)” の例文
わずかの金銀家財、これを有りぎりに養育しまいらせ、御命なお長く、たから尽きたらば、共にえ死に申さるべく候。……(大略)
リント少将は、ピストルをにぎって勝ってみるのはいいが、少将は、やがてこの戦車の中で、えと寒さのため死んでしまうだろう。
地底戦車の怪人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にんは、つねに、こうしたときの用意よういにしまっておいたかつおぶしや、こんぶなどをとりして、わずかにえをしのいだのでした。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
オーレンカはサーシャが両親にすっかり打棄うっちゃられて、一家の余計者扱いにされ、じにしかけているような気がしてならなかった。
可愛い女 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
タカが、マドロス君がえに迫って、おひつをかっぱらったとか、鶏を盗んだとかいう程度が、村民の蒙っていたすべての被害ではないか。
大菩薩峠:31 勿来の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ゆえに神経質しんけいしつなる僕のごとき者は、(僕と同感の青年が何万とあったろう)すがりよって、教えを求めようとかわいていたものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ゑを覚えた時に、かれは始めて立つて、七輪の下をあふいだ。また、世話人の持つて来て置いて行つて呉れた四角の小櫃こびつの中の米をさがした。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
あいちやんはあまへるやうなこゑで、『まァ、可哀相かあいさうに!』とつて、おもはず口笛くちぶえかうとしました、が、てよ、其犬そのいぬころがゑてては
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
たとえわしが射落としたにせよ、わしがこんなにえていなかったら、成経殿にゆずっただろう。たかが小鳥一羽ぐらい!
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そのうえおまえをやしなっていては、自分たちがえて死ななければならないと思っているのだ。そこでおまえにひとつ心得こころえてもらいたいことがある。
勿論、はぎ野も一緒であったが、一年に余る野の臥戸ぐらしに衣裳はやぶれ落ち、飯も自ら作ることをしないためにえがちだということであった。
野に臥す者 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
鳥もけものも、みなえ死にじゃ人もばたばたたおれたじゃ。もう炎天えんてん飢渇きかつために人にも鳥にも、親兄弟の見さかいなく、この世からなる餓鬼道がきどうじゃ。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
片岡山かたおかやまという言葉ことばかぶせたかざりの枕言葉まくらことばで、うた意味いみは、片岡山かたおかやまの上に御飯ごはんべずにえてているたびおとこがあるが、かわいそうに、おや兄弟きょうだいもない
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「なるほど、あるひはそうかもれない。けれど自分じぶんえてゐる。それだからべる。これは自然しぜんだ、また權利けんりだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
お前が淫売いんばいをしたい故、衿に固練かたねり白粉おしろいもつけたい故、美味うまいものもたらふく食べたい故、俺から去って行ったのであろう、俺は今日きょうで三日もえている。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
津田の言葉は誰にでも解り切った理窟りくつなだけに、同情にえていそうな相手の気分を残酷に射貫いぬいたと一般であった。数歩ののち、小林は突然津田の方を向いた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は、えた宿なしの犬のように、あらゆる感覚を緊張さして、どこでも、くん/\嗅ぎまわっていた。
武装せる市街 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
えてえてたまらない時ににぎりめし一つは君非常にうれしいだろう。人間は自分をゼロにしてかかれば、一日でも世に生きているということがありがたくなる。
廃める (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それ程に震災後の東京はえていた。この飢に堪え得たものは教育ある上流人士よりほかにない。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
じにをしたかないからなあ、おれは……。今すぐ食いたいんだ。なんでもいい、草でもいい。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「おお、わしつかれた。このあたりのうを使う者たちよ。早くたべ物を持って助けに来い」
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そうでなくても、このままほうっておかれたら、やがてえ死にをしてしまうに違いない。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこで用意ようゐとゝなふと、吾等われらに/\一個いつこづゝ爆裂彈ばくれつだんたづさへて立上たちあがつた。かね用意ようゐとりにくを、十きんばかり鐵檻てつおりあひだから投出なげだすと、しよくゑたる猛獸まうじうは、眞黒まつくろになつてそのうへあつまる。
そしてまたこゞえて死んで行くことは人間として迚も默つて服從することが出來ない運命であるからだ。おゝ神さま! どうか私をもう暫くまもり給へ! 助け給へ! 導き給へ!
引掛けるのもありますがえた鮎でも何でも引掛けますから味が良くありません。もぐりといって水の中へ人が潜って捕るのもありますがこれも飢えた魚を捕りますから前の通りです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
總髮そうはつに汚ない袷、尻が拔けて膝が拔けて、それを晴着にも寢卷にもしようといふ徹底振り、江戸といふ時代には、こんなにまで落ち果て乍ら、ゑもこゞえもせずに、店賃たなちんを三年も溜めて
禅師ちかくすすみよりて、院主ゐんじゆ何をか嘆き給ふ。一一八もしゑ給ふとならば、一一九野僧が肉にはらをみたしめ給へ。あるじの憎いふ。師は夜もすがらそこに居させたまふや。禅師いふ。
橋寺氏は家庭の空気と云うものにえているらしいから、今日はお宅の皆さんで会うて上げて下さいと云うことやったが、しかし雪子ちゃんが、家で会うことをよう承知したなあ、と云い
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あいするおまへちゝ、おまへはゝ、おまへつま、おまへ、そしておほくのおまへ兄妹きやうだいたちが、土地とちはれ職場しょくばこばまれ、えにやつれ、しばり、こぶしにぎって、とほきたそらげるにくしみの
しらざるゆゑなりその者よびとひて聞せん今江戸其外そのほか所々より出す過料くわれう金銀は公儀こうぎに御入用などにはけつしてもちひ給ずたゞはし道等みちとう御修復金ごしゆふくきんと成る多くははし普請ふしんのみ入用に成事なり是にてこゝゑる人を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
燕王曰く、南軍えたり、更に一二日にしてかてやゝ集まらば破り易からずと。すなわち兵千余をとどめて橋を守らしめ、ひそかに軍を移し、夜半に兵を渡らしめてめぐって敵のうしろに出づ。時に徐輝祖じょきその軍至る。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ゑてゆむ湿しめ
茴香 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
三 まづしけれどもゑず
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
彼等は、幽霊船の出てくる前には、えとかわきとで、病人のようにへたばっていたのに、いまは戦士のように元気にふるい立っている。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あちらのみねほうへ、早起はやおきする小鳥ことりたちのこえきつけて、これをらえてえをたすために、んでいってしまったあとです。
美しく生まれたばかりに (新字新仮名) / 小川未明(著)
小競こぜり合いでも、敵が寄せてくると、俄然、えもつかれも忘れはてて戦える。ところがこの半月余りは、いっこう寄手が襲って来ない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬のいななきも聞こえなければ、牛のうなりも聞こえなかった。ただ食にえたからすが、こずえの上で虫をさがしあぐねて悲しそうに鳴いていた。
成経 蘇武そぶ胡国ここくとの戦争に負けて、異域いいき無人むにんの山にえたけもののようになって、十五年間もさまよい暮らしました。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
内容が不分明ながらに、二人共に何か気がえて、酒のほかにしかるべき刺戟を求めているもののようであります。
大菩薩峠:17 黒業白業の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
馬鹿ばかやつらだ。もう秋風あきかぜつたじやないか、ゑるもくも、それがどうした。運命うんめいはみんな一つだ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
けれどももしヴェーッサンタラ大王のように大へんに徳のある人ならばそしてその人がひどくえているならば木の枝はやっぱりひとりでに垂れてくるにちがいない。
何かをしなければゑてしまふ。どの仕事を選ぶべきかとゆき子はさいころを振りながら、寒い風に吹かれて、街の女になつてゐる自分の姿をひそかに空想してゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
横殴よこなぐりになぐられて倒れかかっている奴、あるいはえて這いつくばい、なお起き上がろうとしているのもあったが、どれにも、喜びとか、おどり上るとかいう歓相のそれがなく
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
猛獣の血にえた牙は、ジリリジリリと、相手の喉笛へ迫って行く。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
えも渇きもせぬその代り
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
いいえて
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かれは知りたいと思っていた遭難当時の模様がいま三千夫の口からもれてくるので、まるでえた者がしょくをもとめるようなさわぎであった。
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
弥右衛門のあとへ、むことして入夫にゅうふした筑阿弥は、ただ働く人だった。一年たたないうちに、家計もだいぶ直って、える日はなくなった。
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
バルブレンという男がいなかったなら、わたしは赤んぼうのとき、寒さとえのために死んでいたかもしれなかった。
有王 なぜそのようなことをおっしゃいますか、私が生きている限りはたとえご不自由とは申せ、海山をあさってもあなたをえさせはいたしませぬ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)