)” の例文
平次は諄々じゆん/\として説き聞かせました。が、お美乃は涙にひたり乍らも、頑固に頭を振つて、平次の言葉をけ容れようともしません。
ちょうど政友会の放漫政策の後をけて、緊縮政策の浜口内閣の出現した時であった。ふと庸三の耳に総理大臣の放送が入って来た。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
簾形日除すだれがたひよけ、銅製ポンプ、発条錠ばねじょう、便利な地下室、その他の多くのものの利益をける権利が彼にあたえられる、というのである。
我がけたるこのひとつのいのちは全宇宙的絶対値を荷うており、初めなく、又終りなくすなわち限りなきいのちの流れの水粒であり
光り合ういのち (新字新仮名) / 倉田百三(著)
勤王運動の実践に桂が奔命ほんめいし出してからは、常に、密書を交わして、江戸の消息を彼に与え、また京洛みやこの消息を彼からけていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
った御前は仕合せである。しかしその仕合をける前に御前は既に多大な犠牲を払っている。これから先も御前の気の付かない犠牲を
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
然し此処は永く眠るべき場所である。一夜の死をく可き場所ではない。余は墓地から追い出されて、また本願寺前の広場に出た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
分を越えて親を祭るのは、親の靈をして非礼をけしめることになるのじゃ。のみならず、大丈夫の非礼はやがて天下をみだるもとになる。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
われわれが神の恩恵をけ、われわれの信仰によってこれらの不足に打ち勝つことができれば、われわれは非常な事業を遺すものである。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
走るさまは、「コルソオ」の競馬にも似ずや。我家にゆき着かば、樂しき世を送らせん。神の使もえけぬやうなる饗應もてなしすべし。
寛政十一年のうまれで、抽斎の生れた文化二年には七歳になっていた。歿したのは文久元年十二月十五日で、年をくること六十三であった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
春廼舎をあきたらなく思っていたには違いないが、訪問したのは先輩を折伏しゃくぶくして快を取るよりは疑問を晴らして益をくるツモリであったのだ。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
そはかしこにては、我等の所有もちものとなふる者愈〻多ければ、各自おの/\くるさいはひ愈〻多く、かの僧院に燃ゆる愛亦愈〻多ければなり。 五五—五七
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
お笑いになると困りますが、私はこう見えてもえ抜きのモスコー育ちで、旧露西亜ロシアの貴族の血をけている人間なのです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
信念、信仰によってこれをくるものは尽きせぬ動力を供給せられ、労せずして根気も敏活も働きの上に上るのであります。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
さて皆さん、今も申した通り全国各地に食道楽会が勃興ぼっこうして食物問題の研究がさかんになれば我邦わがくにの人は将来何ほどの利益をけるか知れません。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そして私たちが、それを澤山けた時に、その幾分を人に與へることは、感情に、異常な沸騰ふつたうのはけ口を與へることである。
折角たまに落ちて来るやつを待ち構へて口にけて見ると、それは水ではなくて熱い酒なので情なかつた、さう思へばあの月は、色も怪しい……。
環魚洞風景 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
さうして、日光をけることの出来なくなつた枝は日に日に細つて行つた。一本の小さな松は、杉の下で赤く枯れて居た。
それにしてもこの厭味のない温かさをどうけ入れよう。(ああ、それにしても、一つ蚊帳に寝ながら、ある一事を強いられないうれしさよ。)
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)
安芸あきの宮島の女夫めおと烏は、一年に一度しか祭をけぬことになっているが、時々は七浦回りの信心者の船が供えものをする。
自らその罪を責めて、甘んじてくべき縲紲るいせつを、お鶴のために心弱り、ひとややみよりむしろつらい、身を暗黒に葬ったのを、ひそかに知るは夫人のみ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しか勘次かんじ自身じしんには如何どん種類しゆるゐものでも現在げんざいかれこゝろあた滿足まんぞく程度ていどは、うしなうたおしな追憶つゐおくすることからける哀愁あいしうの十ぶんの一にもおよばない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さりながら彼らの孝道は畢竟かくのごとくにせいけ、かくのごとくに生をつづけてることをもつて無上の幸福とする感謝のうへにおかれてゐる。
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
しゅん長閑のどかなる、咲く花にさえずる鳥は人工のとても及ばぬものばかりで、富者ふしゃ貧者ひんじゃも共にけて共に喜ぶ権利はことならない
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
雪之丞は、この世にけたいのちを、呪わしく怨じつづけている身ながら、思いやりの深い、師匠、心友のなさけを想えば、うれしさに涙ぐまれて来る。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
歌を望みない方へ誘う力は、私だけの考えでも、すくなくとも三つはある。一つは、歌のけた命数に限りがあること。
歌の円寂する時 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
凡そ其後そののち今日までに私のけた苦痛といふものは、すべての空想家——責任に対する極度の卑怯者の、当然一度はけねばならぬ性質のものであつた。
弓町より (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
家をまもり盗をふせぎ、風雨に苦しんで残食と骨ばかりけ、時としては何一つ食わず、それに猫は常に飽食して竈辺かまどべに安居するは不公平ならずやと怒る。
二人は手を引き合って、舟のつないである小屋の方へ歩いて行った。二人ともなんだか当然けるはずの幸福を享けるような心持ちがしているのである。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
をんなの徳をさへかでこの嬋娟あでやかに生れ得て、しかもこの富めるにへる、天のめぐみと世のさちとをあはけて、残るかた無き果報のかくもいみじき人もあるものか。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
よろしくこのにとどまってこの家運を守り給えばとこしなえに龍王ルーけ給うべき幸福は尽きることはございますまい
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
彼らが千荊万棘せんけいばんきょくふまえた艱難辛苦——中々一朝一夕いっちょういっせきに説き尽せるものではない。明治の今日に生をくる我らは維新の志士の苦心を十分にまねばならぬ。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
十一、各事件を通じて、その死によって直接財物上の利益をけたる者は被告にして、かつ被告一人なること。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
冥交契合の長短は、霊韻をくるの多少なり。霊韻を享くるの多少は、後に産出すべき詩歌の霊不霊なり。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
私が自然に草木が好きなために、私はどれ程利益をけているか知れません。私は生来ようこそ草木が好きであってくれたとどんなに喜んでいるか分りません。
世の中には宗旨を信心して未来を祈る者あり。その目的は死後に極楽に往生していわゆる「パラダイス」の幸福をけんとの趣意ならん。深謀遠慮というべし。
教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
その結果がどうであらうと、それはもう甘んじてれるよりほかはない。彼女はひそかに天に祈つた——どうかこの惨めな私に正しい道を踏ませて下さい。
双面神 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
すべてこれらの父に関する記憶が旅にある岸本の胸にまとまって来た。早く父に別れた彼は多くの他の少年がけ得るような慈愛もろくろく享けず仕舞じまいであった。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
しかも江戸の血をけた人は、これに依て江戸を安全ならしめようと苦心した徳川幕府の当路者とうろしゃと、彼ら自身の祖先とに対して、努力の労を感謝せねばなるまい。
一日一筆 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
むしろ世にも幸福なる生をけているものであることを信じて、家族は決して、嘆くことなく、幸福なる道を辿たどるよう、適切なる処置を御仰ぎ下さいますならば
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
城持ちの諸侯ではなかったが、名将の血をけた後裔こうえいというところから、捨て扶持ぶち二万石を与えられて、特に客分としての待遇をうけている特別扱いの一家でした。
もろもろ仁者じんしゃを合せて至心に聴き給へ。我今疾翔大力しっしょうたいりきが威神力をけて梟鵄救護章の一節を講ぜんとす。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
その眼は無気味な燐光を放ち、そのきばは野獣のごとく鋭く、その舌は猫属のささくれを持つ怪物「人間豹」が、いかにしてこの世に生をけたかという疑問である。
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
秩父からける感じは女性的であると私はいうた。それを味わうにふさわしい季節はどうしても春でなければならない。其春も五月下旬新緑の頃が最も好いのである。
秩父の渓谷美 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
これがために人類のける幸福は単に母として妻としてのみの時よりも非常に倍加する訳でしょう。
女子の独立自営 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ところが、飢えたる者は人の美饌びせんくるを見ては愈々飢のくるしみを感ずる道理がある。ける者は人の饑餓きがに臨めるを見ては、余計に之を哀れむの情を催す道理がある。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
気分のいい日には、妻は自然の恵みを一人でけとっているかのように静臥椅子で沈黙していた。
苦しく美しき夏 (新字新仮名) / 原民喜(著)
百万の烝民じようみんくこの神を拝するときは死後生を波羅葦増雲の楽園にく。然るに、耳目あれども此神を知らず、みだりに神徳をそこなふものは、即ちいんへるのの苦淵に沈む。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
それからのち今日までの幸福はけられなかったのであるともまた思い直されもするのであった。
源氏物語:34 若菜(上) (新字新仮名) / 紫式部(著)