ひと)” の例文
而して京都はかねてより鎖国論の本拠にして、ひとり勅許を得ざるのみならず、断々然として不承諾の意を示せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
惟うに、新主義の学を講ずる、ひとりその通般の事を知るに止るべからず、必らずやその蘊奥を極め、た事に触れ、いきおいに応じてこれが細故を講究すべきの事多うし。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)
そして精々一座の花形俳優やくしやに花を持たすやうに振舞つて欲しい。これはひと俳優やくしやに限つた事ではない。
されば両親も琴女をること掌中しょうちゅうたまのごとく、五人の兄妹達にえてひとりこの寵愛ちょうあいしけるに、琴女九歳の時不幸にして眼疾がんしつを得、いくばくもなくしてついに全く両眼の明を失いければ
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
あはれみてやめぐむともなきめぐみによくして鹽噌えんそ苦勞くらうらずといふなるそはまた何處いづこれなるにやさてあやしむべくたつとむべき此慈善家このじぜんか姓氏せいしといはず心情しんじやうといはず義理ぎりしがらみさこそとるはひとりおたか乳母うばあるのみしのび/\のみつぎのものそれからそれと人手ひとで
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
余が本校の議員に列し、熱心と勉強とを以て、事にここに従わんと欲せしものは、ひとり隈公と諸君との知遇に感ぜしのみにあらず、けだし又別にみずからふるう所ありて然るなり。
祝東京専門学校之開校 (新字新仮名) / 小野梓(著)