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俯
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う
ふりがな文庫
“
俯
(
う
)” の例文
いい
難
(
にく
)
そうに伝兵衛がいうと、お
那珂
(
なか
)
は、畳へ手をついて、何かいうつもりなのが、そのまま、泣きじゃくって、
俯
(
う
)
っ
伏
(
ぷ
)
してしまった。
旗岡巡査
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主人はまた始まったなと云わぬばかりに、
象牙
(
ぞうげ
)
の
箸
(
はし
)
で菓子皿の
縁
(
ふち
)
をかんかん叩いて
俯
(
う
)
つ
向
(
む
)
いている。迷亭だけは大得意で弁じつづける。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
謡えぬお長は
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぶ
)
して蓆の端を
毮
(
むし
)
っている。
千鳥
(新字新仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
そして驚く耀蔵の耳へ口をよせながら、ううーむ……と作り声をあげて、彼のからだに
絡
(
から
)
みながら、
諸倒
(
もろだお
)
れに、
俯
(
う
)
ッ
伏
(
ぷ
)
して首を垂れた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
主人は
茫乎
(
ぼうこ
)
として、その涙がいかなる心理作用に起因するかを研究するもののごとく、袴の上と、
俯
(
う
)
つ向いた雪江さんの顔を見つめていた。
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
なにか、いいかけたと思うと、彼の引っ張っていた杖の先を離して、沢の石ころや
草叢
(
くさむら
)
の中に、
蹌
(
よろ
)
りと、音もなく
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぶ
)
してしまった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三千代は矢張り
俯
(
う
)
つ
向
(
む
)
いてゐた。代助は思ひ切つた判断を、自分の
質問
(
しつもん
)
の上に与へやうとして、既に其言葉が
口
(
くち
)
迄
出掛
(
でかゝ
)
つた時、三千代は不意に顔を
上
(
あ
)
げた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
ドカアンと弾音はたかく
反
(
そ
)
ッぽへ走った。
銃
(
つつ
)
は美少年の手に
引
(
ひ
)
っ
奪
(
た
)
くられているのだった。船客たちは、耳を抑えて
俯
(
う
)
つ伏した。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
三千代はやはり
俯
(
う
)
つ向いていた。代助は思い切った判断を、自分の質問の上に与えようとして、既にその言葉が口まで出掛った時、三千代は不意に顔を上げた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
勝頼はついに、泣かんばかりな声をして
俯
(
う
)
っ
伏
(
ぷ
)
した。豪気強情、稀に見る自尊心の持主も、快川のまえには身もだえして
哭
(
な
)
いた。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丈八郎は、憎悪そのものの眸を、
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぶ
)
している姉へも投げた。が、すぐそれが、一角の眼を見ると、よけいに、
焔
(
ほむら
)
となって
無宿人国記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五、六歩、よろめいて、松の間の
閾際
(
しきいぎわ
)
に、上野介は
俯
(
う
)
ツ伏せに倒れた。倒れたが、すぐに又、夢中に立ち上りかけながら
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
で——伊織は、思わず草の中に
俯
(
う
)
ッ
伏
(
ぷ
)
してしまった。生れてから十四の年まで、こんな怖いと思ったことはまだなかった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
血から
醒
(
さ
)
めて、落着きをとり戻すと、角三郎は、死骸の弁馬を
愍然
(
びんぜん
)
と
嘲
(
あざ
)
むように、
俯
(
う
)
っ伏しているその
衣服
(
きもの
)
のすそで、刀の
血糊
(
のり
)
をふきながら呟いた。
御鷹
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
五ツ六ツ、撲るように刀でたたくと、仁吉の体は、魚の臓物のように、船底に
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぶ
)
して、声も音も消してしまった。
治郎吉格子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もう、彼女の
啜
(
すす
)
り泣きは、
永劫
(
とこしえ
)
にやんでいた。——
俯
(
う
)
っ伏した黒髪は、血しおの中へ、べっとりと乱れ、手はかたく
懐剣
(
かいけん
)
の柄を握っていたのである。
死んだ千鳥
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それは、庄七の身を
反
(
そ
)
れて、由の肩さきをサッと
薙
(
な
)
いだ。由は、笛のような声をつまらせ、ぐわッと地へ
俯
(
う
)
ツ
伏
(
ぶ
)
した。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
にも関わらず、かの女は、その後で、どっと、せきあげる涙と淋しさとを、どうしようもなく、
俯
(
う
)
ッ
伏
(
ぷ
)
してしまった。
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
闘う女の真白な
玉裸
(
ぎょくら
)
が、また無性に
俯
(
う
)
ッ伏してそれを押し隠す。その
弾
(
はず
)
みに、短刀だけが、寝台の下にころげ落ちた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
依然、ものはいわなかったが、ついに、たもとを噛んで、がばと
俯
(
う
)
っ
伏
(
ぷ
)
すと、黒髪の下からよよと泣く声がもれた。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
又八は、じっと
俯
(
う
)
ッ伏したきりでいたが、武蔵は大きな眼をあいて、
精悍
(
せいかん
)
な動物の腹を、何十となく、見ていた。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見ると、
藍花染
(
あいばなぞめ
)
の小袖に革のたすきをかけ、白い布で、
額
(
ひたい
)
から
後鬢
(
うしろびん
)
へ汗止めをきりっと締めている侍が、草の中に顔を埋めて、
俯
(
う
)
つ伏しているのである。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「ああ……」涙こそながさないが、範宴は全身の悲しみを投げだして、氷のような
大床
(
おおゆか
)
へ
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぶ
)
してしまった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
棟方与右衛門は、一室の中央に、何もかも覚悟の上らしく、整然と片づけた中に腹を切って
俯
(
う
)
っ
伏
(
ぷ
)
していた。
鬼
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
友矩が出てゆくと、他の人々もむらがり寄って、なお怒り
歇
(
や
)
まない但馬守と、声もなく地に
俯
(
う
)
っ
伏
(
ぷ
)
している又十郎の間とを、ようやく分け隔て連れて行った。
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
見るにたえず、高直は下にうずくまったが、顔を上げたとき、もうその人は
紅
(
くれない
)
の座に前身を
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぶ
)
せていた。
私本太平記:08 新田帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一
党
(
とう
)
になくてはならない
盟友
(
めいゆう
)
、
加賀見忍剣
(
かがみにんけん
)
はたおれている。
木隠龍太郎
(
こがくれりゅうたろう
)
も血の中に
俯
(
う
)
ッ
伏
(
ぷ
)
してしまっている。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夜具の中に
俯
(
う
)
つ伏している清十郎の様子に、ぎょっとしたような顔いろを動かして、枕元へ取りすがった。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
胸の高さにまで折り畳んだ
夜具
(
よのもの
)
に、両の
肱
(
ひじ
)
と
苦患
(
くげん
)
の顔を乗せて、
俯
(
う
)
ッ伏せに
凭
(
もた
)
れて坐ったきりな
容
(
かたち
)
だった。
私本太平記:13 黒白帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もくり……と
毒水
(
どくすい
)
の
波紋
(
はもん
)
がよれたかと思うと、
俯
(
う
)
ッ
伏
(
ぷ
)
せになった
水死人
(
すいしにん
)
が
水草
(
みずぐさ
)
の根をゆらゆらとはなれる。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お通は素直に
袂
(
たもと
)
をはなした。そして橋の欄干へ
俯
(
う
)
ッ伏すと、
鬢
(
びん
)
をふるわせてしゅくしゅくと泣き出した。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
露八は、淀川に沿って、
枚方
(
ひらかた
)
の方角へと、歩きだした。血か、油か、淀は
鉛色
(
なまりいろ
)
にぎらぎらして、時々、
俯
(
う
)
ッ
伏
(
ぷ
)
せになった幕兵の死骸が
空俵
(
あきだわら
)
みたいにながれて来る。
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
突然、吉次も不覚な
嗚咽
(
おえつ
)
をもらしてしまった。がばと、
肱
(
ひじ
)
を顔にあてたまま、草のなかへ
俯
(
う
)
っ
伏
(
ぷ
)
した。
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お市は、そこに居るか居ないか分らないように門の脇に、身を沈めたまま、平たく
俯
(
う
)
っ伏している。
夕顔の門
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
不意を食らった味方の裏切に、なんの骨折りもなく二人はグッタリと土を掴んで
俯
(
う
)
ッ
伏
(
ぷ
)
してしまう。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
清経は、
恐懼
(
きょうく
)
して、さらに、静を
辛辣
(
しんらつ
)
に責めた。余りに長い時間を冷たい板床にひき
据
(
す
)
えられていたせいか、静は、急に眉をひそめ、
蒼白
(
あおじろ
)
くなって苦しげに
俯
(
う
)
っ伏した。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
伊織は、耳を抑えて、熊笹の中へ
俯
(
う
)
ッ伏した。とたんに、うすい
弾煙
(
たまけむり
)
のながれた樹陰で、ぎゃッ——と、生き物が断末を告げる刹那の——あの不気味なさけび声が聞えた。
宮本武蔵:07 二天の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いわれるし、兄には
叛
(
そむ
)
けない気がして、朝麿は、板ばさみになって当惑そうに
俯
(
う
)
つ向いていた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
すると、その後に、もう一人
俯
(
う
)
ッ伏していた若い男が、いきなり
草埃
(
くさぼこ
)
りと一緒に
刎
(
は
)
ね起きて
鬼
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わらわらと、寄って来て、其処らへ
俯
(
う
)
っ伏してしまった者は、皆、浅野家の家臣であった。
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのお人の姿が、やがて、小舟のうちに坐って、がくと、
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぷ
)
して見えたかと思うと
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
身を、馬のたてがみへ
俯
(
う
)
っ伏せたすきに、すでに花栄の姿は
雲林
(
うんりん
)
の
裡
(
うち
)
に消え去っていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
斬られた土民は、岸へは這い上がっても、水草の中に
俯
(
う
)
っ伏したままで動かなかった。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
凄まじい表の武者声に、彼女の母は、耳をふさいだまま、室の外に
俯
(
う
)
っ伏していた。
日本名婦伝:静御前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
足数にして、約十歩ばかり先に、一箇の死骸が、
朱
(
あけ
)
になって
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぶ
)
しているし、ずっと土塀へ寄った
際
(
きわ
)
にも、頭を
柘榴割
(
ざくろわ
)
りにされた番の者が、塀の根へ
倚
(
よ
)
りかかったまま死んでいた。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
いったん馬のたてがみに
俯
(
う
)
っ伏して脇腹を抑えているかのように見えた光秀は、胸の下となった手綱の手をうごかすと、急に面を上げて、トトトトトと、小刻みに駒の脚を早め出した。
新書太閤記:08 第八分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
機
(
はた
)
の上へ、
俯
(
う
)
つ伏していたのである。暗いなかに、ただ独り
寂寞
(
じゃくまく
)
を
抱
(
いだ
)
きしめて。
宮本武蔵:02 地の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そのくせ、もう焔のような顔して、
俯
(
う
)
っ
伏
(
ぷ
)
しながら、息もくるしげなのである。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
手で口を
塞
(
ふさ
)
がれたように、武蔵は息が止まった。岩につかまっていても体をズズズと持って行かれそうな風圧をおぼえた。……しばらく目をつぶったままじっと
俯
(
う
)
ッ
伏
(
ぷ
)
していたのである。
宮本武蔵:04 火の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
足数にして、十歩ほど先に、その小次郎は
俯
(
う
)
つ
伏
(
ぶ
)
せに
仆
(
たお
)
れている。草の中へ、顔を横にふせ、握りしめている長剣の
柄
(
つか
)
には、まだ執着の力が見える。——しかし苦しげな顔では決してない。
宮本武蔵:08 円明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
俯
漢検1級
部首:⼈
10画
“俯”を含む語句
俯伏
俯向
俯臥
真俯向
俯瞰
差俯向
突俯
俯仰
真俯伏
打俯
下俯
内俯
俯目
差俯
俯居
俯視
眞俯向
俯仰天地
俯向形
俯向加減
...