“ひと”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:ヒト
語句割合
22.1%
18.3%
他人13.8%
12.3%
6.5%
5.7%
4.4%
1.8%
1.4%
1.1%
人間0.9%
0.9%
0.9%
0.7%
0.6%
人物0.5%
良人0.4%
0.3%
婦人0.3%
0.3%
女性0.3%
0.3%
0.2%
0.2%
衆人0.2%
0.2%
匪徒0.2%
0.2%
0.2%
夫人0.2%
0.1%
性質0.1%
0.1%
0.1%
女人0.1%
0.1%
0.1%
情人0.1%
老婆0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
0.1%
青年0.1%
一人0.1%
0.1%
乗客0.1%
0.1%
個人0.1%
0.1%
少女0.1%
彼女0.1%
0.1%
死人0.1%
男女0.1%
男子0.1%
老女0.1%
蒼生0.1%
費途0.1%
女子0.0%
0.0%
0.0%
独人0.0%
0.0%
丈夫0.0%
主家0.0%
亭主0.0%
人々0.0%
人士0.0%
人家0.0%
人柄0.0%
人格0.0%
人民0.0%
人種0.0%
人類0.0%
他女0.0%
他家0.0%
他所0.0%
住人0.0%
使者0.0%
0.0%
0.0%
俳優0.0%
0.0%
傍人0.0%
公衆0.0%
凡夫0.0%
0.0%
女史0.0%
奴婢0.0%
奴隷0.0%
0.0%
0.0%
0.0%
婢女0.0%
学生0.0%
実母0.0%
家人0.0%
家族0.0%
0.0%
常人0.0%
0.0%
役者0.0%
0.0%
0.0%
書家0.0%
0.0%
火取0.0%
火捕0.0%
灯取0.0%
0.0%
美女0.0%
群衆0.0%
義姉0.0%
菩薩0.0%
貴郎0.0%
0.0%
鄙徒0.0%
醜男0.0%
0.0%
0.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
そのはなは、のめずりたおれた老人ろうじん死体したいを、わらつておろしているというかたちで、いささかひとをぞつとさせるような妖気ようきただよわしている。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
その時の君は早や中学をえようとするほどの立派な青年であった。君は一夏はお父さんを伴って来られ、一夏は君ひとりで来られた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
他人ひとのためには一挙手一投足の労を費やすことなくとも、天下の人々は、争うて彼に対しさらにさらに多くの親切を尽くしつつある。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
これらの童謡はおほかたその「赤い鳥」で公にされたものですが、今度改めて今までの分をひとまとめにして出版する事になりました。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
それに、あんたは、もう、あすこにや居らんひとなんだもの。そぎやんむつかしかこといはんてちやあ、一枚写しておきなはりまつせ。
牛山ホテル(五場) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
のみならずついに何事をもなさず何をしでかすることなく一生むなしくひとの厄介で終わるということは彼にとって多少の苦痛であった。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
派手の反対意味としては地味がある。渋味をも地味をもひとしく派手に対立させることによって、渋味と地味とを混同する結果を来たす。
「いき」の構造 (新字新仮名) / 九鬼周造(著)
冷静れいせいなる社会的しやくわいてきもつれば、ひとしく之れ土居どきよして土食どしよくする一ツあな蚯蚓みゝず蝤蠐おけらともがらなればいづれをたかしとしいづれをひくしとなさん。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
昨夜とひとしく、月は水の如く、大空に漂つて、山の影はくつきりと黒く、五六歩前のくさむらにはまだ虫の鳴く音が我は顔に聞えて居る。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
本當ほんたう御天氣おてんきだわね」となかひとごとやうひながら、障子しやうじけたまゝまた裁縫しごとはじめた。すると宗助そうすけひぢはさんだあたますこもたげて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
このごろは、金高のほうも相当莫大になりましてね、二十万フランばかりのところへ行っているんです。……人間ひともだいぶ殺しましたねえ。
犂氏の友情 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まがりなりにも城主であったものが、仮小屋のなかにひとりで起居している姿はかなしかった。もとの家臣にとっては気持の負担であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
所詮しょせん、だらしのないぼくが、そんなにも女色がきらいだったというのはひとえに、あなたからの手紙の御返事を待っていたからです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
噂によれば葉之助というひとは、内藤殿のご家中でも昼行灯と異名を取った迂濶うかつ者だということであるが、それが正しく事実ならさような人間を
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そも/\これらの靈體は、我をして彼等に請ふの願ひを起さしめんとて皆ひとしくもだしゝなれば、いかで正しきこひに耳を傾けざらんや 七—九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
美満寿屋というのは表通の上町かみまちに出来ている飲食店であったが、主人というのが元を正せば洋服を着た方の種類の人物ひと
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たとえば、亡妻の黒髪を形見として肌身に附けている良人ひとが、いつまでも亡妻の思い出から遁がれることが出来ず、日に日に憂欝になり衰弱して行くように。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
外には何物をもれる余地のなかつたことを——皆さんが各々てんでに理想のひとを描いて泣いたり笑つたり、うつしたりして騒いで居なさる時にでも
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「何だエ」と伯母は眼をまるくし「其様そんなえら婦人ひとで、其様そんなとしになるまで、一度もお嫁にならんのかよ——異人てものは妙なことするものだの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
当時、戯作者といえば一括して軽薄放漫なる聵々者がいがいしゃ流として顰蹙ひんしゅくされた中にひとり馬琴が重視されたは学問淵源があるを信ぜられていたからである。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
あの女性ひとが——と、聴くものも、いうものも、ただ顔を見合った。また、その次だった。もうその時分には、練馬の新築に越していたのだが
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
やがて重き物など引くらんやうに彼のやうやきびすめぐらせし時には、推重おしかさなるまでに柵際さくぎはつどひしひとほとんど散果てて、駅夫の三四人がはうきを執りて場内を掃除せるのみ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
前に囲ってくれた旦那と二人して妨害運動をしたりしたが、律気な——鉢植えのけやきみたいな生れつきのひとにも芽が出て、だんだんに繁昌はんじょうして来た。
あのひとを買うようなもんじゃありませんか? あのひとからあんなにつけつけと輕蔑の色を見せつけられたんだから
ベンヺ こゝは往來わうらいぢゃ、どうぞ閑寂ひそかところ冷靜しづか談判だんぱんをするか、さもなくばわかれたがよい。衆人ひとるわ。
孝孺のちに至りて此詩を録して人にしめすの時、書して曰く、前輩せんぱい後学こうがくつとめしむ、惓惓けんけんこころひとり文辞のみにらず、望むらくはあいともに之を勉めんと。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
全篇の主旨となす所は近年英両国の入寇にゅうこうおよび回教匪徒ひとの反乱とに際して、清国の武備のはなはだ到らざることを慨歎し、以て世を警醒けいせいするにあった。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
横にならんで行く、浅黄のぶっ裂き羽織を着た四十あまりのひとと、しきりに話しこんでゆく。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
惟うに、新主義の学を講ずる、ひとりその通般の事を知るに止るべからず、必らずやその蘊奥を極め、た事に触れ、いきおいに応じてこれが細故を講究すべきの事多うし。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
五等官夫人チェフタリョワだの、佐官夫人ポドトチナだの……もっともこの夫人ひとは、こんな酷い仕打をなされたかぎり、今後交渉をもつとすれば警察沙汰以外にはありませんがね。
(新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
つまりですね、旦那、やつが、ひとの目の前で四つん這いになったのを見て、癇癪玉を破裂さしちまったんで。
知らぬ顔して鼻高々とその日その日を送りくさるか、あまりに性質ひとのよ過ぎたる良人も良人なら面憎きのっそりめもまたのっそりめと、折にふれては八重縦横に癇癪かんしゃくの虫ね廻らし
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あの、幻の道具屋の、綺麗なひとのようでもあったし、裲襠姿振袖うちかけすがたふりそでの額の押絵の一体のようにも思う。……
夫人利生記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
義雄が銘仙のひとへをあはせにすることを頼みに、近處の仕立物をする婆アさんの家へ行く時、お綱が門そとで百姓馬子から青物を買つてゐるのに注意すると、馬の背の荷には、もう、茄子なす
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
言って見ればある時、年長者や、年下の者や、とにかく浜子の箏に心酔する、友達であり門弟である女人ひとたちが集められた会食の席で、わたしに
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
日光を遮断しやだんする鉄塀はひとしく彼女をも我より離隔して、かりの通ふべき空もなし、夢てふもの世にたのむべきものならば、我は彼女と相談あひかたる時なきにあらず、然れどもその夢もはかなや
我牢獄 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
あんな者に係合かかりあつてゐた日には、末始終どんな事になるか知れやしない、それが私は苦労でね。内のひともあのくらゐ利巧で居ながらどうしたと云ふのでせう。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「何うしたい!」四度目よたびめには気軽く訊ねた。「散々ひとを待たして置いて来る早々沈んで了って。何で其様な気の揉めることがあるの? 好い情人ひとでも何うかしたの?」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
大人三人前を一手に引うけて鼻唄交り遣つて退ける腕を見るもの、流石に眼鏡と亡き老婆ひとをほめける。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
平素いつも威望ゐぼうと、蒼白な其時の父の顔の厳粛さがひとりでに群集の同情に訴へたのである。二人は歩き進んだ。そして、私ははつきり父の顔を見る事が出来た。
父の死 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
糸でかるる木偶でくのように我を忘れて行く途中、この馬鹿野郎発狂漢きちがいめ、ひとのせっかく洗ったものに何する、馬鹿めとだしぬけにみつくごとくののしられ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
十二月庚午かのえうまついたち、皇太子片岡に遊行いでます。時に飢ゑたるひと道のほとりせり。りて姓名かばねなを問ひたまふ。而してまをさず。皇太子飲食をしものを与へたまふ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
「ええ、古市一番の旧家で、第一等の宿屋でござります。それでも、今夜あたりは大層なおひとでござりましょ。あれこれとおっしゃっても、まず古市では三由屋で、その上に講元こうもとのことでござりまするから、お客は上中下とも一杯でござります。」
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
掘立小屋のやうな茶店には繪描きのやうな青年ひとがひとりで雨宿りして牛乳を飮んでゐました。
大島行 (旧字旧仮名) / 林芙美子(著)
「何だか君一人ひとりで登るようだぜ」
二百十日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
姉娘をひとのないには困りました。源之助で不可いけず、門之助で不可、何分にも適当のひとが見当らないので、結局寿美蔵すみぞうに廻りましたが、本来は宗之助か秀調しゅうちょうという所でしょう。
そしたら次の駅につくと、すぐあたいのそばにまた寄って来て、たくさん乗客ひとのいる中でも平気でいうんです。
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
竹槍席旗は、昔から土にひとしい無抵抗主義の農が最後の手段であった。露西亜ろしあの強味は、農の強味である。莫斯科モスクワまで攻め入られて、初めて彼等の勇気は出て来る。農の怒は最後まで耐えられる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それは違うわ、せんひとはああしたひとでしょう。
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
先ず同級か下級の生徒の中で、好ましいふう付きと性質の少女ひとを見付け出して同性愛シスター関係を結ぶ。二人切りで秘密の名前をつける。手紙のやり取りをする。持物や服装を人知れずお揃いにする。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
しろき花の手と白鳥の胸毛のむね持てる彼女ひとはすむや
(新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
支倉の奴は木で鼻をくゝったような挨拶をしやがったが、おかみさんが分ったひとでねえ、病気の方は医者にかけて治療させると云う事になって姪の奴は一先ず世話した人の宅へ引取って
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
聲なき死人ひとは墓にかくれぬ
花守 (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
またあちらの松林には茸狩たけがり男女ひとが、白地の手拭てぬぐいを被って、話し合いながらその姿が見えたり、隠れたりしています。
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は断然之を打ち消したのです、梅子さんも御自分で是れならばと信じなさる男子ひとを得なすツたならば、すゝんで御約束もなさらうし、又たひても御勧め申すけれど
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
と、ある時、紅葉館で、一番古参だったおやすさんという老女ひとが、わたしにしみじみ話してくれたことがある。
モルガンお雪 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
人間は死ねば奈何どうなるとか、天理教を信ずるとお寺詣りが出来ないとか、天理王のみことも魚籃観音の様に、仮に人間の形に現れて蒼生ひとを済度する事があるかとか、概して教理に関する問題を
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
国民の最大多数の食事を制限している高率の租税そぜい費途ひとなども目撃している。
「あれは美人じゃからなあ——石河いしかわの夕千鳥には、彼女の趣味から来る風情ふぜいが添うが——わしが、今感心しておる女子ひとは、ことのこととなると、横浜から、箏を抱いてくる。小いさなからだをして。」
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「なんじゃ、あんた、知っとるのか? その女子ひと。」
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ひとつの 木に
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
ひとつの 影
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
其味なまなるにかはる事なく、母もよろこび大方おほかたならず、いかなる人のここに落せしや、是又ひとつのふしぎ也。
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
積る朽葉くちばにつもる雪、かきのけ/\さがせども、(中略)ああ天我をほろぼすかとなみだと雪にそでをぬらし、是非ぜひなく/\も帰る道筋、なはからげの小桶こをけひとつ、何ならんと取上げ見れば
案頭の書 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「何アに、よねさんは一人寝せときゃええさ、なア米さん、独人ひとり寝てるわのう。」と男は顔を少し突き出した。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
それでそこの魚屋の主人は米は障子を開ける前に、きっと叔父おじさんは常日いつものように笑っているだろうと思って覗いて見たが、独人ひとりで恐い顔をして庭の同じ処を見詰めていた。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
あとで、このはなしきいたむらひとたちは、猟師りょうしをほめれば、また薬屋くすりやさんを感心かんしんな人ひとといって、ほめたのであります。
猟師と薬屋の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
僕は貴嬢あなたの理想の丈夫ひとを知つて居ます、貴嬢の理想の丈夫はすなはち僕の崇拝して居る所の丈夫ひとです、僕は実に嬉しくてまらんのです、——僕が此の父の罪悪の家に在りながら
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
主家ひとのものをうっかり粗末にしていた人が、自分の世帯になったから、これから倹約しまつにしようと思っても、なかなかそうはいかなくなって、ついつい一生むだをすることになります。
女中訓 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
うちの亭主ひとは酔っ払っていたので、あんな安値で引受けたのだといってぐちをこぼすが、しかし十カペイカ銀貨の一枚も増してやれば、それで事なく納まるのであった。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
ある時はフィリップのごとさき町にちひさき人々ひとを愛せむと思ふ
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
金沢の人士ひとは一分時のわらいしろにとて、渠に二三厘を払うなり。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お手前様から宜しくお詫びを願いたい、し寺へまいるような子供でもあれば、四書五経ぐらいは教えましてもし、何うしても困る時には御厄介にならんよう、人家ひとかどに立ち、うたいを唄い
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼家あそこじゃ奥様おくさんも好いかただし御隠居様も小まめにちょこまかなさるが人柄ひとは極く好い方だし、お清さんは出戻りだけに何処どこ執拗ひねくれてるが
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
……千二百万ドル、すなわち、四千万円を、この席におられる方でこれを最も有意義にお使いくださるであろうと思われる人格ひとに御相続願うことにしました
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
わしったな、貴方あんたなんで打った、無暗むやみに打って済むか、お役人が人民ひと打殴ぶんなぐって済むか、貴方では分らねえから、もっと鼻の下に髯の沢山たんと生えた方にお目にかゝり、掛合いいたしやす
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あれは、一体何をして生きている人種ひとですか。
貞操問答 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
この地球ほし人類ひとの文化の明るさよ背後そがひの闇に浮出て美し
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
自分の好きな男は、他女ひとも好きなのだ——そんなふうに簡単に錦子に考えられたろうか?
田沢稲船 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「ぬかしてよ。われや汝で、何ぜ俺とこを母屋やなんてたれるのや。どこで聞いて来た。他家ひとんとこへ来るなら来るで、ちゃんとして来い。」
南北 (新字新仮名) / 横光利一(著)
其中そのうちに乃公は喉がかわいた。水を持って来いといえば係りの男が持って来るだろうけれど、人を呼んだりしては他所ひとの安眠の妨害になると思って、乃公はそっと起きて水を飲みに行った。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
たとえ身元をくらませようとしても、東京の住人ひとなら間もなく身元が分かるから、犯人は危険を冒して、裸にしてゆく道理がありません。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
一昨日をとゝひの晩も『浪の家』から、電話ぢやく解らないツてんで態々わざ/\使者ひとまで来たぢやないか、何が面白くて湖月などにグヅついてたんだ、帰つたともや
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「ほんとに女のようなお若い、お美しいおひとでいらっしゃるのに、お足を、あんなにお痛めなすっては、おかわいそうでございます」
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
二氣の正しきに乘り、五行のつぎてととのへ、あやしき理をけてひとすすめ、すぐれたるのりを敷きて國を弘めたまひき。
ところが、この半四郎という俳優ひとは、鐘入りの場合に、決して、奈落へ抜けなかったのでございます。
京鹿子娘道成寺 (新字新仮名) / 酒井嘉七(著)
シテすす使ム/門弟誰カ能ク場ヲほしいままニスルヲ得ルカ/子寿晴潭敵手ト称サルニ/堪フ可ケンヤ我在リテ彼先ンジテ亡ブヲ/ 其三 東京西洛変ジテ窮リ無シ/詩法如今亦混同ス/何処ノ江湖ニカ正派ヲ存スル/鴛城ひとリ寺崎翁有リ〕
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
あの隻眼隻手のどこがいいのかと傍人ひともわらえば自らもふしぎに耐えないくらい思いをよせているのに、針の先ほども通じないばかりか、先夜来すこしのことを根に持ってあの責め折檻せっかんが続いたのも
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「僕は自分の妻を、公衆ひとに見せるのはいやだな。」
遠藤(岩野)清子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
煩悩ぼんのうを断じて菩提ぼだいを得ることです。つまり凡夫ひと仏陀ほとけになることです。にもかかわらず、迷いもない、悟りもない、煩悩もなければ、菩提もない。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
「何をおっしゃるンです。失敬な。も一度武男の目前まえで言ってごらんなさい。失敬な。男らしく父に相談もせずに、無礼千万な艶書ふみひとにやったりなンぞ……もうこれから決して容赦はしませぬ」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
微妙な心の動きは、わが心の姿さえ、動揺のしやすくて、信実まことは書きにくいのに、今日こんにちの問題の女史ひとをどうして書けよう。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
いまだにむすめこゝろせで、金齒きんばれたる口元くちもとい、い、子細しさいらしく數多あまた奴婢ひとをも使つかへども、旦那だんなさますゝめて十けんだな人形にんぎやうひにくなど、一つまのやうには
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れの体は、いまの乞食尼から、おれが買ってやったぞ。てめえは、倖せなやつだよ。おれが買ってやらなければ、いずれは遠国の奴隷ひと買いに渡されるにきまっている。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その人の上に二人の姉があって生存しているが、どういう訳でか、そのひとたちは生家へ帰っていて別に再婚しようともしない。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
あのひとは、丁度お前のお母さんと違って口の上手な人でもあるし、また若い時から随分種々な目にも会っている女だから
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
寸の間もはなれざりしものを、今さら一人はやりともなきに、我まゝなれども此處より一人手廻りのひとをつれたく、お新さまを宜き口あらばとお頼みなりしが、あのやうに可愛くしかも柔順おとなしき娘を
花ごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かれかれこれこれかげになりてのお指圖さしづ古參こさん婢女ひとあなどらず明日きのふわすれしやうらくになりたるはじようさまの御情おなさけなり此御恩このごおんなんとしておくるべききみさまにめぐはゞ二人共々ふたりとも/″\こゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「以前から? じゃ法科大学の学生ひとの処に行っていたというのはあれは譃?」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
物心ものごころづいてからは、他人に育てられましたのよ、だから、うみの母にも逢わずに死なせ、その実母ひとの父親——おじいさんですわねえ、その人は、あたしが見たい、一目逢いたいと
江木欣々女史 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
されども家人ひとは知らでありき
枯草 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
お浪の家は村で指折ゆびおり財産しんだいよしであるが、不幸ふしあわせ家族ひとが少くって今ではお浪とその母とばかりになっているので、召使めしつかいも居ればやとい男女おとこおんな出入ではいりするから朝夕などはにぎやかであるが
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
どのくらいか臆病おくびょうづらを下げて、きまりの悪いおもいをしたか知れやしねえ、畜生め、ひとが臆病だと思いやあがって
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黒吉は、既にこの常人ひとの窺ってはならぬ「白日の妖夢」の俘囚とりことなってしまったのであった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
なんぢ凡夫を捨つべく、聖道は取るべしと存せば、則ち分別をじやうず。いづくんぞ宴と為すことを得ん。この句は凡聖の二境をひとしくすることあたはざるをするなり。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
妾はあの役者ひと達を連れて、どこか誰にもわからない処へ行って、妾が取っときの本読みをさせるの
二重心臓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
して地球に生息する一切の有機体をや、細は細菌より大は大象に至るまでの運命である、これ天文・地質・生物の諸科学が吾等に教ゆる所である、吾等人間ひとり此鈎束こうそくを免るることが出来よう
死生 (新字新仮名) / 幸徳秋水(著)
予はそれを聞くとひとしく口をつぐみて悄気返しよげかへれば、春雨しゆんうあたかも窓外に囁き至る、瀟々せう/\の音に和し、長吁ちようう短歎たんたん絶えてまた続く、婦人の泣音きふおんあやしむに堪へたり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その時分東両国むこうりょうごくに、万八という料理おちゃやがあって、書画の会があると亀田鵬斎かめだほうさいという書家ひとや有名な絵かきたちが来てな、おれを弟子にしようとみんなが可愛がってくれた。
おまえも知っとるはずじゃが、あの知事の東郷とうごう、な、おまえがよくけんかをしたあの母御かさまな、どうかい、あのひとが肺病で死んでの、一昨年おととしの四月じゃったが、その年の暮れに、どうかい
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
私の熱いひたひには、彼等の眼が火取ひとりレンズのやうに燒きつくのが感じられた。
と、どこから来たものか、四方雨戸をとざしてあるのに、一匹の火捕ひとり虫が飛んで来た。バタバタバタバタと雪洞へあたる。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
妖異よういだ。夏なら知らず十二月、蛾が生きているはずがない——と思うと灯取ひとり虫、一つ一つのしょくをはたきまわって、殿中でんちゅうにわかにボーッと暗くなってきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まあ、ほんとに ma chèreシェール(いとしいかた)、そのひとの好いたらしい顏つきといつたら!
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
本願寺からはなすのはいやだと騒がれた美女ひとなのに——
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
しかしこの、おっそろしい群衆ひとでは、あたしのような年寄はとても乗れませんですよ。どうしたら、ようございましょうね
空襲下の日本 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「——本当よ、あの義姉ひとの鼻をあかしてやりたいのさ、威張りかへつて胸くそが悪いつたらありやしない、お客と云ふお客はみんな自分の器量にひかされて来ると自惚うぬぼれてるんだものねえ」
一の酉 (新字旧仮名) / 武田麟太郎(著)
すぐれた智慧をもっている菩薩ひとは、いまし生死をつくすに至るまで、つねに衆生の利益りやくをなして、しかも涅槃におもむかず」
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
五年前の郡上様ぐじょうさまといえば、名与力としてうたわれたものだ。その貴郎ひとの手に余ったといえば、いよいよもって偉い奴でござるな。……おや、つつみ駕籠かごが行くそうな。提灯の火が飛んで行く
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
くらものはあるまいとてくちぜいねばわがおもしろにひと女房にようぼひようしたてる白痴こけもあり、豆腐おかべかふとて岡持おかもちさげておもていづれば、とほりすがりのわかひとふりかへられて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたくしは、漢室の鄙徒ひと涿郡たくぐんの愚夫。まあ、そんな者でしかありません。先生の大名は、耳に久しく、先生の神韻縹渺しんいんひょうびょうたるおすがたには、今日、初めて接する者です。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ご冗談でしょう。まさか——、あんな醜男ひと、妹が好くわけないじゃありませんか」
青い風呂敷包 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
容止みかほたかくさかしくて音辞みことばすぐあきらかなり。天命開別あめみことひらかすわけの天皇(天智天皇)の為にめぐまれたまふ。ひととなるに及びてわいわいしくて才学かど有り、もっと文筆ふみつくることこのむ。詩賦しふおこり、大津より始まれり……。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
しかして我等をいと高うする眞理をば地にひとしゝ者の名を、はじめてかの山に傳へしものは即ち我なり 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)