(
ね
)
ている
旅
(
たび
)
の
男
(
おとこ
)
があるが、かわいそうに、
親
(
おや
)
も
兄弟
(
きょうだい
)
もない
夢殿
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
「なるほど、
或
(
あるひ
)
はそうかも
知
(
し
)
れない。けれど
自分
(
じぶん
)
は
飢
(
う
)
えてゐる。それだから
食
(
た
)
べる。これは
自然
(
しぜん
)
だ、また
權利
(
けんり
)
だ」
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
お前が
淫売
(
いんばい
)
をしたい故、衿に
固練
(
かたねり
)
の
白粉
(
おしろい
)
もつけたい故、
美味
(
うま
)
いものもたらふく食べたい故、俺から去って行ったのであろう、俺は
今日
(
きょう
)
で三日も
飢
(
う
)
えている。
清貧の書
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
津田の言葉は誰にでも解り切った
理窟
(
りくつ
)
なだけに、同情に
飢
(
う
)
えていそうな相手の気分を残酷に
射貫
(
いぬ
)
いたと一般であった。数歩の
後
(
のち
)
、小林は突然津田の方を向いた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
彼は、
飢
(
う
)
えた宿なしの犬のように、あらゆる感覚を緊張さして、どこでも、くん/\嗅ぎまわっていた。
武装せる市街
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
飢
(
う
)
えて
飢
(
う
)
えてたまらない時ににぎりめし一つは君非常にうれしいだろう。人間は自分を
零
(
ゼロ
)
にしてかかれば、一日でも世に生きているということがありがたくなる。
廃める
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
それ程に震災後の東京は
飢
(
う
)
えていた。この飢に堪え得たものは教育ある上流人士よりほかにない。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
飢
(
う
)
え
死
(
じに
)
をしたかないからなあ、おれは……。今すぐ食いたいんだ。なんでもいい、草でもいい。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「おお、
私
(
わし
)
も
飢
(
う
)
え
疲
(
つか
)
れた。このあたりのうを使う者たちよ。早くたべ物を持って助けに来い」
古事記物語
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
そうでなくても、このままほうっておかれたら、やがて
飢
(
う
)
え死にをしてしまうに違いない。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
そこで
用意
(
ようゐ
)
が
整
(
とゝな
)
ふと、
吾等
(
われら
)
は
手
(
て
)
に/\
一個
(
いつこ
)
宛
(
づゝ
)
の
爆裂彈
(
ばくれつだん
)
を
携
(
たづさ
)
へて
立上
(
たちあが
)
つた。
兼
(
かね
)
て
用意
(
ようゐ
)
の
鳥
(
とり
)
の
肉
(
にく
)
を、十
斤
(
きん
)
ばかり
鐵檻
(
てつおり
)
の
間
(
あひだ
)
から
投出
(
なげだ
)
すと、
食
(
しよく
)
に
飢
(
う
)
ゑたる
猛獸
(
まうじう
)
は、
眞黒
(
まつくろ
)
になつて
其
(
その
)
上
(
うへ
)
に
集
(
あつま
)
る。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
そしてまた
飢
(
う
)
ゑ
凍
(
こゞ
)
えて死んで行くことは人間として迚も默つて服從することが出來ない運命であるからだ。おゝ神さま! どうか私をもう暫く
護
(
まも
)
り給へ! 助け給へ! 導き給へ!
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
引掛けるのもありますが
飢
(
う
)
えた鮎でも何でも引掛けますから味が良くありません。
潜
(
もぐ
)
りといって水の中へ人が潜って捕るのもありますがこれも飢えた魚を捕りますから前の通りです。
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
總髮
(
そうはつ
)
に汚ない袷、尻が拔けて膝が拔けて、それを晴着にも寢卷にもしようといふ徹底振り、江戸といふ時代には、こんなにまで落ち果て乍ら、
飢
(
う
)
ゑも
凍
(
こゞ
)
えもせずに、
店賃
(
たなちん
)
を三年も溜めて
銭形平次捕物控:302 三軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
禅師ちかくすすみよりて、
院主
(
ゐんじゆ
)
何をか嘆き給ふ。
一一八
もし
飢
(
う
)
ゑ給ふとならば、
一一九
野僧が肉に
腹
(
はら
)
をみたしめ給へ。あるじの憎いふ。師は夜もすがらそこに居させたまふや。禅師いふ。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
橋寺氏は家庭の空気と云うものに
飢
(
う
)
えているらしいから、今日はお宅の皆さんで会うて上げて下さいと云うことやったが、しかし雪子ちゃんが、家で会うことをよう承知したなあ、と云い
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
愛
(
あい
)
するお
前
(
まへ
)
の
父
(
ちゝ
)
、お
前
(
まへ
)
の
母
(
はゝ
)
、お
前
(
まへ
)
の
妻
(
つま
)
、お
前
(
まへ
)
の
子
(
こ
)
、そして
多
(
おほ
)
くのお
前
(
まへ
)
の
兄妹
(
きやうだい
)
たちが、
土地
(
とち
)
を
逐
(
お
)
はれ
職場
(
しょくば
)
を
拒
(
こば
)
まれ、
飢
(
う
)
えにやつれ、
歯
(
は
)
を
喰
(
く
)
い
縛
(
しば
)
り、
拳
(
こぶし
)
を
握
(
にぎ
)
って、
遠
(
とほ
)
く
北
(
きた
)
の
空
(
そら
)
に
投
(
な
)
げる
憎
(
にく
)
しみの
眼
(
め
)
は
生ける銃架:――満洲駐屯軍兵卒に――
(新字旧仮名)
/
槙村浩
(著)
しらざるゆゑなりその者よびとひて聞せん今江戸
其外
(
そのほか
)
所々より出す
過料
(
くわれう
)
金銀は
公儀
(
こうぎ
)
に御入用
抔
(
など
)
には
決
(
けつ
)
して
用
(
もちひ
)
給ず
唯
(
たゞ
)
橋
(
はし
)
道等
(
みちとう
)
の
御修復金
(
ごしゆふくきん
)
と成る多くは
橋
(
はし
)
の
普請
(
ふしん
)
のみ入用に成事なり是にて
飢
(
う
)
ゑ
凍
(
こゝ
)
ゑる人を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
燕王曰く、南軍
飢
(
う
)
えたり、更に一二日にして
糧
(
かて
)
やゝ集まらば破り易からずと。
乃
(
すなわ
)
ち兵千余を
留
(
とど
)
めて橋を守らしめ、
潜
(
ひそか
)
に軍を移し、夜半に兵を渡らしめて
繞
(
めぐ
)
って敵の
後
(
うしろ
)
に出づ。時に
徐輝祖
(
じょきそ
)
の軍至る。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
飢
(
う
)
ゑて
足
(
あ
)
悩
(
な
)
ゆむ
湿
(
しめ
)
り
地
(
ぢ
)
に
茴香
(新字旧仮名)
/
末吉安持
(著)
三
貧
(
まづ
)
しけれども
飢
(
う
)
ゑず
命の鍛錬
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
彼等は、幽霊船の出てくる前には、
飢
(
う
)
えと
渇
(
かわ
)
きとで、病人のようにへたばっていたのに、いまは戦士のように元気にふるい立っている。
幽霊船の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
あちらの
嶺
(
みね
)
の
方
(
ほう
)
へ、
早起
(
はやお
)
きする
小鳥
(
ことり
)
たちの
声
(
こえ
)
を
聞
(
き
)
きつけて、これを
捕
(
と
)
らえて
飢
(
う
)
えを
満
(
み
)
たすために、
飛
(
と
)
んでいってしまった
後
(
あと
)
です。
美しく生まれたばかりに
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
小競
(
こぜ
)
り合いでも、敵が寄せてくると、俄然、
飢
(
う
)
えもつかれも忘れはてて戦える。ところがこの半月余りは、いっこう寄手が襲って来ない。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
馬のいななきも聞こえなければ、牛のうなりも聞こえなかった。ただ食に
飢
(
う
)
えたからすが、こずえの上で虫を
探
(
さが
)
しあぐねて悲しそうに鳴いていた。
家なき子:01 (上)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
成経
蘇武
(
そぶ
)
は
胡国
(
ここく
)
との戦争に負けて、
異域
(
いいき
)
の
無人
(
むにん
)
の山に
飢
(
う
)
えた
獣
(
けもの
)
のようになって、十五年間もさまよい暮らしました。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
内容が不分明ながらに、二人共に何か気が
飢
(
う
)
えて、酒のほかにしかるべき刺戟を求めているもののようであります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「
馬鹿
(
ばか
)
な
奴
(
やつ
)
らだ。もう
秋風
(
あきかぜ
)
も
立
(
た
)
つたじやないか、
飢
(
う
)
ゑるも
飽
(
あ
)
くも、それがどうした。
運命
(
うんめい
)
はみんな一つだ」
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
けれどももしヴェーッサンタラ大王のように大へんに徳のある人ならばそしてその人がひどく
飢
(
う
)
えているならば木の枝はやっぱりひとりでに垂れてくるにちがいない。
学者アラムハラドの見た着物
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
何かをしなければ
飢
(
う
)
ゑてしまふ。どの仕事を選ぶべきかとゆき子はさいころを振りながら、寒い風に吹かれて、街の女になつてゐる自分の姿をひそかに空想してゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
横殴
(
よこなぐ
)
りになぐられて倒れかかっている奴、あるいは
飢
(
う
)
えて這いつくばい、なお起き上がろうとしているのもあったが、どれにも、喜びとか、
踊
(
おど
)
り上るとかいう歓相のそれがなく
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
猛獣の血に
飢
(
う
)
えた牙は、ジリリジリリと、相手の喉笛へ迫って行く。
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
飢
(
う
)
えも渇きもせぬその代り
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
飯
(
いい
)
に
飢
(
う
)
えて
夢殿
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
かれは知りたいと思っていた遭難当時の模様がいま三千夫の口からもれてくるので、まるで
飢
(
う
)
えた者が
食
(
しょく
)
をもとめるようなさわぎであった。
海底大陸
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
弥右衛門の
亡
(
な
)
い
跡
(
あと
)
へ、
聟
(
むこ
)
として
入夫
(
にゅうふ
)
した筑阿弥は、ただ働く人だった。一年たたないうちに、家計もだいぶ直って、
飢
(
う
)
える日はなくなった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
バルブレンという男がいなかったなら、わたしは赤んぼうのとき、寒さと
飢
(
う
)
えのために死んでいたかもしれなかった。
家なき子:02 (下)
(新字新仮名)
/
エクトール・アンリ・マロ
(著)
有王 なぜそのようなことをおっしゃいますか、私が生きている限りはたとえご不自由とは申せ、海山をあさってもあなたを
飢
(
う
)
えさせはいたしませぬ。
俊寛
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
飢
常用漢字
中学
部首:⾷
10画
“飢”を含む語句
飢死
飢餓
飢饉
飢渇
飢民
飢寒
大飢饉
飢饉年
寒飢
飢餲
飢凍
飢饉歳
半飢餓
飢餓困憊
飢雀
飢涎
飢殺
飢人地蔵
飢人
近飢
...