ひと)” の例文
新字:
をしまずなげきしが偖ては前夜の夢は此前兆ぜんてうにて有りけるか然し憑司殿か案内こそ心得ぬ豫て役人をこしらへての惡巧わるだくみか如何せんとひとり氣を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
本當ほんたう御天氣おてんきだわね」となかひとごとやうひながら、障子しやうじけたまゝまた裁縫しごとはじめた。すると宗助そうすけひぢはさんだあたますこもたげて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さびしきまゝにこと取出とりいだひとこのみのきよくかなでるに、れと調てうあはれにりて、いかにするともくにえず、なみだふりこぼしておしやりぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あゝさち多き女等よ、彼等は一人だにその墓につきて恐れず、また未だフランスの故によりてひと臥床ふしどに殘されず 一一八—一二〇
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「はい。そればかりではありません。世界せかいにはわたしどものらないことが數限かずかぎりなくあります。——ちひさなところでひと威張ゐばつてゐることの」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
さる十三にちぼくひとつくゑ倚掛よりかゝつてぼんやりかんがへてた。十いへものてしまひ、そとあめがしと/\つてる。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
あいちやんはなにからなにまで可笑をかしくてたまりませんでした、がみんそろひもそろつて眞面目まじめくさつてるので、眞逆まさか自分じぶんひとわらわけにもきませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
とうさんもその書院しよゐんましたが、曾祖母ひいおばあさんがひとりでさびしいといふときにははなれの隱居部屋ゐんきよべやへもとまりにくことがりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
野郎やらうこんなせはしいときころがりみやがつてくたばるつもりでもあんべえ」と卯平うへい平生へいぜいになくんなことをいつた。勘次かんじあとひといた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
果然くわぜんれはいくばくもなくして漢族かんぞくのためにほろぼされた。ひと拓拔氏たくばつしのみならず支那塞外しなさくぐわい蠻族ばんぞくおほむねそのてつんでゐる。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
此間このあひだロミオは道外假面だうけめんかぶったるまゝひとはなれててゐる。其中そのうちヂュリエットと一武官ナイトりあうて舞踏をどりはじむる。
ところもの其人そのひとほねみなすでちたり、ひと其言そのげんのみ君子くんしは、其時そのときればすなは(二)し、其時そのときざればすなは(三)蓬累ほうるゐしてる。
ゆめからめたおもひで、あつぼつたかつたかほでた、ひざいて、判然はつきり向直むきなほつたときかれいままでの想像さうざうあまりなたはけさにまたひとりでわらつた。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「では何ですか、」と彼はいた、「あなたはまつたくすべてのかゝり合ひからひとりぽつちだと云ふのですか?」
これは、ひと讀書どくしようへばかりではない。んでも、自己じここしゑてかゝらなければ、をとこでもをんなでも、一しやう精神上せいしんじやう奴隷どれいとなつてんでほかいのだ。
読書の態度 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
こんなことのあつた昔を思ひ出してから、小池こいけは、自分に離れてひと水屋みづやで手を洗つてゐるおみつに聲をかけて
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
伊藤公追弔演説會以來のひと激昂げきかうを思はずまた參禪論に於いてした爲め、神經が再び非常に過敏になつてゐるのが、今、路上の放浪者として、初冬はつふゆのしめツぽさと冷氣とに當つて
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
ひとり謫天情仙じやうせんのみ舊にりて、言ふことまれなれども、あたること多からむことを求むるに似たり。この間別に注目すべき批評家二人をつ。そをたれとかする。逍遙子せうえうしと露伴子とすなはちこれなり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
ひとり、かのおそれも悔も無く眠る人こそ善けれ
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
さこそはひと野木のぎ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ひとりあやふく限ある
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
重四郎はこれさひはひと娘の部屋へやのぞき見れば折節をりふしお浪はたゞひと裁縫ぬひものをなし居たるにぞやがくだんのふみを取出しお浪のそでそついれ何喰なにくはかほ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されど汝の眼前めのまへに今なほ横たはる一の路あり、こはいとかたき路なれば汝ひとりにてはこれを出でざるさきに疲れむ 九一—九三
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
おつぎは自分じぶん毎日まいにちつてたので開墾地かいこんちからはこんだくぬぎみなつてる。おつぎはくぬぎひとりでひそかした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
宗助そうすけ一所いつしよになつて以來いらい御米およね毎日まいにちぜんともにしたものは、をつとよりほかになかつた。をつと留守るすときは、たゞひとはしるのが多年たねん習慣ならはしであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そんな眞似まねをして、もう我儘わたまゝいつぱいに振舞ふるまつてりますうちに、だん/″\わたしひとりぼつちにつてしまひました。たれわたしとは交際つきあはなくなりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ときなつ最中もなか自分じぶんはたゞ畫板ゑばんひつさげたといふばかり、なにいてにもならん、ひとりぶら/\と野末のずゑた。かつ志村しむらとも寫生しやせい野末のずゑに。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
まだ私は、誰にも話もしなければ、また誰も私に注意するでもなかつたから、全くひとりぽつちで立つてゐた。しかし可成り孤獨のこのわびしさには慣れてゐた。
さくらはなうめとめてやなぎえだにさく姿すがたと、くばかりもゆかしきをこヽろにくきひとりずみのうはさ、たつみやびこヽろうごかして、やまのみづに浮岩あくがるヽこひもありけり
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
東京とうきやういたところにいづれも一二いちに勸工場くわんこうばあり、みな入口いりぐち出口でぐちことにす、ひと牛込うしごめ勸工場くわんこうば出口でぐち入口いりぐち同一ひとつなり、「だから不思議ふしぎさ。」といてればつまらぬこと。
神楽坂七不思議 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
(四四)七十(四五)仲尼ちうぢひと顏淵がんえん(四六)すすめ、がくこのむとす。しかれども(四七)くわい屡〻しばしばむなしく、糟糠さうかうにだもかず、しかうしてつひ(四八)蚤夭さうえうせり。
ところがね、それが出來できないの。なぜつて、だれかれ自分じぶんひとりがやつとなのよ。みんな一生懸命いつしやうけんめいですもの。ひとをたすけやうとすれば自分じぶんもともどもんでしまはねばならない。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
底をかごにして、上の方は鹽瀬しほぜの鼠地に白く蔦模樣つたもやう刺繍ぬひをした手提てさげの千代田袋ちよだぶくろを取り上げて、お光は見るともなく見入りながら、うるほひを含んだ眼をして、ひとごとのやうに言つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
陪審官等ばいしんくわんら身體からだふるえがとまるやいなや、ふたゝ石盤せきばん鉛筆えんぴつとをわたされたので、みんな一しんこと始末しまつしました、ひと蜥蜴とかげのみは其口そのくちいたまゝ、いたづらに法廷はふてい屋根やね見上みあげて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ひとりしれば、ひめ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
立んとて此大雪に出で行きたれどもなん甲斐かひやあらん骨折損ほねをりぞん草臥くたびれ所得まうけ今に空手からてで歸りんアラ笑止せうしの事やとひとごと留守るすしてこそは居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
村落むらあんさ、何處どこつちつたつて場所ばしよはねえんですから、なあにひとりでせえありやけえつてふところはえゝんでがすから」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
汝よく我を視、汝の求むる眞理にむかひてわがこの處を過ぎ行くさまに心せよ、さらばこの後ひとりにて淺瀬を渡るをうるにいたらむ 一二四—一二六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
そのへんは、どつちをいてもふかやまばかりで、ぢいやにでもいてかなければ、とても幼少ちひさ時分じぶんとうさんがひとりでかれるところではありませんでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
しか宗助そうすけにはまる時間じかんつぶしにやう自覺じかくあきらかにあつた。それをつくろつてつてもらふのも、自分じぶん腑甲斐ふがひなさからであると、ひとつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
最早もうしめたものと、今度は客間きやくまに石をかず、居間ゐまとこ安置あんちして何人にもかくして、只だひとたのしんで居た。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「結局、大して重要なことではないかも知れない、」とひとり呟いた。「そして、やがて私がくなる、そして、彼女の前に自分をいやしいものにするのはたまらない。」
ひとりで苦笑にがわらひして、迫上せりあがつた橋掛はしがかりをるやうに、谿川たにがはのぞむがごとく、いけ周圍まはり欄干らんかんづたひ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くるまかどまりてやさしき駒下駄こまげたおときこゆるを、ろんなくれとはれどもらぬかほ虚寢そらねつくれば、美尾みを格子こうしおして、これは如何いかことでうがおりてあるとひとごとをいつて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それがなんだかよくもしないで、仲間なかまづかれないやうに、そのまま、そつとすなをかけて、らないかほをしてえしました。あとでて、ひとりでそれをべやうとおもつて。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ひと(三三)郊祭かうさい犧牛ぎぎうざるこれ養食やうしすること數歳すうさいするに(三四)文繍ぶんしうもつてし、もつ(三五)太廟たいべうる。ときあたつて、(三六)孤豚ことんたらんとほつすといへども、けん
う言ひ/\、お光はひとりで石段を下りて行つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
で、立騰たちのぼり、あふみだれる蚊遣かやりいきほひを、もののかずともしない工合ぐあひは、自若じじやくとして火山くわざん燒石やけいしひと歩行あるく、あしあかありのやう、と譬喩たとへおもふも、あゝ、蒸熱むしあつくてられぬ。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たび道連みちづれなさけといふが、なさけであらうとからうと別問題べつもんだいとしてたび道連みちづれ難有ありがたい、マサカひとりでは喋舌しやべれないが二人ふたりなら對手あひて泥棒どろぼうであつても喋舌しやべりながらあるくことが出來できる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
不幸ふかう由來もとさとめて、ちヽこひはヽこひしの夜半よはゆめにも、かぬさくらかぜうらまぬひとりずみのねがかたくなり、つヽむにもれ素性すじやうひとしらねばこそ樣々さま/″\傳手つてもとめて、香山かやま令孃ひめくるしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)